入学試験
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概要
入学を志願する者に対して、当該学校での教育を受けるのに必要な学力を有しているか確認するために、入学試験を実施する場合が多い。また、志願者の数が入学定員を上回っている場合は、入学試験の結果を基に選抜される場合が多い。
入学試験は、進学を目指す試験対策(受験勉強や過去問の分析)、志望校選定、教科選択、入学試験の受験といった一連の活動を伴う。人生を左右する一大イベントであるため、合格を願って寺社に参拝したり、縁起物を買い求めたりする受験生やその保護者も多い[13]。
初学年の始期から新入学するための「入学試験」、初学年の始期を過ぎてから編入学、転入学するための「編入学試験」や「転入学試験」、一部大学で実施される飛び入学のための「飛び入学試験」などがある。
幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校、高等専門学校、大学学部、短期大学、大学院、専修学校、各種学校、省庁大学校のいずれも、入学試験を課する事例が多い。多くの国で義務教育の公立学校は入学試験を課さないが、高等学校や大学は入学試験を課している。
日本の入学試験
高校・大学の入学時には、基本的に下級学校の卒業または卒業見込(学校の最高学年に在籍者の場合のみ)が前提になる。卒業していない場合は入学資格試験を受験しなければならない場合が多い。中学校の場合は中学校卒業程度認定試験(中検、中認)、高校の場合は高等学校卒業程度認定試験(高認)の合格をもって、卒業と同等とみなされる。高校・大学では学業やスポーツなどで優れた技能を持つものを推薦入試で採用することもある。大学、大学院。専門学校では、社会人としての経歴(職歴など)を有する人に対して社会人入試を実施する学校も増加してきている。
入学試験を受けることを予定している者、及び入学試験を受ける者を受験生という。学校の最高学年に在籍中の受験生は現役生といわれ、既に学校を卒業した受験生は過年度生といわれる。また過年度生のうち、受験で不合格になったまま卒業し、翌年の合格を目指して予備校や自宅などでもう1年の準備を続けている受験生は既卒生または浪人生と言われる。なお既卒生といえばいったん就職して社会人になって受験を目指している人も指す。
入学試験は1月末から3月前半にかけての期間中に行われることが多い。中学受験等では、最近では、12月末頃から翌年1月中旬にかけての期間中に実施されることが多くなった。また、中学受験では、同じ地域の学校が同じ日に一斉に実施するのが通例である。入試は一般に午前中から行われるが、一部の中学校は午後に実施し、併願が可能な例もある[14]。
大学受験等は大学入試センター試験等を除けば試験日が意図的に統一されることはないが、一般入試では私立大学は2月前半、国公立大学の前期日程では2月後半に集中することが多い。
入学試験は学校単位で行われるが、かつては高校受験において学校間格差や過剰な受験競争を防止するため、複数の学校単位で入学試験を行い合格者を居住地や学力などによって振り分ける総合選抜も実施されていた。この制度は合格者が通学したい高校を自由に選べないことや、総合選抜を採用した高校の大学進学実績が大幅に低下したことなどが問題視され、実施していた全ての地区で廃止された。
なお、入学試験の問題は、数学の問題における数式そのもの、社会科の問題における歴史的事実そのものといった場合を除き、作問した学校等に著作権が生じるとされる[15]。それにも関わらず、2019年(平成31年)には大学入試センター試験の英語リスニングテスト問題に登場したキャラクター(通称:リスニング四天王)について、試験終了直後からコラージュ画像や動画などが次々に無断で制作される事象が発生した[16]。
学科試験を設けない入学試験
第二次世界大戦の直前、戦中、大阪府の旧制中等学校では学力よりも戦時に応じた体力、精神力を重視した入学試験を実施していた。1940年2月24日に行われた大阪府女子師範学校(大阪教育大学の源流の一つ)の入学試験では、徒手体操、跳び箱、行進の動作、前方斜め懸垂、砂嚢をもって走る50m走、口頭試問が科目となっていた[17]。
戦後、高校時代の学力などを評価材料とする推薦入試制度を導入する高等学校、大学も現れたが、1990年には、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスが面接を重視したAO入試を開始。学力試験以外の尺度で多様な学生を受け入れる制度を創設した。
ギャラリー
受験生向けの応援メッセージが刻み込まれたキットカット/日本ではこのような季節限定商品が「合格グッズ(入試合格祈願の縁起物)」として数多く発売される。詳しくは「合格グッズとしてのキットカット」を参照のこと。
年末の吉備津神社にて、読み終わったおみくじの札を集めて「合格」の2字を象ってある光景。これ自体は広く一般的な風習というわけではないが、境内にある木の枝などにおみくじの札を結び付ける風習は日本に偏在する。
入試ミス・採点ミス
高校や大学の入学試験では、その後の予備校や外部からの指摘で問題文にミスが発覚することがよくあり、その出題ミスや採点ミスがテレビや新聞でニュースとして報道された。
- 2001年5月、山形大学工学部は1997年度以降の5年間の入試において、実は合格していた受験生428人をセンター試験の傾斜配点集計ミスが原因で誤って不合格にしていたことが判明し、その不合格者たちを追加合格にした[20]。
- 2016年9月2日、東京女子大学(東京都杉並区)は、2016年2月3日に実施した現代教養学部の一般入試の日本史の問題で採点ミスがあり、9人を追加合格したことを発表した。
- 2018年1月6日、大阪大学は、2017年2月に実施した一般入試(前期日程)の「物理」の問題で、出題ミスと採点ミスがあったと発表した。そして、新たに採点をして合否判定をした結果、不合格とした30人が実は合格になっていたことがわかり、その30人を追加合格とした[21]。追加合格者の内訳は、理学部4人、医学部2人、歯学部1人、薬学部2人、工学部19人、基礎工学部2人であり、大阪大学はその受験生たちに対し、金銭補償をすることを明らかにした。
- 2018年4月25日、東京工業大学は、2018年3月13日に実施した第7類の後期試験で、化学を中心に思考力を問う「総合問題」で出題ミスがあり、採点をやり直した結果、4人を追加合格にしたと発表した[24]。
- 2019年1月17日、埼玉県新座市の立教新座高校が2018年2月に実施した入試で採点ミスがあり、採点し直した結果、8人を追加合格とした。その8人は既に別の高校に通っていて、立教新座高校は8人に謝罪した[25]。
- 2023年3月6日、富山大学(富山市)は、2022年2月に実施された2022年度入試の一般選抜(前期日程)の「物理」の問題で採点ミスがあり、本来は合格していた5人が不合格となっていたことが判明した[28]。富山大学はその5人を追加合格とした。
