回避運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 08:16 UTC 版)
航空特攻による被害が問題になると、アメリカ海軍のオペレーションズ・リサーチ部門はただちに特攻機の攻撃を受けた艦のデータ収集に着手した。短期間のうちに477件が収集され、このうち有効なデータは365件であった。分析に当たっては、攻撃を受けた艦を大型艦(空母・戦艦・重巡洋艦)と小型艦軽巡洋艦・駆逐艦等に層別化して、まず艦の回避運動の有無に応じて、特攻機の突入成功率と、対空砲火による撃墜率を分析して、下表のような結果が得られた。 特攻機の突入成功率回避運動大型艦小型艦あり22% 36% なし49% 26% 対空砲火による撃墜率回避運動大型艦小型艦あり77% 59% なし74% 66% 要すれば、大型艦では回避運動をとった方が突入を受けにくいのに対して、小型艦ではむしろ回避運動をとった方が突入を許しやすく、かつ、これは対空砲火による撃墜率と相関しているとの結果であった。この結果は、下記のような理由に基づいていると考えられた。 特攻機の阻止には回避運動よりも対空砲火による効果のほうが大きい 大型艦では回避運動中でも艦が安定しているため、対空砲火に与える影響が小さいのに対して、小型艦では艦の動揺が激しく、対空砲火の射撃精度への悪影響が大きい また特攻機の攻撃経路(急降下か低空か、艦のどの方位から攻撃してきたか)に応じた突入成功率を分析した結果、艦首・艦尾方向から急降下突入を受けた場合には突入を許す危険性が増大すること、また艦の真横方向から低空突入を受けた場合にも同様の傾向が見られるとの結果が得られた。 急降下突入の場合は艦首・艦尾方向から入射すると対空砲火が減少すること、低空突入の場合は対空砲火が減っても突入面積が減る艦首・艦尾を向けた方が有利であることが理由だと思われる。 これらの分析結果に基づき、下記のような勧告がなされたことにより、勧告に従った艦艇に対する突入成功率は29%に低下した。なお勧告に従わなかった艦艇に対する突入成功率は47%という高率を保っていた。 大型艦には回避運動を推奨する一方、小型艦には対空砲火に悪影響を与える回避運動を避けさせる。 特攻機が高空から攻撃してきた場合には艦腹を、低空から攻撃した場合には艦首尾線を向けさせる。
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