カドケス高等学校飛空科
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「とある飛空士への恋歌」の記事における「カドケス高等学校飛空科」の解説
第2巻からカルエル、クレア、アリエルらがらが通う、飛空士の養成学科の生徒たち。「空の一族」との戦闘が始まってからは戦闘に参加することになり、途中で戦死者を出しつつも、物語の最後までカルエルらと苦楽を共にする。なお劇中で戦死した生徒たちは死後、学生から正規兵(イスラ空挺騎士団正規一等飛空士)へと特進という扱いを受けている。 イグナシオ・アクシス 声 - 石川界人 カドケス高等学校飛空科センテジュアル組の男子生徒で、謎の多い美形少年。亡き母親(声 - 阿部里果)がベナレス出身であり、ベナレス出身を装っているが偽装である。一匹狼のように振る舞い他の生徒と距離を置いている。原作では第3巻で(アニメ版では入学直後から)アリエルと教習上の正規ペアとなるが、最低限のコミュニケーションしか取ろうとしない。アリエルからは「イグナ」というニックネームで呼ばれる。第4巻以降は劇中での経緯から、他の登場人物から「ツンデレ」という渾名で呼ばれるようになる。 その正体は故グレゴリオ・ラ・イールの愛人の子、つまりカルエルの異母兄弟(アニメ版では弟)。革命の前年、不穏分子排除により母親と共にアレクサンドラ宮殿から追放され、その1ヵ月後に母を亡くす。母親を不幸にさせた皇王家一族に復讐をしようと考え、ニナ・ヴィエントを中心とする革命運動に加わる。劇中時点ではニナの近衛兵を務める兵士であり、クレアとして学生生活を送るニナを護衛するために立場を偽って学生の役を演じつつ、皇王家の生き残りであるカルエルに対する復讐の機会を伺っている。物語開始時点からカルエルの素性を知っており、彼を最も苦しめるような弱みを探ろうとしていたが、次第にその不甲斐なさに失望するようになる。やがてカルエルに対し「復讐に値しない相手」という評価を下しつつも、旧知の間柄でもあるニナ(=クレア)との仲を取り持つため尽力し、第4巻では憎まれ口を叩きつつもクレアの正体を知って失意の底に沈むカルエルに奮起を促したり、カルエルとペアを組んでニナの乗艦を守って戦ったりしている。 学校での成績は不良だが、正体が露見しないための偽装であり、実際は正規兵さえ遥かに凌ぐ凄腕の兵士。第4巻でカルエルとペアを組んで後席に搭乗した際には、「空の一族」との交戦で10機以上の「カマキリ」を撃墜している。物語の結末ではクレアの護衛として「空の一族」の元へと赴くが、シリーズ第4作『とある飛空士との誓約』ではその後の姿が描かれている。 原作小説ではその素性や内面が明かされる第4巻までほとんど登場しない人物だが、アニメ版ではカルエル、クレア、アリエルとともに主要人物という位置づけの人物になっており、原作よりも早い段階から登場するほか、基本的に各話の次回予告を担当している。アニメ版のイグナシオは、原作同様に周囲に距離を取りつつも、一人で頑張っている女性を放っておけない人物という設定で描かれ、カルエルに対して冷たい視線を向ける様子や、原作の終盤で短く言及されていた同級生との交流の詳細が描かれている。原作小説では自らの出自をカルエルに対して明かしているが、アニメ版では去り際にカルエルを「兄」と呼びつつも、自分がカルエルの異母弟であることを明かさないまま別れている。 ファウスト・フィデル・メルセ 声 - 保志総一朗 カドケス高等学校飛空科ヴァン・ヴィール組の男子生徒で、イスラ空艇騎士団団長の息子。自分を置いてクレアとペアになったカルエルに嫉妬し因縁を吹っ掛けるが、皮肉で返されカルエルに敵意を持ち、以後は犬猿の仲。典型的な貴族らしい性格をしており、自分よりも身分の低い人物を見下す一方で、仲間や部下に対する責任感が非常に強い。