盗聴 盗聴器は必ずしも電源を必要としない

盗聴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/08 01:41 UTC 版)

盗聴器は必ずしも電源を必要としない

1945年、ソ連から米大使館に一抱えほどの円周をもつアメリカ合衆国の国章が送られたが、大使のW・アヴェレル・ハリマンはそれを大使館の壁に飾った。7年後、鷹柄のくちばしに盗聴器が発見された。この盗聴器は電波を常に発信するわけではなく、バッテリーも使われていなかった。館外から放射される電波が電源とスイッチを兼ねた。機器が電波を受けると、振動板で変換された音波を拾って自動的に変調された電波が外へ発信される仕組み、つまりトランスポンダであった。

この事件は、1960年に国連大使ヘンリー・カボット・ロッジ・ジュニアが国連の席上で暴露した[7]

発見・除去

ハンディータイプのアマチュア無線機、マランツC701
無線式盗聴器の仕掛け場所を特定するためのフォックスハンティングの際、広帯域受信機や画像のハンディタイプのアマチュア無線機を受信改造(受信改造は合法)したものが使用される。ちなみに画像に表示された周波数399.4550MHzは無線式盗聴器のUHF-Bチャンネルとして使用され、使用頻度はかなり高い。

自意識過剰なストーカーは、積極的に「自分が盗聴していること」を相手にほのめかす場合がある。その場合、盗聴器が仕掛けられていることが予測できる。しかし、ひたすら聞き耳を立てるタイプの盗聴の場合は、盗聴器の存在に気付かないケースも多い。

電話線に仕掛けられたタイプの物ではノイズが入るなど、電話の通話品質に影響が出る場合もあり、不審に思って修理屋を呼んだ際に発覚したケースがあるほか、FMラジオ放送などの帯域を利用する市販盗聴器も多く、ラジオへの混信で気付いたケースもみられる。

無線式盗聴器の場合は、ワイドバンドレシーバー(広帯域受信機)で盗聴電波を確認し、電波の発信源をフォックスハンティングと呼ばれる手法で、おおよその位置や方向を特定して発見する方法が取られている。

また、市販の盗聴器は概ね使用されている周波数が決まっているため、その周波数にのみ反応する比較的安価な電波受信機も市販されており、その機器の反応の強弱で位置を特定、発見することも可能である。ラジオの放送帯域を利用するタイプでは、屋内で音を出したまま、家の外でラジオ放送の選曲をしてみるなどの方法で発見も可能である。

市販の無線式盗聴器で使用頻度が高い周波数

UHFタイプ
398.605MHz(Aチャンネル)
399.455MHz(Bチャンネル)
399.030MHz(Cチャンネル)
VHFタイプ
139.970MHz(Aチャンネル)
139.940MHz(Cチャンネル)
* いずれもモードはナローFMである。

通信システムと盗聴

一般的に「盗聴」というと、特定個所に設置された「盗聴器」ばかりが話題となるが、通信というサービスを提供しているシステム全体が、その様々な通話経路での傍聴も可能である。例えば電話局交換機には「回線モニタ」という経路が付加されており、本来は通話品質をチェックするためのこの経路を傍聴することは、技術的には可能である。これにより「盗聴器という証拠を残さず」に盗聴は可能だとも考えられる。

電話交換機は電話回線局の構内にあって警備されているため、こういった操作を行える者は逆に限られてしまう。日本では戦前の二・二六事件の前後に、事件関係者(当時の陸軍皇道派につながるとされた者)に対して、東京憲兵隊や陸軍省軍務局、事件発生後は戒厳司令部が当時の逓信省の協力を得て電話局で電話の傍受・盗聴を行っていたことが戦後明らかになっている[8]。この行為は戦前においても憲法に定められた「信書の秘密の不可侵」を破るものであった[9]。戦後の日本ではこういった盗聴事件の報告はない。

近年、アメリカ・イギリスが全世界的な電子盗聴網「エシュロン」をひそかに構築して大規模な盗聴行為を行っていることが欧州議会により告発されているほか、AP通信が2005年2月18日に報じたところでは、アメリカ海軍が保有するシーウルフ級原子力潜水艦「ジミー・カーター」が海底ケーブル傍聴用の設備を搭載しているという。[要出典]こういった活動は諜報機関などがテロの動向を探るために行われているとも報じられているが、日本でも同様な電子盗聴網は運用可能である。

ただ、こういった通信経路そのものを傍聴する場合には、通信内容による情報の取捨選択が必要で、現実レベルとしては膨大なコストが掛かる。何故ならテロリストが爆弾を仕掛けるための指示も蕎麦屋への出前の注文も、どちらも電話を使えば同じ通信経路を流れ得るためである。こういったノイズの取捨選択には高い技術的なハードルが存在し、ストーカーが意中の誰かの通話を盗み聞くためには余りに無駄が多いといえよう。これを応用して、無関係な電子メールの中に「爆破」「暗殺」「同時多発」といった単語をわざと混入させて特定の一日に一斉に発信し盗聴システムを混乱させる、反盗聴サイバーデモも行なわれている。

