ゴム 工業的利用

ゴム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/21 04:56 UTC 版)

工業的利用

生産

天然ゴムの世界の生産量は70%がマレーシアインドネシアタイで占められている。日本はインドネシア、タイから輸入している。

国際的に流通している天然ゴムとしては、ゴムノキから採取された素の状態に近いラテックス、ならびにラテックスから加工されるRSSとTSRがある。以下で解説する。

RSS(: ribbed smoked sheet
日本語では、英語名を訳した「燻煙(くん煙)シート」や、TSRとの対比として「視覚的格付けゴム」と呼ばれる。ラテックスをシート状に凝固させ燻製させたもの。燻煙の目的として、出荷・運送・保管中の防カビ・防腐効果を得るというものがある[17]。視覚格付け[18]が行われ、質のいいものから1X号、1号、2号、...、5号と分類される[17][19][20]
TSR(: technically specitied rubber
日本語では、英語名を訳した「技術的格付けゴム」と呼ばれる。ラテックス等の原料(目標の格付けにより異なる)を、異物を取り除く目的で機械的に粉砕・細断・水洗いした後、熱風で乾燥し、プレス成型したもの。技術的な規格に基づき格付けされる[17][20]

これらの中で流通量が多いのがRSS3とTSR20といわれる等級である。貿易で流通しているRSS3はタイでのみ生産。日本国内流通のRSS3とTSR20の比は1:2である。RSS3を上場している取引所は東京商品取引所[21]、上海期货交易所、SGX(Singapore Exchange Ltd) など。 TSR20を上場している取引所は東京商品取引所[21]、SGX(Singapore Exchange Ltd)など。

加工

ゴムは 素練り → 混練り → 成形 → 加硫 などの加工工程を経て製造される。

素練り
天然ゴムの分子を分断し加工しやすくする工程である。天然ゴムをミキサーに投入し練るが、このときしゃく解剤という分子を分断させる効果をもつ薬品を添加することもある。
混練り
素練りしたゴムにカーボンブラック填料タルク酸化亜鉛炭酸カルシウムなど)、加硫剤硫黄等の架橋物質)、加硫促進剤ほかの薬品を混入、分散させゴム製品を製造できるゴムにする。この工程には1916年にF.H. Banburyにより開発されたバンバリーミキサー英語版やニーダー(kneader)などが用いられる。
加硫
加硫という言葉は主にゴム業界の用語で、正確には原料に対して硫黄などによる架橋反応を起こさせることである。硫黄は熱の働きで低分子のゴムを「橋渡し」し、弾性限界の高いゴムへと変える。硫黄を流し込むうえでは圧力が必要なため、液体窒素などの高圧ガスを使う場合が多い。ただし、架橋反応が進みすぎると逆に弾性限界が低くなり、弾性率が高くなる。

応用例・応用製品

約75%が自動車用のタイヤおよびチューブに用いられている(1997年)[12]

  • 潤滑油太平洋戦争中の国内では南方還送の生ゴムを原料とした潤滑油が製造されていた。生ゴムを軽油と混合溶解させ特定の処理をもって精製、その後に既存の潤滑油で調合するなどして目的とする潤滑油を得ていた。特に戦争末期に多く製造され、最も多い時期では生産高にして同時期の原油由来潤滑油の一割強ほどと、まとまった量が作られた。

  1. ^ a b c 伊藤眞義 『図解入門よくわかる最新ゴムの基本と仕組み』秀和システム、2009年。ISBN 978-4-7980-2425-7 
  2. ^ a b c d 化学はじめて物語”. 日本化学工業協会. 2020年2月10日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i 前田守一「配合設計 (1) 原料ゴムの種類と性質」『日本ゴム協会誌』第51巻第8号、632-640頁。 
  4. ^ 我国ゴム工業誕生の地発祥の地コレクション、2006年7月
  5. ^ a b c d 三田土護護製造株式会社の話西岡正光、日本ゴム協会誌ひすてれしす、第69巻第1号(1996)
  6. ^ 土谷秀立(つちやひでたつ)谷中・桜木・上野公園路地裏徹底ツアー
  7. ^ 創刊70周年特別企画 ゴム産業の変遷60年 1992~2005ゴムタイム、2016年10月24日
  8. ^ a b c 配合師 第1報山田均、日本ゴム協会誌、第84巻 第11号(2011)
  9. ^ a b c d e 戦前日本企業の東南アジアへの事業進出の歴史と戦略- ゴム栽培、農業栽培、水産業の進出を中心として丹野勲 神奈川大学 国際経営論集 No.51 2015-03-31
  10. ^ 高弾性 大辞林
  11. ^ 高弾性 大辞泉
  12. ^ a b 日本ゴム協会 編 『ゴム技術入門』丸善、2004年。ISBN 4-621-07393-1 
  13. ^ a b c カシオ EX-word XD-SF6200収録 ブリタニカ国際大百科事典 小項目電子辞書版 『老化(ゴムの)』
  14. ^ a b カシオ EX-word XD-SF6200収録 百科事典マイペディア 電子辞書版 『老化(化学)』
  15. ^ 長岡技術科学大学化学系の天然ゴム研究
  16. ^ 1. 1 はじめに”. 東京材料. 2020年6月24日閲覧。
  17. ^ a b c d 渡辺訓江, 近藤肇「ゴムの工業的合成法」『日本ゴム協会誌』第90巻第4号、2017年、210-214頁、doi:10.2324/gomu.90.210  アーカイブページ
  18. ^ International Standards of Quality and Packing for Natural Rubber Grade というマニュアルによる格付け[17]
  19. ^ TOCOMにTSR上場、日本が発信する天然ゴムの国際指標”. 2019年10月23日閲覧。
  20. ^ a b TOCOM、TSR(技術的格付ゴム)上場へ”. 株式会社ポスティコーポレーション. 2019年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月23日閲覧。
  21. ^ a b 第10条1号 : 業務規程”. 株式会社東京商品取引所. 2019年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月23日閲覧。


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