宇賀弁才天とは? わかりやすく解説

宇賀神

(宇賀弁才天 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/09 09:56 UTC 版)

宇賀弁才天坐像
宝厳寺蔵(1565年浅井久政奉納。頭部に小さく宇賀神が乗り、鳥居を構える。)

宇賀神(うがじん、うかのかみ)は、日本で中世以降信仰されたである。財をもたらす福神として信仰された。

概説

神名の「宇賀」は、日本神話に登場する宇迦之御魂神(うかのみたま)に由来するものと一般的には考えられている(仏教語で「財施」を意味する「宇迦耶(うがや)」に由来するという説もある)。
その姿は、人頭蛇身で蜷局(とぐろ)を巻く形で表され、頭部も老翁や女性であったりと諸説あり一様ではない。

元々は宇迦之御魂神などと同様に、穀霊神・福徳神として民間で信仰されていた神ではないかと推測されているが、両者には名前以外の共通性は乏しく、その出自は不明である。また、蛇神・龍神の化身とされることもあった[1]

この蛇神は比叡山延暦寺天台宗)の教学に取り入れられ、仏教の神(天)である弁才天と習合あるいは合体したとされ、この合一神は、宇賀弁才天とも呼ばれる。

竹生島宝厳寺に坐する弁天像のように、宇賀神はしばしば弁才天の頭頂部に小さく乗る。その際、鳥居が添えられることも多い。
出自が不明で、経典では穀霊神としての性格が見られないことなどから、宇賀神は、弁才天との神仏習合の中で造作され案出された神、との説もある[2]

鎌倉市宇賀福神社では、宇賀神をそのまま神道の神として祀っている。

北陸や飛騨高山では在家で宇賀神をお祀りするところがある。石川県金沢市の永安寺では毎年9月23日に大祭を催している。

宇賀神という姓氏が日本中に存在する(宇賀神友弥宇賀神メグなど)。

伝承

宇賀神を載せた弁財天座像。13世紀

15世紀の『看聞日記』に、宇伽神を家に安置したおかげで富裕になった家があったが、昼寝している妻に蛇が乗っているのを見た男が、太刀を抜いて蛇を追い払ったところ、もとの貧乏に戻ってしまったという記述がある[3]

16世紀の辞典『塵添壒嚢鈔』巻第四「宇賀神事」には、宇賀神は伊弊冊尊(イザナミ)から生まれた稲作をはじめ五穀や樹木の成育を司る保食神(ウケモチノカミ)と音通であるため福神となったとあり、8世紀の『丹後国風土記』のトヨウケビメ羽衣伝説と同様の、「水浴びをしていた天女の一人が老夫婦に衣を隠され天に帰れなくなり、万病に効く酒を造って老夫婦に財をもたらしたが、翁に追い出され、辿り着いた丹後の奈具村で宇賀女神として祀られた」という伝承が紹介され、宇賀能売命が富をもたらしたことから福徳神とみなされ、さらに蛇に変体すると記されている[3]

天野信景による18世紀初頭の随筆集『塩尻』の巻49には、神社に祀られている宇賀神像は、老人の顔をした頭部をもつ蛇が蛙をおさえる形をしていて、水を張った器に入れられており、天の真名井の水などという文を唱えて像に水をかけるとあり、熱田神宮貞享(17世紀)の修理の際にその像が出てきたと記されている。信景は、宇加耶は梵語で白蛇のことだが、密教では人首蛇身ではなくただ蛇の像を宇賀神としている、人首蛇身は熱田神宮だけでなく山城国の稲荷神社にもあり、蛇首人身の像もある、なども述べている[3]

脚注

  1. ^ 錦織亮介 『天部の仏像事典』 東京美術 1983年
  2. ^ 山本ひろ子 『異神』 平凡社、1998年。
  3. ^ a b c 弁才天の性格とその変容 宿神の観点から山田雄司、日本史学集録,17,8-26 (1994-12-01)

参考文献

  • 藤巻一保 「異神の章」『神仏習合の本』 学習研究社、2008年、120-125頁、ISBN 978-4056051544

関連項目

外部リンク



宇賀弁才天

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 01:27 UTC 版)

弁才天」の記事における「宇賀弁才天」の解説

中世以降弁才天宇賀神出自不明蛇神)と習合して頭上に翁面蛇体宇賀神をいただく姿の、宇賀弁才天(宇賀神将・宇賀神王とも言われる)が広く信仰されるうになる弁才天化身や龍とされるが、その所説インド中国経典には見られず、それが説かれているのは、日本撰述された宇賀弁才天の偽経においてである。 宇賀弁才天は8臂像の作例多く、その持物は『金光明経』の8臂弁才天全て武器であるのに対し新たに宝珠」と「鍵」(宝蔵の鍵とされる)が加えられ福徳神・財宝としての性格がより強くなっている。 弁才天には「十五童子」が眷属として従うが、これも宇賀弁才天の偽経依るもので、「一日より十五日に至り日々宇賀神に給使して衆生に福智を与える」と説かれ平安童子角髪(みずら)に結った姿をとる。十六童子とされる場合もある。 名称別称本地功徳1印鑰童子 麝香童子 釈迦如来 悟り解脱へ導く神 2官帯童子 赤音童子 普賢菩薩 法を守る神 3筆硯童子 香精童子 金剛手菩薩 学問成就の神 4金財童子 召請童子 薬師如来 金銀財宝商売繁盛の神 5稲籾童子 大神童子 文殊菩薩 五穀豊穣の神 6計升童子 悪女童子 地蔵菩薩 経理経営神 7飯櫃童子 質月童子 栴檀香食物授与の神 8衣裳童子 除哂童子 摩利支天 着衣不自由しない神 9蠶養童子 悲満童子 勢至菩薩 蚕・繭の神、衣服の神 10酒泉童子 密跡童子 無量寿仏 酒の神 11愛慶童子 施願童子 観世音菩薩 愛情恋愛成就の神 12生命童子虚空童子 弥勒菩薩 長寿の神 13従者童子 施無畏童子 龍樹菩薩 経営の神 14牛馬童子 膸令童子 薬王菩薩 動物愛護神 15船車童子 光明童子 薬上菩薩 交通安全の神 16善財童子 乙護童子 大黒天 十五童子司る

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