同級生であるクレアの人物評によれば、陰で努力を積んでおり気遣いもでき、貴族らしい傲慢さも高みを維持する努力の裏返しであるとされる。 第3巻における初の実戦ではヴァン・ヴィール組を率いて「空の一族」を迎撃し、反目していたセンテジュアル組のカルエル、アリエル、ウォルフガング、マルコらとも共闘しつつ、退避行動中も編隊の先頭を務めた。カルエルと互いの健闘を認め合い、わだかまりを超えて戦友としての絆を築くものの、直後に飛来した「銀狐」に撃墜され戦死した。その後、迎撃に参加していた学生はカルエルとアリエルを残して全滅。ヴァン・ヴィール組は戦闘に参加していなかったクレアを除き、最初の実戦で全員が戦死した。 アニメ版では、ファウストとペアを組むヴァン・ヴィール組の男子生徒にはセシリオ(声 - 岩澤俊樹)という名前が設定されている。 ミツオ・フクハラ 声 - 浜添伸也 カドケス高等学校飛空科センテジュアル組の男子生徒。斎ノ国出身。女生徒からは「みっちゃん」というニックネームで呼ばれる。姓の漢字表記は「福原」。やや太り気味の体系で、人柄は温厚そのもの。軍事マニアで、クレアが立ち聞きした難解な軍事の話にも解説を入れられる知識を持つほか、まだ教習で習っていない戦闘知識を実戦に応用する技量もある。教習上の正規ペアとなったチハルとは相性も良く、私的にも恋人のような間柄になっていく。第3巻ではミツオとチハルの視点からのエピソードが描かれ、「戦争で自分や仲間が死ぬことになっても、残った人が悲しみを引きずって挫けてしまっては戦死した人も悲しむ」という死生観をチハルに語っている。 第3巻における初の実戦ではチハルと共に練習機で索敵任務に参加し、「空の一族」の大規模爆撃艦隊を発見する。敵の規模から自分たちの責任の重さを自覚し、陽動作戦にはめられたイスラを守るために触接任務を続け、騎士団の攻撃を援護すべく夜闇に紛れた敵艦隊への照明弾の発射も行った。困難な夜間雷撃を成功に導きつつも「空の一族」の反撃で致命傷を負い、チハルを脱出させた後に囮となり機体ごと爆死した。ミツオの死は、後にチハルやノリアキらの行動に影響を及ぼす。 原作者によれば、ミツオは予定を大きく超えて活躍した登場人物であり読者の反響も大きかったとしており、飛空士シリーズ中でも特に気に入っているサブキャラクターの一人として名を挙げている。 チハル・デ・ルシア 声 - 田野アサミ カドケス高等学校飛空科センテジュアル組の女生徒。ミツオの恋人。バレステロス出身の父と斎ノ国出身の母を親に持つ。いつも派手な化粧をし、餅を風船ガムのように膨らませて食べている。いつも「〜ッス」という語尾でおどけた態度を取っているが、内心では彼女なりのコンプレックスも抱えており、第3巻ではそのことをミツオに打ち明けている。 物語中盤におけるキーパーソンとも言える役割を担う人物。第3巻ではミツオと共に索敵・触接任務に参加し、困難な夜間雷撃を成功に導きつつもミツオとの死別を経験。その後しばらくは恋人を失った悲しみで塞ぎこむが、ミツオが生前に遺した言葉を皆に伝え、彼女自身もそれを支えに立ち直っていく。「空の一族」との戦争が休戦になった後は飛空科では操縦士を専攻し、最後には正式な戦空機パイロットになる。イスラが崩壊する際にはミツオの墓前に、ミツオと共に叙勲された自らの勲章を捧げ、その後交換で持ち帰ったミツオの勲章を彼の家族の元へと届けた。 ウォルフガング・バウマン 声 - 丹沢晃之 カドケス高等学校飛空科センテジュアル組の男子生徒。ベナレス出身。ニックネームは「ウォルフ」。他の同級生たちと同年齢だが、大柄かつ筋肉質のがっちりした体型で、壮年男性と見紛うような容姿。知り合いに習ったというバレステロス語には強いなまりがあり、作中では鹿児島弁風のなまりとして表現される。