2000年代から現在まで
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「日本電気」の記事における「2000年代から現在まで」の解説
西垣社長体制下において、不採算事業のリストラとガバナンス強化施策に従い、家電分野から撤退した。1999年(平成11年)12月には、DRAM事業部門を分社化し、NEC日立メモリ(エルピーダメモリに改称後、会社更生法適用により、現・マイクロンメモリジャパン)を設立する。また、2000年(平成12年)4月には、社内カンパニーとしてNECソリューションズ・NECネットワークス・NECエレクトロンデバイスを設立したが、2002年(平成14年)11月に半導体関連部門のNECエレクトロンデバイスをNECエレクトロニクス(現・ルネサスエレクトロニクス)として分社化、カンパニー制自体も導入からわずか3年後の2003年(平成15年)4月に金杉社長体制において廃止された。総合電機メーカーとしての暖簾を下ろし、C&Cコンセプトに立ち戻り、コンピュータシステム及び通信を中心とした電機メーカーへ転換した。 2001年(平成13年)、創立100周年記念事業として、玉川事業場の一部を高層ビル群に建て替えた(NEC玉川ルネッサンスシティ)。年間の売上が5兆4097億円と過去最大に達した(2016年度の2倍以上)。 2002年(平成14年)には、「地球シミュレータ」を完成させ、日米スパコン貿易摩擦以降初めてスーパーコンピュータの世界最速を記録し、コンピュートニク・ショックとも呼ばれた。 2004年(平成16年)11月、アビームコンサルティングと業務提携し、グループに加えることで、ビジネスコンサルティングとITサービスを強化する。 また、通信ネットワークのインターネット化・IP化を進め、次世代電話網のNGN (Next Generation Network) に関しては、IT/NW機器業界では一番早くから対応を進めている。 1988年よりNASDAQに米国預託証券(ADR)を上場していたが、米国の監査法人から求められていた保守・サポートサービスと製品が一体になった「複合契約」の収益分析が完了しなかったため、上場維持に必要なSECに対する2006年3月期の年次報告書を提出できず、2007年10月に上場を廃止した。その後、SECとの間では2008年6月に和解が成立した。また、この関連で2006年の中間決算より、日本国内向けの財務諸表の作成基準を従来の米国基準から日本基準に変更している。 2007年(平成19年)4月、日産自動車とともに自動車アプリケーション用リチウムイオン電池の開発を行うオートモーティブエナジーサプライを設立した。2010年にはリチウムイオン電池専門のNECエナジーデバイスを設立。2012年(平成24年)4月には、社内にスマートエネルギー事業本部を設置した。2014年5月にはNECエナジーソリューションズを北米に設立した。しかし、2017年にオートモーティブエナジーサプライ・NECエナジーデバイスともに株式を売却する方針と発表、2019年3月に売却した。北米のNECエナジーソリューションズも2021年9月に売却した。このように、2000年代後半から2010年代にかけて注力した蓄電池等のスマートエネルギー関連事業は、2020年代には縮小した。 2009年3月期決算(2008年度)は、主に半導体分野などの不振が響き、営業損益で62億円、当期損益では2966億円の赤字となった。決算発表で社長の矢野薫は「不採算事業の撲滅」を掲げ、経費の見直しとともに人員削減にも取り組むと述べた。この方針の一環として、2009年度中に国内研究員の約15%(約150人)を製品開発や営業、SEなどの事業部門に異動させる方針と報じられた。 2010年(平成22年)、6月13日、NEC東芝スペースシステムが主製造業者として製造した「はやぶさ」が世界初の地球重力圏外にある天体からのサンプルリターンに成功して地球に帰還する。 同年、携帯電話事業を分社化し、NECカシオ モバイルコミュニケーションズ(後にNECモバイルコミュニケーションズに改称)を設立する。また半導体子会社のNECエレクトロニクスはルネサス テクノロジと合併しルネサス エレクトロニクスとなった。 2011年(平成23年)1月27日、1980年代から国内シェア首位のPC事業を分社化し、世界シェア4位のレノボとともに合弁会社を設立すると発表した。これにより国内最大手のPC事業グループが誕生した。 これらの統合による規模のメリットによって、パーソナルプロダクトのコストダウンやシェア拡大を目指す一方で、成長市場であるクラウドやスマートグリッドなどのビジネス・社会インフラ関係の分野での事業創出を図っている。 2012年3月期決算(2011年度)は、営業利益は737億円となったものの、最終当期損益は1103億円の赤字で2期連続の赤字となる。決算発表では、スマートフォンの伸び悩みやタイでの洪水によるサプライチェーンへの影響といった事業面での事情のほか、繰延税金資産の見直し、構造改革特別費用405億円の計上が赤字の要因として挙げられた。これに先立って同年1月には業績の下方修正とともに1万人の人員削減を含む事業構造改革の実施を発表していた。2013年3月決算期(2012年度)は304億円の当期利益に回復した。 2011年に、SDN (Software Defined Network) を実現するOpenFlow技術を世界で初めて製品化したUNIVERGE PFシリーズを発売する。2013年(平成25年)には、SDN戦略本部を設立し、世界で初めて通信キャリア向けネットワークのSDN仮想化ソリューションを発売する など、SDNを新しい事業の柱として据える方針を打ち出した。しかし、SDNの先駆的な実用化に成功しながらシスコシステムズなどに市場の主導権を奪われたと、2017年の時点で指摘されている。 2010年代にはシンガポールにセキュリティ関連事業の拠点「グローバルセーフティ事業部 (GSD)」を設置。 携帯電話はフィーチャーフォンの時代には2001年から2004年までの4年間国内シェアトップを占めていたが、2011年には7位まで落ち込んだ。