衛星の運用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 16:17 UTC 版)
前述のように、KH-11、KH-12などのように、長期間にわたって軌道上で運用される、可視光または近赤外線を用いる光学画像偵察衛星は、燃料を消費することなく、近地点が地球の昼側の半球に維持される太陽同期軌道を取り、近地点の周辺で太陽光を利用して、地表の目標物の撮影を行う。 この場合、当然、近地点高度が低いほうが地表の目標物の分解能は良くなる。一方、低高度においては極くわずかではあるが大気の抵抗を受け、位置エネルギーが減衰するので高度が低下してくる。そのまま何もしなければ、高度が下がれば下がるほど大気の抵抗が大きくなるため、かなり短時間で大気圏に落ち込むことになる。もし、低軌道で長時間活動するのであれば、定期的にスラストをかけて高度を高くする必要があり、これを「リブースト」 (reboost) と呼ぶ。例えば高度約 350km 程度の低軌道を周回する国際宇宙ステーション (ISS) も定期的にリブーストを実施している (詳細は、国際宇宙ステーション#高度制御を参照)。高度が高いほど空気抵抗は小さくなるので、高度約 560km を周回するハッブル宇宙望遠鏡では、リブーストは3年に一回程度で十分になる。 リブーストのために燃料を消費するが、画像偵察衛星の活動可能期間は燃料の残量で決まると考えてよいほど燃料は貴重であるので 、燃料節約のため、平時は近地点の高度が約 250km 以上の軌道を周回し、何らかの非常事態が発生した場合は近地点の高度を約 150km 程度まで低下させ、目標の撮影に適した軌道に移るという運用を行うのが一般的である。この作戦用の軌道変更を「マニューバー」(maneuver)と呼ぶ。前節でも触れたが KH-11 および KH-12 の大きさと形状はハッブル宇宙望遠鏡に非常に似ており、異なる点は、前者がマニューバー用の大量の燃料とスラスターを搭載していることであろうと考えられている。また、KH-11 に対して KH-12 は質量がかなり増加しているが、この大部分はマニューバー用の燃料のものと考えられている。 KH-12は、スペースシャトルにより燃料補給を受ける設計となっていたと考えられているが、これが実際に実行されているか、あるいは別の代替手段 (例えば無人宇宙機) により燃料補給が為されているかは不明である。
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