公共政策とは? わかりやすく解説

公共政策

読み方こうきょうせいさく
【英】:public policy

概要

公共部門における意思決定が公共政策となる. どのような政策が望ましいかという問題関連する多く集団価値観, 利害関係異なるため, 非常に難し問題となる. 政策決定に際しては, 集団評価基準住民便益, 効用, 行政効率, 政策効率, 公平性, 平等性など様々なものが考えられ, いろいろな制約が加わることも多い. どのような意思決定が最も合理的かつ最適かといった問題は非常に重要である.

詳説

 OR理論の応用については, その発生からの流れとして, 軍事部門から企業における経営中心とする民間部門, そして公共部門へという大きな流れがある. 公共部門における政策分析道具としてのOR理論, 手法応用はかなり長い歴史有しており, ORの誕生あるいはそれ以前からすで存在していたといってもよいであろう. 民間部門における意思決定では利潤最大化, 効率最大化, あるいは費用最小化などが一般的であるのに対して, 公共部門における意思決定一般国民, あるいは公務員, 官僚による行政機関, あるいはまた国民代表者である政治家からなる立法機関等によって行われるという点が大きな違いである. 公共部門における意思決定公共政策として表現される. どのようにして政策決定すればよいか, あるいはどのような政策が望ましいかという問題関連する多く集団価値観, 利害関係異なるため, 非常に難し問題となることが多い. したがってそれぞれの集団評価基準住民便益, 効用, 行政効率, 政策効率, 公平性, 平等性など実にさまざまなものが考えられる. また政策決定に際しては, 状況によっていろいろな制約が加わることが多い. このような中で意思決定どのように行えばよいか, あるいはどのような意思決定が最も合理的かつ最適かといった問題は非常に重要である. 政策決定, 作成, 実施, 評価の諸過程において, 統計, OR, システム分析, 情報科学等の理論, 手法基づいてデータ, モデル用いて種々の分析を行うことを一般に政策分析と呼ぶ. 政策評価政策定量的評価, 分析するという意味で政策分析一分野である. 公共部門におけるOR理論の応用種々の公共政策の決定過程現れることが多く, 最適政策決定が必要とされる. 代表的な分野としては, 交通・輸送, 施設配置, 政治・行政, 裁判犯罪, 漁業・農業森林, 環境・エネルギー, 医療などをはじめとして実に多く分野考えられる.

 交通・輸送部門では, 初期代表的な研究としてニューヨーク交通局実施した橋やトンネル交通量, スタッフ配置などに関する待ち行列理論用いたものがある. その後交通・輸送ネットワークにおける非常に多種にわたる数多く問題最適化手法あるいはシミュレーション手法によって解かれている(交通政策). 交通問題としては, かなり古い歴史有する鉄道, 航空機, 自動車等に関する交通需要予測, 新設あるいは増設道路に関するプロジェクト選択などが主要な問題として解決図られている. 輸送問題に対しては, あらゆる物資, 情報, 人員等の最適輸送求め問題解かれている.

 公共施設配置問題はORの分野において古い歴史有しているが, 多く場合, それに伴って人員, 物資, 資源などを最適配分するという問題生じるために資源配分問題同時に解かれることが多く, より一般的に配置配分問題呼ばれ, 長い年月わたって多く研究者関心の的となっている. 公共的な施設最適配置考え場合, 評価基準として何を設定すればよいかは重要な問題となる.

 原子力発電プラント, 有害廃棄物あるいは放射性廃棄物の処理施設, 危険廃棄物貯蔵施設などの有害施設最適配置決定する危険施設配置問題も公共政策分析としてOR理論, 手法盛んに用いられてきている. このような問題適用されるモデル分析手法として, いくつかのリスク緩和策の中で何が有効かを決定するために社会便益総額最大化するものを効用関数用いて求め最適化モデルがある. 有害施設, 危険施設配置問題立地案の住民による受け入れ可能性, 費用, 補償, 便益, リスク等の関連する多く要因考慮しなければならないということから多属性効用モデル適用なされている.

 裁判研究のORあるいは犯罪分野における数学的な分析1960年代米国において犯罪件数増大したのに伴って行われ, 司法裁判システム運用に関する問題大統領委員会のもとでも詳細に検討され, この分野におけるORの将来研究方向付け示された. 犯罪者に関する研究1970年代から80年代にかけてかなり積極的に行われ, 待ち行列理論中心とする確率モデルに基づく犯罪者行動分析, そして警察, 検察, 矯正機関等の運用管理にOR手法用いることが活発に行われ, 信頼性理論あるいは確率理論犯罪常習者の行動タイプ分析用いられた. 個人犯罪犯す確率ポアソン過程パラメータとして一定期間内の犯罪率, 逮捕率等を説明したのは画期的なアプローチであった. 1980年代には, 犯罪者年齢, 発生地域, 再犯率などと警察官パトロール活動との関係を確率モデル用いて統計的に分析した成果数多く得られた. また死刑効果について統計的な分析に関する議論長期わたって活発に行われた.

