ゴムにおける熱力学的定式化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/02 05:14 UTC 版)
「エントロピー弾性」の記事における「ゴムにおける熱力学的定式化」の解説
内部エネルギー E、熱力学温度 T、エントロピー S として、長さ L のゴムを引っ張った時の張力 f は、熱力学第一法則、同第二法則、ヘルムホルツ自由エネルギー F の三つから以下のように表される: f = ( ∂ F ∂ L ) T = ( ∂ E ∂ L ) T − T ( ∂ S ∂ L ) T . {\displaystyle f=\left({\frac {\partial F}{\partial L}}\right)_{T}=\left({\frac {\partial E}{\partial L}}\right)_{T}-T\left({\frac {\partial S}{\partial L}}\right)_{T}.} ここで右辺の第一項が E によるエネルギー弾性、第二項が S によるエントロピー弾性である。エントロピーを実験測定することは難しいが、マクスウェルの関係式を用いることで、全てを計測可能な量だけの式に変換できる: f = ( ∂ E ∂ L ) T + T ( ∂ f ∂ T ) L . {\displaystyle f=\left({\frac {\partial E}{\partial L}}\right)_{T}+T\left({\frac {\partial f}{\partial T}}\right)_{L}.} K. H.メイヤー(英語版)、C. フェリーの実験から、ゴム張力と絶対温度の間には比例関係 f = CT(C > 0は定数)が成り立つことが知られているので、これを先の式に代入すれば ( ∂ E / ∂ L ) T = 0 {\displaystyle (\partial E/\partial L)_{T}=0} が導かれ、ゴムの弾性に関して内部エネルギーは完全に無視できる。すなわち、ゴムの弾性力はまさしくエントロピー弾性だと言える。 あらためてゴム張力を式の形で表すなら以下の通り: f = − T ( ∂ S ∂ L ) T . {\displaystyle f=-T\left({\frac {\partial S}{\partial L}}\right)_{T}.} ゴムの長さ L と T との関係で表せば、断熱変化において d T = C T c L d L , C = − ( ∂ S ∂ L ) T {\displaystyle \mathrm {d} T={\frac {CT}{c_{L}}}\mathrm {d} L,\quad C=-\left({\frac {\partial S}{\partial L}}\right)_{T}} である。ただし c L = − ( ∂ S / ∂ T ) L > 0 {\displaystyle c_{L}=-(\partial S/\partial T)_{L}>0} は長さを一定にしたときの熱容量である。 注意点として、メイヤー・フェリーの実験においてゴムと絶対温度に比例関係が成り立つのは T がおよそ 230 K以上の温度帯に限られている。したがってこの温度よりも低温状態のゴムに関してはこの限りではない。
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