キリスト教徒 キリスト教徒の定義

キリスト教徒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/03 01:09 UTC 版)

キリスト教徒の定義

多様な信仰を持つ様々な団体が「クリスチャン」を自称している。一般的にキリスト教徒は、各々の信仰や神学上のある項目に基づいて分かれた教派denomination)という教会集団に属している(「宗派」は仏教用語であり、キリスト教界では用いない)。各教派の間では、それぞれが伝統の中で培ってきた聖書の解釈の違いや聖書に与える権限の大小によってキリスト教徒の定義に差が生まれている。

伝統的教派である正教会東方諸教会カトリック教会聖公会、および福音主義教会ルター派改革派教会)、長老派教会メソジスト監督教会などのメインライン・プロテスタントでは、「クリスチャン」という肩書きは「父と子と聖霊の名において」(『マタイによる福音書第28章19節洗礼を受けたものだけに与えられる称号である。それゆえ、これらのグループの多くは成人の改宗者の洗礼に加えて乳児洗礼や幼児洗礼を進んで行っている。ただし、バプテスト教会は本人の自覚的信仰を重視するため、信仰告白のできない者(例えば乳幼児など)の洗礼を認めていない。

福音派聖書信仰)の教会では新生(ボーン・アゲイン、Born again)した者のみをクリスチャンと認め、聖霊によって新生させられ、自覚的回心を経験し、新生した者のみに、父、御子、聖霊の三位一体の御名によって洗礼を授け、洗礼による新生を退ける。聖書を神の言葉と信じる信仰を堅持する。特に国教会に対する自由教会運動の歴史を持つ。幼児洗礼を認める教会では、教会員と両親が子供に信仰継承をさせる責任があるとする(新生キリスト教)。

キリストの教会(無楽器派 Church of Christ)、ボストンキリストの教会(日本では東京キリストの教会) 、Independent Christian Churchesといった教派では、悔い改めて「父と子と聖霊の名において」洗礼を受けた成人だけがキリスト教徒である、と説いている。つまり、成人の洗礼が非教徒から教徒への転換となる。

極端な自由主義神学的な教派では単にナザレのイエスの教えに従う人はクリスチャンであると考える。これは自由主義神学を自称する中でも極端なグループでのことであり、自由主義神学を謳っていても伝統的・保守的な流れを基本においた教派の方が圧倒的に主流派であり、このような極端な解釈をする教派は少数である。

宗教的包括主義無名のキリスト者論では、イエス・キリストを知らなくてもキリスト教徒と呼べる者があるとする。さらに、宗教多元主義では、キリスト教徒と他の宗教の信者の間に区別を設けない[7][8][9]

上記の、洗礼を受けずしても信じるだけでクリスチャンになれるという極端な自由主義教派や、また基本信条の多くを否定するエホバの証人(ものみの塔)、そして聖書以外の聖典を奉じる末日聖徒イエス・キリスト教会(LDS、モルモン教)や世界平和統一家庭連合(旧統一協会)などの新興グループに関しては、当人たちはキリスト教徒を自称するが、三位一体の教理を採用して基本信条を告白する伝統的なキリスト教の立場からは異端であり非キリスト教徒であるとされるのが一般的である。


注釈

  1. ^ マルティン・ルターも、キリスト教徒を「小さなキリスト」(kleiner Christus)と定義した[4]
  2. ^ 古代イスラエルにおいて、頭に香油を注ぐという行為は、王や大祭司などを叙任祝福することに用いられた。イエス・キリストは、「預言者・祭司・王」の三職を兼ね持った救世主であるとされる。

出典

  1. ^ 八木谷涼子「なんでもわかるキリスト教大辞典」朝日文庫 P14
  2. ^ Religious Composition by Country, 2010-2050”. Pew Research Center (2015年4月2日). 2020年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月5日閲覧。
  3. ^ 英語版ウィクショナリー-ιανός」参照。
  4. ^ 私達の礼拝”. 日本基督教団 金沢教会 (2016年7月17日). 2021年10月11日閲覧。
  5. ^ キリストの似姿を持つ者として生きる(エレミヤ11章/使徒11章)”. 新宿シャローム教会 (2017年3月10日). 2021年10月11日閲覧。
  6. ^ a b よくある質問”. 神戸に在る教会(The church in Kobe). 2021年10月11日閲覧。
  7. ^ ジョン・ヒック著『もうひとつのキリスト教:多元主義的宗教理解』日本基督教団 ISBN 4818400270
  8. ^ ジョン・ヒック『神は多くの名前をもつ:新しい宗教的多元論』ISBN 4000003143
  9. ^ 宇田進『現代福音主義神学』いのちのことば社
  10. ^ イスラム教徒、2100年には最大勢力 世界の宗教人口予測」『日本経済新聞』2015年4月6日付掲載の共同通信記事(2020年8月5日閲覧)
  11. ^ 日経ヴェリタス』2019年12月22日50面【Econo Graphics】キリスト教信者の多い国ランキング
  12. ^ 『宗教年鑑 令和3年版』宗教統計調査の主な結果” (2022年1月17日). 2022年6月14日閲覧。
  13. ^ さわやかな風のように ―福祉のまなざしを求めて―八巻正治著、キリスト新聞社(pp.235)





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