VVVFインバータ制御とは? わかりやすく解説

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VVVFインバータ制御

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/21 13:34 UTC 版)

VVVFインバータ制御(ブイブイブイエフインバータせいぎょ)とは、交流電動機を、その特性に合わせて任意の回転数、トルクで動作させるために、インバータを用いて任意の周波数電圧を発生させる制御方式。これを一般に「インバータ方式」というが、鉄道関係ではそれを特に「VVVFインバータ方式」、あるいは「VVVF方式=可変電圧可変周波数方式」と呼んでいる。VVVFは可変電圧可変周波数を直訳した和製英語(Variable Voltage Variable Frequency)であり、 英語圏ではVFD(variable-frequency drive)と言われる[1]

解説

交流の周波数(同期速度)を追って回る交流モータを使う場合、従前は任意周波数の電源がなかなか得られず、商用電源周波数日本では交流50 Hzまたは60 Hz)固定の電源で起動させるため、設計された回転数以外の任意速度での運転ができなかった。商用周波数での同期速度付近でのみ運転可能で、起動トルクが小さかったり、効率を落としたり、定常運転時は大出力交流モータを軽負荷で使っていた。そうした経過で、その動作特性も、取り扱い法も商用周波数固定でのものが広く知られているだけで、回転数、周波数特性についてはほとんど記述がなく、知られていなかった。同期速度とは回転磁界の速度で、電機子構造が2・P極の場合、周波数f/Pとなる。小型機に一般的な4極構造ではf/(4/2)が同期速度。60 Hzであれば2極で60 rps(毎秒回転数)、4極で30 rps、6極で20 rpsが同期速度である。60を掛ける記述は秒速 - 分速単位換算のrpm(毎分回転数)表示である。

トルクの電圧・周波数特性

電動機の1相誘起電圧と回転数

トルクの周波数特性としては、(電圧 V/周波数 f)2 に比例し、さらに誘導電動機では、停動トルク[2]より微少な場合はすべり周波数 fs に比例する(一般的な「すべり率 S」ではなく「すべり周波数 fs 」であることに注意)。同期電動機では電機子磁界と回転子磁界の角度 δに関して sin(δ/2)に比例する。
式表現すれば
τ=K1・Φ・I ・・・・・・・・・・・・K1,K2:比例定数、Φ:鎖交総磁束、I:電機子電流
  ≒K2・(V/f)^2・fs ・・・・・・V:電圧、f:電源周波数、fs:すべり周波数(ただし停動トルクよりかなり小さい領域)
 同期電動機では τ≒K・(V/f)^2・sin(δ/2) ・・・・・・
すなわち V/f を一定にして(=電圧と周波数を比例させて)ゼロから徐々に増やして起動すればよく、周波数に応じた任意の速度での運転ができる。

任意周波数電源をパワー半導体で構成

近年の電力用半導体素子の進歩により、任意周波数、任意電圧の交流電力を生成するインバータ(直流-交流変換器)が得られるようになり、交流モータの特性に合わせて、電機子誘起起電力+インピーダンス降下の電圧を供給して駆動することで任意の速度で運転できるようになった。電機子誘起起電力は磁界が一定であれば回転数:すなわち周波数に比例するから、供給電圧/周波数をほぼ一定にして速度制御することがVVVFインバータ制御の基本である。

初期のインバータ駆動では、半導体の容量が小さく、方形波駆動~数パルスで正弦波を近似していたが、さらに速度ゼロから徐々に起動させる低速大電力ではPWM方式などで正弦波に近付けて高調波の損失・悪影響を小さくして起動した。ところがGTOサイリスタなど大電力半導体のスイッチング速度が遅いため、速度を上げると1サイクル1パルスにも達して回転数と搬送波周波数が干渉するので、それを避けるため高速域では搬送波周波数を回転数の整数倍にした。これを「パルスモード」「同期モード」と呼び、低速部の整数倍関係のない動作を「非同期モード」と呼んでいる。

