ハス ハスの概要

ハス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/04 05:42 UTC 版)

ハス
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: ヤマモガシ目 Proteales
: ハス科 Nelumbonaceae
: ハス属 Nelumbo
: ハス N. nucifera
学名
Nelumbo nucifera Gaertn. (1806)[1][2]
シノニム
  • Nelumbo komarovii Grossh. (1940)[3]
和名
ハス
英名
Lotus
江戸時代の農業百科事典『成形図説』のイラスト(1804)

地下茎は「蓮根」(れんこん、はすね)といい、野菜名として通用する。

名称など

日本での古名「はちす」は、花托の形状をの巣に見立てたとするのが通説である。「はす」はその転訛。

水芙蓉(すいふよう、みずふよう)、もしくは単に芙蓉(ふよう)、不語仙(ふごせん)、池見草(いけみぐさ)、水の花などの異称をもつ。

漢字では「」のほかに「」または「[6]の字をあてる。

ハスの花と睡蓮(スイレン)を指して「蓮華」(れんげ)といい[7]、仏教とともに伝来し古くから使われた名である[注 2]

属名 Nelumboシンハラ語から。種小名 nuciferaラテン語の形容詞で「ナッツの実のなる」の意。

英名 Lotus(ロータス)はギリシア語由来で、元はエジプトに自生するスイレンの一種「ヨザキスイレンNymphaea lotus を指したものという。

特徴

水面に繁殖するハス

原産地はインド亜大陸とその周辺。日本では帰化植物として[2]北海道本州四国九州に分布し、池や沼などに自生する[4]

多年草で、春に地中の地下茎から芽を出して茎を伸ばし、水面に葉を出す[4]。草高は約1メートル、に通気のための穴が通っている。はじめは浮葉になるが、のちに長い葉柄をもって水面よりも高く出る葉もある[4]は直径40 - 50センチメートル (cm) の円形で[4]、葉柄が中央につき、撥水性があって水玉ができる(ロータス効果)。沼や池の沿岸部に沿って多く自生する。

花期は夏(7 - 8月)で、葉柄よりも長い花茎を水上に出して、白またはピンク色の1輪の花を咲かせる[4][注 3]。早朝に咲き昼には閉じる[注 4]。花後は、花床の穴の中で、実を結ぶ[4]

栽培品種も、小型のチャワンバス(茶碗で育てられるほど小型の意味)のほか、花色の異なるものなど多数ある。

ロータス、日本の農業百科事典のイラスト(1804)

なお、果皮はとても厚く、土の中で発芽能力を長い間保持することができる。1951年(昭和26年)3月、千葉市にある東京大学検見川厚生農場の落合遺跡で発掘され、理学博士大賀一郎が発芽させることに成功したハスの実は、放射性炭素年代測定により今から2,000年前の弥生時代後期のものであると推定された(大賀ハス)。その他にも中尊寺金色堂須弥壇から発見され、800年ぶりに発芽に成功した例(中尊寺ハス)や埼玉県行田市のゴミ焼却場建設予定地から出土した、およそ1,400年から3000年前のものが発芽した例(行田蓮)もある。

近年の被子植物DNA分岐系統の研究から、スイレン科のグループは被子植物の主グループから早い時期に分岐したことがわかってきた。しかしハス科はそれと違って被子植物の主グループに近いとされ、APG分類体系ではヤマモガシ目に入れられている。

後述するように、人間にとっては鑑賞や宗教的なシンボル、食用などとして好まれる植物であり、雷魚などの淡水魚にとっても好ましい住みかとなるが、繁茂し過ぎると他の水生生物に悪影響を与える懸念がある。このため手賀沼(千葉県)などでは駆除が行われている。水中の茎を切ると組織に水が入って腐り、再生しなくなる[8]


注釈

  1. ^ 最新の植物分類体系であるAPG体系と以前のクロンキスト体系ではハス科に分類されているが、古い新エングラー体系ではスイレン科に分類されている[2]
  2. ^ ラーメンや中華料理で用いる「散蓮華」(ちりれんげ。略して単に「れんげ」とも)の名は、その形が蓮華の花びらによく似ていることから、散り落ちた花びらに見立てたもの。ゲンゲを「れんげ草」というのも、一説には花の形が似ているからだともいう。
  3. ^ 七十二候小暑7月7日ごろ)の次候に「蓮始開(蓮の花が開き始める)」とある。
  4. ^ かつて、「ポン」という音とともに開花するという俗説があった。

出典

  1. ^ "Nelumbo nucifera". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2012年8月19日閲覧
  2. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Nelumbo nucifera Gaertn. ハス(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月23日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Nelumbo komarovii Grossh. ハス(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月23日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 113.
  5. ^ 小林義雄 著、相賀徹夫 編『万有百科大事典 19 植物』1972年。 
  6. ^ 新村出、『広辞苑』、岩波書店(1961)
  7. ^ a b 中村元、『仏教植物散策』、東書選書(1986)
  8. ^ 「ロボットでハス刈り取り/東大大学院開発/大量繁茂の千葉・手賀沼で初実験」『毎日新聞』朝刊2018年7月3日(東京面)2018年7月5日閲覧
  9. ^ 文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会 編「5 種実類」『日本食品標準成分表』(2015年版(七訂))、2015年12月25日。ISBN 978-4-86458-118-9https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/01/15/1365343_1-0205r2_1.pdf2016年10月15日閲覧 
  10. ^ 新星出版社編集部『アジアのお茶を楽しむ』新星出版社、2002年、14頁。 
  11. ^ 湖北特色蔬菜——藕带-长江蔬菜”. 2018年12月25日閲覧。
  12. ^ 北宋の儒学者・周茂叔の著した『愛蓮説』からの引用。[要文献特定詳細情報]
  13. ^ Bhagavad Gita [Chapter 11]”. Telugu Toranam. 2006年11月4日 UTC閲覧。[リンク切れ]
  14. ^ Bhagavad Gita [Chapter 5]”. Telugu Toranam. 2006年11月4日 UTC閲覧。[リンク切れ]
  15. ^ Mạnh Cường, Nguyễn; Ngọc Lin, Nguyễn (2010). Giới thiệu Quốc hoa của một số nước và việc lựa chọn Quốc hoa của Việt Nam [Introducing the national flower of some countries and the selection of national flower of Vietnam] (Report) (Vietnamese). National Archives of Vietnam. 2019年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。


「ハス」の続きの解説一覧




ハスと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ハス」の関連用語

ハスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ハスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのハス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS