位相制御と高調波
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/12 05:51 UTC 版)
図2-1 タップ制御と位相制御 図2-2 位相制御の仕組み。トリガと呼ばれる信号電流によって交流波形の一部を取り出し、平均電圧を自在に制御する。 交流を取り入れ整流子電動機を駆動する交流電気車は、直流電気車のような抵抗制御を一般に用いず、交流車独自の電圧制御が行なう。一つは変圧器を用いる方法で、入力側(1次側)と出力側(2次側)の巻線比率によって異なる電圧を得ることができる。変圧器に切り替え可能なタップを設ければ、段階的に電圧を変えることが可能となり、これをタップ制御と呼ぶ。 もう一つの方法が位相制御である。タップ制御が電圧そのものを変えるのに対し、スイッチング機能を持つ整流器等によって特定の時間のみ電流を導通させ、平均電圧を制御する方法である。図2-2に位相制御の仕組みを示す。トリガと呼ばれる信号電流を制御電極に与えると交流電流が流れ、電流がゼロになるまで流れ続ける。トリガを与えるタイミングを変化させると、半波長分の導通を0から100パーセントまで自在に制御でき、平均電圧を連続的に変えることができる。位相制御は、格子電極付の水銀整流器や磁気増幅器で行われ、交流電気車においても段階制御であるタップ制御の電圧を補完的に連続制御する方法として用いられた。その後、小型・軽量の半導体素子であるサイリスタの実用化によって、すべてを位相制御で行うサイリスタ連続位相制御へと発展する(図2-3)。 位相制御は連続的に電圧を制御できることから、粘着性能に優れ、空転を起こしにくいことが特長である。その反面、位相制御は正弦波である交流波形を途中でカットする方式であり、波形を乱して高調波ノイズを発生させる(図2-4)。このノイズが大きいと信号や通信といった地上設備に悪影響を与える誘導障害を引き起こすことが問題であった。この影響を抑制するには、ノイズを除去するフィルタを設けたり、変圧器の2次側を分割して複数の制御素子を順次位相制御し、個々の制御幅を小さくすることが効果的である。しかしながら、いたずらに素子数を増やすことは制御機器のコスト増を招くことから、実用上は2分割から6分割程度であった。 サイリスタの動作(順次制御)ステップ12345T1 T2 T3 T4 図2-3 サイリスタ連続位相制御(4分割)の回路(左)と動作(右)。サイリスタブリッジT1からT4まで順に位相制御し、電圧を連続制御する。
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