鉄道車両

鉄道車両ではこの電圧・周波数比例領域を特に「V/f一定領域(定引張力領域)」と呼んでおり、V/fを一定に保ちながら、一定トルクによる加速を行う。インバータの最大出力と最大電圧以降の高速領域は電圧一定で周波数を上げるので「CVVF領域(一定電圧可変周波数領域)」と呼ぶが、CVVF領域のうち、電流一定で加速を続ける領域は、誘導電動機であればすべり周波数を増やして加速するが、供給電力としては一定(=電圧一定×電流一定)なので「定出力領域」と呼び、トルクは回転速度反比例する。停動トルク(脱出トルク)に近づくと、すべり周波数は増やせなくなり、周波数のみを増やす「特性領域」となり、トルクは回転速度の2乗に反比例するとともに出力も下がっていく。また、トルク指令時において誘導電動機のトルク急変時でのトルク制御には、「V/f一定・すべり周波数制御」と「ベクトル制御」があり、後者は電動機に流れる1次電流を、固定子側の界磁で磁束を発生させる励磁電流成分と回転子側に誘導電流として流れてトルクに寄与する90度位相の2次電流成分とに分けて、励磁電流を一定に保ちながらトルク指令に対応した2次電流を制御する方式であり、すべり周波数制御に比べて、トルク変化に対しての応答性が良く制御精度が向上している。

直流電動機制御との比較

直流電動機制御との比較でいえば、「電機子誘起起電力(=逆起電力)+内部抵抗降下」を直流電動機に加えて起動させるのが抵抗制御電機子チョッパ制御の基本であるから、VVVFインバータ制御はそれに周波数と位相が加わるだけで基本は同様である。「定出力領域」と「特性領域」についても直流電動機の「弱界磁領域=定出力領域」「特性領域」と変わらない。またV/f一定領域も定トルクに制御すれば抵抗制御直流電動機での「定引張力領域」と同様である。

インバータの制御対象

インバータ制御の対象となる交流モータは、初期のTGVなどでは電磁石同期電動機が用いられているが、TGVの最新モデルではかご形三相誘導電動機に替わっている。日本ではかご形三相誘導電動機が圧倒的だが、近年は永久磁石同期電動機が用いられている車両が登場している。高効率を追求するエアコン用として日本では近年ブラシレス直流モータを使うようになった。また家電用など小型機には90度位相差の二相交流駆動があるが、多くは三相交流である。誘導電動機のすべり率Sは回転子での電力損割合なので、低速回転ほど損失率が増え効率が下がるので、低速回転になる直接駆動モータ(DDM)ではすべり回転のない同期電動機が選ばれることが多い。

脚注

  1. ^ 可変電圧可変周波数制御#概要を参照
  2. ^ 停動トルク - オリエンタルモーター > セミナー技術情報 > 用語解説(2015年版 / 2015年9月20日閲覧)

注釈

関連項目


VVVFインバータ制御

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 17:01 UTC 版)

回生ブレーキ」の記事における「VVVFインバータ制御」の解説

マイクロコントローラスイッチング素子組み合わせ3つ(6素子)以上構成して直流電源から速度あわせて三相交流作り出し交流電動機利用できるようにしたもの回生時は速度あわせて各相に逆電圧をかけるよう制御して直流電力を得る。打ち切り速度理論上km/hまで保持出来るが、鉄道車両中にはあえて他の制御方式車両タイミングをあわせるため、高い速度打ち切りを行う場合もある。交流から交流への直接変換回路開発中であるため、電源交流の場合は回生時に一度インバータ部で直流作りだし、コンバータ部で再び交流にして架線返す加速時役割逆転する)。電車による交流電源への回生一般化したのは、この方式が普及してからである。インバーター搭載ソフトウェアによっては純電気ブレーキ利用できる。この制御方式採用している車種のほとんどは、回生失効時には特有の発振音ノイズ)が聞こえなくなるので、他の制御方式比べ判別しやすい。

※この「VVVFインバータ制御」の解説は、「回生ブレーキ」の解説の一部です。
「VVVFインバータ制御」を含む「回生ブレーキ」の記事については、「回生ブレーキ」の概要を参照ください。

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