注釈
- ^ Common Entrance Examination for Design(en. 頭字語:CEED)は、インドにおける技術設計分野の大学院のための共通入学試験で、全てのインド工科大学 (IIT) とインド理科大学院 (IISc) で毎年実施される。試験はインド政府の人材開発省に代わってインド工科大学ボンベイ校 (en. IITB) の旧インダストリアルデザインセンター (en) が主催している。
- ^ 日本語音写例:エントゥランス イグザミネイション、エントランス エグザミネーション。[7][8]
- ^ 日本語音写例: - イグザム、- エグザム。[10]
- ^ [ CE < Common Entrance (examination) ]
- ^ [ CEED < Common Entrance Examination for Design ]
- ^ ただし、21世紀の日本では俳句を始めとする詩歌以外で使われることはほとんど無い。
- ^ 東山中学校・高等学校。
- ^ 「天に手が届くように見えて決して届かない見えざる壁」の意。
- ^ 歳時記によって用語が異なるが、要するに、「人が生活するなかで行うこと」を指す。
- ^ マントを翻しながら街灯をゆく受験生はかなり古風なイメージ。
- ^ 作者は高校の国語教師であり、1970年代前半の入学試験の頃の日、無事に受験し終えて母校への報告も済ませた生徒達の、すっかり緊張を解いて仲良く帰路に着く様子を、ほっとした心持ちで職員室から眺めた情景を詠んでいる[43]。
- ^ 「かなしめる」は「愛かなしめる」を意すると同時に「悲かなしめる」でもある。漢字を使っていないのは、「かなしむ」の原義どおりにどちらも含意させているということ。この句では、受験を控えた大変な時期のやり場の無い重圧感のなかで愛犬をいつにも増して可愛がっている少年の、その心の内をおもんばかって詠んでいる。[44]
出典
- ^ a b c d e 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
- ^ a b 小学館『デジタル大辞泉』. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
- ^ a b 三省堂『大辞林』第3版. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
- ^ a b c d 日立デジタル平凡社『世界大百科事典』第2版. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
- ^ a b 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
- ^ 桑原敏明[1]、広瀬義徳[2]、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “試験制度”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
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- ^ 「東日本大震災 合格祈願で人気「オクトパス君」宮城・南三陸、復興のシンボル」『産経フォト』産経デジタル、2019年2月4日。2019年2月16日閲覧。
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- ^ 井奈波朋子(取材協力) (2013年12月5日). “大学入試の「過去問」 自分のサイトに無断で掲載したら「著作権侵害」になる?”. 弁護士ドットコム. 弁護士ドットコム株式会社. 2019年2月28日閲覧。
- ^ 岡田有花「センター試験「リスニング四天王」の衝撃 コラ画像、3D化……止まらない2次創作」『ITmedia News』アイティメディア株式会社、2019年1月21日。2019年2月28日閲覧。
- ^ 学科なし入試、女子師範でスタート(昭和15年2月25日 大阪毎日新聞(夕刊))『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p54 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
- ^ 「122校で採点ミス「意識が甘い」と教育長 兵庫県立高校入試」『産経ニュース』産業経済新聞社、2009年4月20日。2020年2月6日閲覧。Archived 2009-04-24 at the Wayback Machine.
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- ^ “尾木ママ、京大の入試出題ミスに「失った時間は取り戻せないのです!」”. スポーツ報知 (2018年2月3日). 2023年3月10日閲覧。
- ^ “京都大学の物理に出題ミス 問題は何だったのか?”. 四谷学院大学受験合格ブログ. 2023年3月10日閲覧。
- ^ “東京工業大で入試ミス 4人を追加合格、補償実施も(写真=共同)”. 日本経済新聞 (2018年4月25日). 2023年3月10日閲覧。
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- ^ “石川)金沢医大が英語で出題ミス 21日の入試:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2019年2月22日). 2023年3月10日閲覧。
- ^ “九州大の入試で採点ミス システム不具合で5人追加合格:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2021年5月10日). 2023年3月10日閲覧。
- ^ “昨年度の入試ミスで5人不合格 富山大、教授ら13人チェック甘く:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年3月6日). 2023年3月10日閲覧。
- ^ 崔碩栄「韓国の大学入試騒ぎに見る「学歴偏重社会」」『WEDGE Infinity』株式会社ウェッジ、2016年11月22日。2019年2月16日閲覧。
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- ^ “『勉強頑張れ!』は禁句!受験生に言ってはいけない禁句5選と対処法を東大生が解説!”. 東大BKK(勉強計画研究)サークル (2018年7月27日). 2020年6月3日閲覧。
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