大勢の暑苦しい同性たちから慕われている。アリエルからは彼女の麺料理を補佐する職人として一目置かれ、後の戦いではそのことで生還の約束も交しているが、一方で彼女に対しては戦いで死ぬことへの覚悟についても持論を語っている。 第3巻での初めての実戦においてはカルエルやアルエルと共に、ファウストが率いる迎撃隊に参加。その体格を生かして対空重機関銃を武器に用い、エル・アルコン後席で射撃を担当。退避行動中は編隊最後尾を務めた。ファウストらを弄ぶように撃墜した「銀狐」を刺し違えてでも撃墜しようとするが叶わず、アリエルの目の前で撃墜され戦死した。 マルコ・サントス 声 - 本橋大輔 カドケス高等学校飛空科センテジュアル組の男子生徒で、ウォルフガングの正規ペア。ウォルフガングを「兄貴」と呼んで慕っており、名前が明かされるまでは「舎弟その一」などと呼ばれている。原作ではウォルフガングのペアになった経緯は明かされていなかったが、アニメ版ではノリアキとナナコがファウストに因縁を付けられている場をウォルフガングが収めたことに感激し、ペアを組んだという経緯が描かれている。 初めての実戦でウォルフガングと共にファウストの指揮下に入り、前席で操縦を担当。退避行動中に「銀狐」の攻撃を受けて機体が被弾、ウォルフガングの乗る後席が爆発した際に衝撃で機体から投げ出されるが、落下傘が開いた状態で防風林に突っ込んだため奇跡的に一命を取り留める。しかし大怪我のために飛空機械の操縦は不可能な身体となり、退院後は普通科に転科した。 原作小説では第3巻にのみ登場し、容姿についての言及がなく挿絵で描かれる場面もないが、アニメ版では第1話から姿を見せており、丸刈りの少年という姿で描かれている。 シャロン・モルコス 声 - 早見沙織 カドケス高等学校飛空科センテジュアル組の女生徒。ベナレス出身。温厚な性格。早熟で、顔立ちや身体、言動が大人びており、そうした印象から周囲にも頼られているが、幼馴染であるベンジャミンからは、精神的な弱さを抱えつつも無理をして周囲の期待に応えようとする傾向を見抜かれている。ベンジャミンとは教習上の正規ペアでもあり、物語を通して恋人の間柄となっていく。 第3巻での初めての実戦では陸戦で拠点防衛を担当し、その際にはシャロンの視点からの物語が描かれている。初めての戦闘におびえるナナコ、ベンジャミン、ノリアキを叱りつけながら銃撃を行い、窮地に追い込まれて自己犠牲を覚悟するが、寮長のシズカに(アニメ版ではイグナシオに)助けられた。第4巻では戦地に赴くベンジャミンにお守りとして自分のスカーフを渡し、そのことが戦闘中に負傷したベンジャミンを精神的、および物理的に救っている。 「空の一族」との戦いが休戦となってからは飛空科で通信士を専攻、物語の結末では帝政ベレナス空軍飛空第72戦隊付け通信士に就任。 ベンジャミン・シェリフ 声 - 立花慎之介 カドケス高等学校飛空科センテジュアル組の男子生徒。帝政ベナレスのキエラサザード出身。ニックネームは「ベンジー」。眼鏡をかけていて理知的な印象の人物で、いつも自分が理系であることをアピールしており、誰に対しても常に丁寧語で会話をする。幼馴染のシャロンからは勉強以外に取り柄がなく頼りない人物と見られている一方、座学の成績は飛空科でトップで、クレアの見立てによれば、観測員としての能力は正規の飛空士にも劣らないとされる。 第4巻における「空の一族」との戦闘でノリアキと臨時のペアを組んで出撃し、ベンジャミンとノリアキの視点からの物語が描かれる。イグナシオ・カルエルペアと共に砲撃戦観測機の直掩に当たるが、観測機が撃墜されたために代行観測機として「空の一族」側の戦艦に肉薄。右手首から先を失いつつも観測機としての任務を全うし、ルナ・バルコを勝利へ導く。