電源・制御システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 02:26 UTC 版)
「JR東日本HB-E210系気動車」の記事における「電源・制御システム」の解説
採用されているハイブリッドシステムはキハE200形やHB-E300系と同じく、エンジンの動力は発電機を回転させる電力用として使用し、発電機からの電力と搭載された蓄電池の電力と組合わせてモーターを駆動するシリーズハイブリッド方式と呼ばれるシステムで、エンジンは発電専用とし、車両の速度制御には電気車の技術が最大限に活かされている。 システムは、エンジンとそれに直結した発電機・主回路用蓄電池・主変換装置・車輪駆動用の主電動機(モーター)で構成されている。力行時には主回路用蓄電池からの電力または主回路用蓄電池とエンジン発電機からの両方の電力を使用して、主変換装置に内蔵されたVVVFインバータ装置によりVVVFインバータ制御でモーター(誘導電動機)を駆動させる。制動時には回生ブレーキによりモーターから発生した電力をVVVFインバータ装置を介して主回路用蓄電池に充電する。また、エンジン発電機の起動または停止は主回路用蓄電池の充電状態により自動的に行われている。キハE200形やHB-E300系と同様の「エネルギー管理制御システム」を搭載しており、各装置からの情報を集約して最適な動作の指令を各装置に指示することで、エンジン発電機と最適な蓄電池の充放電の制御を行なっている。 車両の床下には主変換装置・エンジン発電機・エンジンラジエーター・電動空気圧縮機・制御用蓄電池箱・ブレーキ制御装置などの機器を搭載しており、HB-E300系と同じくエンジン冷却性能向上のためエンジンラジエーターの大形化や後述する静止形インバータの容量増加による主変換装置の大形化が図られている。これによる床下ぎ装面積の低下は、屋根上の集中式冷房装置を挟んで前位に主回路用蓄電池を2個、後位に元空気だめの一部を搭載することで補われている(HB-E212形では前後逆)。 動力源として、エンジンと交流発電機を1基ずつ搭載する。エンジンは直噴式直列6気筒横形ディーゼルエンジン DMF15HZB-G を各車両に1基搭載する。定格出力331kW(450PS)定格回転数2100rpmであり、DMF15HZ(キハE120形・キハE130系)をベースに過給機を水冷式に変更している。エンジン起動の際には、主回路用蓄電池からの電力をコンバータにより制御し、発電機を起動モーターとして利用してエンジンを起動させる。このため、エンジンスターターを省略している。燃料噴射系は高圧電子制御システム(コモンレール式)を採用して、排気中の窒素酸化物(NOx)を約60%低減させている。交流発電機は出力270kWのDM113形三相交流発電機を各車両に1基搭載し、エンジンと直結駆動することで車両運行に必要な電力をまかなっている。 主回路用蓄電池には出力密度が高く、軽量高出力のMB3形リチウムイオン電池が使用されており、1両あたりの容量は15.2kWhで電圧は直流680Vである。また、蓄電池を2群構成とすることで冗長性を持たせており、不具合が発生した場合を考慮している。主制御装置にはCI 24形主変換装置を搭載しており、補機類とサービス電源用の電源装置である静止形インバータ(SIV)と一体構成となっている。なお静止形インバータの容量は70kVAで三相交流400Vを出力する。また各車には、補助電源で作動するMH3125-C600N形電動空気圧縮機(CP)を搭載している。 主電動機は、キハE200形やHB-E300系で実績のあるMT78形かご形三相誘導電動機を採用する。軽量化、低騒音化および保守省力化を図った構造で1時間定格出力は95kWであり、動力台車1台につき2基搭載する。 このほか主変換装置には、主回路用蓄電池が不具合を起こし必要電力が得られない場合に備えて、エンジン起動専用の非常蓄電池(直流340V,1.9kWh2基直列)を内蔵している。エンジン起動の際には、非常蓄電池からの電力をコンバータ制御により、発電機を起動モーターとして利用して起動させる。その後は、エンジンで駆動させる発電機からの電力により主電動機を駆動させる電気式気動車としての運転が可能な機器回路構成となっている。この非常蓄電池は使用後または充電率低下時に、エンジン発電機からの電力により充電が可能である。また、車庫において一定の充電率まで充電操作を自動で行うことができるようになっている。 車両が停車→発車→加速→惰行→制動→停車するまでの車両の状態は以下の通りになる。 停車中・惰行中 エンジン発電機はアイドリングストップを行い、車両の補機類とサービス用の電源は、主回路用蓄電池からの電力が補助電源装置を経由して送られる。また、エンジン発電機は起動させることも可能であり、そこから送られる電力は、主回路用蓄電池への充電と補助電源装置で使用される。電気式気動車としての運用時には、エンジン発電機は出力160kWでの待機モードとして常時発電しており、コンバータが定電圧制御(直流680V)を行いながら、補助電源装置への電力供給を行う。 力行時(低速時) 主回路用蓄電池からの電力のみでモーターを駆動させる。15 km/h程度からエンジン発電機を起動させて、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながら増速する。電気式気動車としての運用時には、エンジン発電機は、モーター駆動用のVVVFインバータと補助電源装置の合計消費電力を基にエンジン回転数を調整して、その後にコンバータが定電圧制御(直流680V)を行い、VVVFインバータと補助電源装置の合計消費電力との収支のバランスを取りながら、補助電源装置とモーターに電力が供給される。 力行時 (中高速時) エンジン発電機を起動させ、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。惰行中からの場合はエンジン発電機を起動させる。また走行負荷の状態に応じて主回路用蓄電池の充放電を行う。電気式気動車としての運用時には、力行の低速時と同様である。 制動時(抑速ブレーキ時も含む) エンジン発電機を停止させ、回生ブレーキによりモーターから発生した電力は主回路用蓄電池に充電されるが、一部は補助電源装置に送られる。電気式気動車としての運用時には、回生ブレーキは使用できないため、空気ブレーキのみで減速停車する。エンジンは停止せず、停止惰行中と同様に補助電源装置への電力供給を行う。
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