2011年発売のMEDIASによりスマートフォンに参入したものの、2013年7月に事業撤退を発表した。フィーチャーフォンの開発は継続するとしたが、パーソナル事業から社会インフラ事業へのシフトがますます鮮明となる。フィーチャーフォンのみとなった携帯電話事業は2016年3月に、NECモバイルコミュニケーションズを解散する形で再びNEC本体直轄となった。携帯電話事業の縮小をめぐっては、2012年に東京国税局の税務調査で、海外事業からの撤退に絡んで要求され支払った補償金などが交際費と認定され、約100億円分の所得隠しを指摘される事態も付随して起きた。 2010年代半ばからはビッグデータ、IoTや人工知能(AI)関連に注力するようになる。2014年4月にはビッグデータ戦略本部を新設した。2015年6月、ものづくりソリューションとして「NEC Industrial IoT」というサービスの提供を開始した。2016年6月には産業技術総合研究所と共同で「産総研‐NEC 人工知能連携研究室」を設立、7月には人工知能技術を集結した「NEC the Wise」ブランドを策定した。 2016年4月、FinTech事業開発室を新設した。また、大阪大学内に次世代コンピューターの基盤技術を開発する「NECブレイン・インスパイヤード・コンピューティング協働研究所」を設立した。 同月、2016年度(2017年3月決算期)の決算より、国際財務報告基準 (IFRS) を適用することを発表した。 2016年12月、1960年代より開発で先行し、常にトップグループを走り続けてきたオフィスコンピュータの製造より撤退。同製品の市場規模の縮小により採算が悪くなった影響である。コンビニエンスストアやホテルなどの稼働中のバックオフィス用コンピュータは独占状態に近く、保守サポートは2023年まで継続する。 2016年12月、人工知能を活用したがん治療用ワクチンの開発を担う新会社「サイトリミック」を設立。2019年には医療分野への展開として、定款を変更し創薬事業に参入した。 2017年2月、公正取引委員会より、消防救急デジタル無線の入札において談合があったとして、他の3社(富士通ゼネラル・沖電気工業・日本無線)とともに排除措置と課徴金支払を命じられる。2017年3月決算期(2016年度)の決算は海外事業の不振などに加え、前記の公取委の課徴金の影響もあって減収減益となり、当時掲げていた中期計画(2019年3月決算期まで)を撤回する事態となった。公取委の談合認定に関してはその後、立ち入り検査を2016年に受けた日付(11月18日)を「NECコンプライアンスの日」として不正再発防止の啓発を社内で実施している。また、業績回復に向けた構造改革として、2018年(平成30年)1月30日に、2020中長期計画にて、国内の間接部門やハードウェア事業領域で希望退職を募るなどによる3000人の人員整理を発表した。 2010年代後半からは日本国外企業のM&Aを積極的に手がけるようになる。2018年1月、イギリスのITサービス会社ノースゲート・パブリック・サービシズの買収を発表。同年12月27日にはデンマーク最大のIT企業である「KMD」を買収すると発表した。この2件はいずれも海外セーフティ事業を強化が目的と報じられた。2020年12月23日には、スイスの大手金融ソフトウェア企業であるAvaloq Group AGの買収を完了。買収価格は20.5億スイス・フラン(約2360億円)。 2018年1月には、地球観測衛星「ASNARO-2」の打ち上げに向け人工衛星の運用を独自で行う施設を新設し、製造から打ち上げ後の運用まで自社で行う初の国内メーカーとなった。当「NEC衛星オペレーションセンター」における衛星の運用事業に加え、衛星画像データの販売事業にも参入する。 第5世代移動通信システム (5G)に向けては、2018年10月24日にサムスン電子と5G向け基地局の技術開発と営業で提携すると正式に発表した。2020年には、次世代通信規格5Gのインフラ整備でイギリス政府やNTTと協業を進める。5G投資の一環として、同年6月にはNTTとの資本業務提携を発表し、NTTはNECに約645億円を出資して4.8%の株式を取得した。2021年11月、大阪大学と共同で「NEC Beyond 5G協働研究所」を設置した。 量子コンピュータ分野では、2019年3月1日、産業技術総合研究所と共同の研究室「NEC―産総研 量子活用テクノロジー連携研究室」を設立した。さらに2020年6月には、量子アニーリングマシン分野で、D-Wave Systemsと協業を発表。量子暗号では、東芝や東京大学、NICT、野村ホールディングスなどと協業・共同検証を行っている。 2019年4月24日には新ブランド「NEC Smart Connectivity」を立ち上げ、ネットワーク技術やソリューションを、IoT化を迎える新たな領域におけるサービス事業を展開すると発表した。 2019年8月5日、新たな移動環境づくりを目指し、空飛ぶ車の試作機の浮上実験を公開した。 2020年3月決算期(2019年度)は、ビジネスPC特需などにより営業利益は前年比120%の1276億円となり、当期利益は過去最高を記録した。 2021年3月決算期(2020年度)は、新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けながらも、5G基地局やGIGAスクールといった需要で補い、減収増益(調整後営業利益1782億円)だった。この決算発表と合わせて公表した2021年度(2022年3月決算期)の業績見込は成長投資などのため前年比減益としたが、株式市場では予想を下回ったとして「失望売り」が起きた。 2021年7月、「NEC都市OS」を提供開始。NECはこれまで、国内13の自治体にスマートシティ事業者として参画しており、日本政府のスーパーシティ構想に応募した全国31自治体のうち17自治体にNECが参画している。
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