敵戦艦の爆発に巻き込まれ、救出困難な状況からカルエルへと「我に構うな」の手信号を送り、そのことがカルエルの奮起を促したが、聖泉に呑まれる寸前にバンデラスに救助され生還する。帰還後は弾着観測の成功を称えられ、勲章を叙勲している。 「空の一族」との戦いが休戦となってからは飛空科で偵察員を専攻し、物語の結末では帝政ベレナス空軍のキエラサザード防空を担当する近衛航空戦隊飛空少尉として、将校候補で入隊した。 ノリアキ・カシワバラ 声 - 下野紘 カドケス高等学校飛空科センテジュアル組の男子生徒。斎ノ国出身。ニックネームは「ノリピー」。ノリのいい少年で、煩悩に満ち溢れている。自称ラーメンマニアで、その知識はアリエルも認めるほど。 級友たちからは地味な個性をいじられ、「町人」「村人」「通行人」という渾名を付けられる。第3巻では「何を言っても笑って済まされる毒舌のモブキャラクター」という個性で周囲から認知されるようになるが、毒舌が過ぎてミツオと後味の悪い形で死別を経験することになり、以降はミツオへの悔恨や負い目に苛まれることになる。 第3巻での「空の一族」との初の交戦では怯えるばかりで何もできず、自分の臆病さや情けなさを痛感して落ち込むが、第4巻ではベンジャミンと臨時のペアを組み前席で出撃。逃げ隠れは得意 という才能を発揮し、複雑な回避運動をしても空間識失調に陥らず、弱音を吐きながらも雲を利用した敵の撹乱を多用して直掩と観測を遂行する。その後敵戦艦の爆発に巻き込まれ機上で大火傷を負い失神するが、ベンジャミンにより脱出させられ、聖泉に呑まれる寸前にバンデラスに救助される。 「空の一族」との戦いが休戦となってからは飛空科で操縦士を専攻、物語の結末では戦空機パイロットとして斎空軍に入隊。しかし着弾観測を成功に導いた際に授与された異国の勲章を、これ見よがしに胸に下げているような振る舞いから、ナナコに軍隊生活の将来を不安視されている。なお当初の構想では「ナナコのヒモになる」という結末も予定されていたが、没となり採用されなかった。 ナナコ・ハナサキ 声 - 南條愛乃 カドケス高等学校飛空科センテジュアル組の女生徒。斎ノ国出身。黒髪で、挿絵では短いツインテールの髪型で描かれている。皆の妹分的な存在の、噂話が大好きな活発な少女で、カルエルの正体に関わる噂話で核心を突きかけてアルエルを動揺させ、クレアに疑惑のきっかけを抱かせる場面もあった。原作小説では、後になってイグナシオに「ツンデレ」という渾名をつけた張本人となっている。 飛空機で飛びたいという動機から飛空士を目指しているものの軍人志願ではなく、戦争で人と殺し合うことに対しては忌避感を持っている。原作小説では、第3巻で「空の一族」の襲撃を経験したことで戦闘に対しておびえるようになるが、「イスラの旅を綴った小説を書く」という新たな目標を得て第5巻で普通科に転科。第5巻では、後年になってナナコが書いた回顧録からの挿話という形での語りが繰り返され、語り手としての立場も担う。ラストシーンにも登場して物語を締めくくり、その際には19歳で小説を書き始め、イスラの旅を終えてから28年後、47歳で『空の果てのイスラ』という回顧録を出版したという自分のその後を語っている。アニメ版では小説家になるという目標は描かれず、最後まで飛空科に在籍している描写となっている。 ノリアキとは第3巻で一時的に正規ペアを組む間柄。第4巻では迎撃に参加しようとするノリアキの説得を試みているが、彼から「ナナコの小説の中で通行人扱いされるのは嫌だ」という旨の返事と、亡きミツオへの負い目を打ち明けられ、説得できないと悟ると彼を送り出している。アニメ版では最初からノリアキと正規ペアを組んでおり、当初から親密に接する様子が描かれている。
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