位相制御と無電弧タップ切換
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 14:44 UTC 版)
「電気車の速度制御」の記事における「位相制御と無電弧タップ切換」の解説
位相制御による電圧連続制御。制御極に信号電流(トリガ)を流すと整流器がオンになることを利用することで制御している。 サイリスタによる無電弧タップ制御。2組のサイリスタ (T1,T2) を用いて、タップ間の電圧を連続制御する。サイリスタのほか磁気増幅器でも可。 タップ制御は電力効率や再粘着性能に優れる一方で、有限個のタップ切換による段階制御であることから、抵抗制御と同様に切換時のトルク急変が伴い、空転そのものが発生しにくいわけではない。また、タップ切換時には大きな電流を切り入りするため、タップに電弧(アーク放電)を生じやすく、変圧器を損傷しやすい危険性を抱えている。 これらの問題は、切り換えるタップの電圧差を連続的に制御して、トルクの急変や電弧発生を解消することで解決できる。これを電弧が生じないことから無電弧タップ制御、またはタップ間連続電圧制御と呼び、電圧の連続制御には位相制御を用いる。整流器に制御極(ゲート)を設けると、特定のタイミングで整流器をオンにできる。この特性を利用し、交流電流の波形に合わせてオンするタイミングをずらすことにより、平均電圧を連続的に制御するのが位相制御の仕組みである(右上図)。 位相制御の歴史は比較的古く、1935年(昭和10年)には水銀整流器による格子位相制御と組合せ制御を併用した電気機関車がドイツで試作されている。その後、第二次世界大戦を挟んで、1950年代から交流電気車の技術開発が活発化し、水銀整流器によってタップ間の電圧を連続的に制御できる車両が開発される。この当時は、トランジスタが発明され真空管に取って代わっていった時代であり、ほどなく水銀整流器も半導体素子であるシリコン整流器へと移行し、安定した性能が得られるようになった。その一方で、シリコン整流器は位相制御ができなかったため、無電弧タップ切換を行うには磁気増幅器の併用を必要とした。その後、制御極付きのシリコン整流器であるサイリスタが開発され、1960年代から電気車の位相制御に用いられるようになった。 右下図は、サイリスタを二組用いて無電弧低圧タップ切換を行う場合の概念を示したものである。1段目のタップを投入するとき、サイリスタT1を無点弧(出力ゼロ)の状態にしておくと、タップに電流が流れないため電弧を生じない。次に、サイリスタT1によって位相制御を行い、1段目のタップ電圧をゼロから最大まで制御したのち、2段目のタップをサイリスタT2に投入し同様に連続位相制御を行う。サイリスタT2の電圧が最大に達すると、T1はすべてT2に包含され電流が流れなくなるため、1段目のタップを切っても電弧はやはり生じない。この要領で、二組のサイリスタを交互に用いることにより、タップ切換で電弧を生じることなく連続的な電圧制御が可能となる。図の例ではサイリスタを用いたが、二組の磁気増幅器を用いても同様の制御が行える。
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