雑情報による防衛

盗聴は、盗聴されている側が気付かずに重要な話を盗み聞かれた場合には、非常な痛手となるが、逆に盗聴を被っている側が盗聴されていることに気づいている場合には、「意図して偽情報を盗聴させる」ことで欺くことも可能である。この「偽情報」は第二次世界大戦の頃より通信が戦術戦略の上で重要な役割を果たすようになると、意図してダミー情報を流布させる場合もあった[10]

こういった実際とはちがうダミー情報の流布は、盗聴側に対する牽制や無駄な動きを強いることにも繋がり、盗聴を逆に利用した「攻撃」だということもできる。また通信自体を雑情報に紛れ込ませることで、情報価値を損なわせることも出来る。例えば子供のなぞなぞ遊びにある「たぬき」はその好例である。「たぬき:あたす、じゅたうよたじにえたきまえ」と言う文では、そのまま聞いたら意味不明だが、「た」を抜く(た抜き)することで「明日、14時に駅前」となるのである。諜報合戦では、しばしばこれに似た騙しあいのケースが存在した。

この他、可逆圧縮など符号化による暗号を用いた通信も有効である。平壌放送乱数放送も、読解用の乱数表が無ければ文字の組み合わせが膨大でもあるため、傍聴は短波ラジオさえあれば誰にでも可能だが、その内容解読が困難になる。(→暗号史

無線電波の傍受

無線によっても各種通信が行われている。たとえば業務無線警察無線消防無線航空交通管制、タクシー無線、鉄道無線)、コンサート会場などで歌手や演奏者の楽器に取り付けられたワイヤレスマイク、身近なところでは携帯電話コードレス電話などである。これらの無線通信は暗号化されているものもあれば、暗号化されていないものもある。

こうした無線通信は電波によって行われるため、適した受信機があれば、電波の届く範囲でなら傍受することができる。受信機は無線機器を扱う店などで誰でも購入することができるので、暗号化されていない無線通信ならば容易に傍受することができる。

日本の電波法では、単にこれらの無線通信を傍受(音声なら聴くこと、画像なら見ること)することを直接は禁止していない。このため、日本では誰でも合法的にすべての無線通信を傍受することができる。ただし、特定の相手方に対して行われる通信を傍受してその存在や内容を誰かに漏らしたり、窃用(せつよう。通信内容を自己または第三者の利益のために利用すること)したりすることは電波法59条で禁止されている[11]

また、通信の当事者以外のものが暗号化されている無線通信を傍受して、その内容を漏らす又は窃用する目的でこれを復調しても電波法違反となりうる[12]




  1. ^ KATZ v. UNITED STATES(389 U.S. 347)
  2. ^ KATZ v. UNITED STATES(389 U.S. 347)CONCUR/MR.JUSTICE HARLAN, concurring.
  3. ^ レーザー盗聴装置を製造している会社
  4. ^ 市民団体の記者会見“隠しどり” ICレコーダー置く 秋田県当局に県政記者会が抗議へ 産経新聞 2014年2月4日
  5. ^ 総務省電波利用ホームページ「微弱無線局の規定 」http://www.tele.soumu.go.jp/j/ref/material/rule/index.htm 「カーラジオ用FMトランスミッター」や「ミニFM」などが一般的な微弱無線局の代表例である。
  6. ^ 谷腰 2004, p. 152-153.
  7. ^ Pursglove SD (1966) Electronic Design 14(15):34-49.
  8. ^ 中田整一『盗聴 二・二六事件』(文藝春秋社、2007年)を参照。
  9. ^ 事件収拾後の帝国議会(秘密会)で逓信省は戒厳令布告後の傍受については戒厳令第14条の「郵信電報の開緘」を根拠とすると説明したが、当時隠匿された布告前の傍受は完全な違法行為であった。
  10. ^ ミッドウェー海戦
  11. ^ (秘密の保護)第59条 何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信(電気通信事業法第4条第1項又は第164条第2項の通信であるものを除く。第109条並びに第109条の2第2項及び第3項において同じ。)を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。(“法に基づく別段の定め”とは電波法第52条に規定される「非常通信」、「遭難通信」、「緊急通信」、「安全通信」、放送受信の5つのこと)
  12. ^ 電波法第109条の2  暗号通信を傍受した者又は暗号通信を媒介する者であつて当該暗号通信を受信したものが、当該暗号通信の秘密を漏らし、又は窃用する目的で、その内容を復元したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
  13. ^ 田宮裕『刑事訴訟法[新版]』,1996)
  14. ^ a b c 「盗聴社会」 夫の浮気調査・部下の発言監視・企業スパイ あの手この手で摘発 読売新聞 1998年4月3日


「盗聴」の続きの解説一覧





品詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「盗聴」の関連用語

盗聴のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



盗聴のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの盗聴 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2021 Weblio RSS