 環境・エネルギー分野における応用活発に行われるようになったのは1970年代初頭Forrester, Meadowsらがローマクラブとして人口の拡大, 天然資源浪費続けば破滅的な結果に至るということシミュレーションモデル(システムダイナミックス)を用いて警告し, いわゆる第一次エネルギー危機勃発した頃からである. その後米国, そしてわが国においてもエネルギー効率的利用, 省エネルギー促進, 硫黄酸化物, 窒素酸化物排出量の削減等による環境問題への考慮モデル導入した分析が非常に数多くなされた. その後枯渇性資源の有効利用, 化石燃料大量消費による二酸化炭素排出量削減等を考慮したモデル(資源管理モデル)が開発され, 国連による地球温暖化防止条約締結のための政策資料提供や世界資源研究所等による分析が行われている.


 医療政策分野におけるORの応用としては, 1970年代緊急医療システム効率性改善, 血液銀行管理問題, 保健サービス計画運用問題等へのOR手法応用などが活発に行われた. 疾病検査調査モデル用いることも一般化しているが, 医療における意思決定主としてOR理論手法応用によって可能となったいえよう.

 保健ケア実施問題分析にORの手法を適用することは非常に時宜を得た課題である. 保健ケアシステムの設計立案問題主として国あるいは地方政府レベル発生する. 保健ケアサービスの地域化システム立案重要な構成要因である. 地域化によってサービス配分はより効率的となり, 保健ケアシステムの費用あるいは質も改善される. 保健ケア管理においてORモデル実行するには, 管理情報システム(MIS)が必要とされる. 医療意思決定モデルに基づく支援システム組み合わせると, MIS意思決定感度, 患者対すケアの質, 生産性等を改善する可能性持っている. 管理ケア実施に関するいろいろなレベル機関意思決定作成し, 支援するために, 統計学, OR, 管理科学, エキスパートシステムの手法を用いたモデル構築されている. 病院管理, 運営に関する決定としては, 給与会計システム, 予算立案分析, 入院退院転院(ADT)のシステム, 外科リハビリ室のスケジュール, 看護婦配置スケジュール, 外来患者スケジュール予約システム, 購入在庫管理維持管理, 管理部門人事システム, 患者医療管理, 医療政策などが含まれる. 人的資源の管理保健ケア組織主要業務である. 人件費通常運営費大半占めているので, この分野は将来より一層重要になっていくであろう.

 スポーツ問題対するOR/MSの応用(スポーツのOR)は50年代からで, 線形計画法期待効用分析, 動的計画法, 制御理論, 組合せ理論, ゲーム理論などのOR/MS技法理論的進歩反映している. 初期における応用例の多く野球であった. 様々なスポーツ関わるスケジューリングルールづくり, トーナメント組立て, あるいは公平性問題70年代から研究された. スポーツ対するOR/MSの関心70年代半ばピーク迎えた. 最近における研究方向としては, 純粋に統計的な問題, ミクロ経済側面, 交渉問題(野球における調停), スポーツに関するビジネス的な意思決定, マーケティング問題, コーチング技術, ギャンブル関連することなどがある. 将来研究方向としては, 新たなルール変更, 新たなトーナメント方式, いくつかの国で広まる新たなスポーツ等によってもたらされる問題への取り組みなどであろう.

 政府資産購入した政府権利譲渡したりするのに競売利用することがある. 広範囲にわたる競売数学モデル提起され, 競合システム設計する場合にこれらを用い方法分析が行われている. 交渉公示価格などの一般的な移転方法としての競売競争入札という経済的競争公共部門においては特に興味のあるものであって, 売り手買い手, あるいは所有者購入者のように, 彼らの目標の間に十分な信頼や一致が存在しないかもしれないような状況においても適用可能で, 公平さあるいは偏見回避といった必要性をも満たす方法である. 競売競争入札形式的な本質は, ORの研究者を含む分析家にとって大変興味深いのである. これらの分野には, 州や連邦石油賃借権, 連邦石炭賃借権, 連邦木材伐採販売, 財務省証券販売, 電力会社コジェネレーション業者や他の業者からの電力購入, 軍や他の政府調達, 道路建設, 宇宙ステーション規制されパイプラインにおける容量配分などが含まれる.

 リスクには事故, 災害, 病気, など多くのものがある. リスク軽減するという公共目標達成し, 不必要なコスト削減するためには, リスク予測し, 管理する組織的なアプローチが必要とされる. 各種リスクに対して, 推計を行うこと, 事故の原因決定すること, 安全性基準設けること, 費用効果分析あるいはリスク便益分析を行うことなどが必要となる. このような手続きリスク管理呼ばれている. 事象樹木原因樹木による原因究明分析, あるいは最小費用目標実現図ろうとする費用効果分析, あるいはまた基準技術によって解決図ろうというアプローチ[1]などがある. OR理論手法適用将来性について, 災害, 危機管理といった分野注目に値する.



参考文献

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[18] J. Linnerooth-Bayer and B. Wihlstrom, "Applications of Probabilistic Risk Assessments : the Selection of Appropriate Tools," Risk Analysis, 11 (1991), 249-254.

「OR事典」の他の用語
公共システム:  交通政策  保健ケア  入札  公共政策  公共施設配置問題  公平性基準  医療政策




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