アポロの杯とは? わかりやすく解説

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アポロの杯

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/30 02:34 UTC 版)

アポロの杯』(アポロのさかずき)は、三島由紀夫旅行記随筆1951年(昭和26年)12月25日から翌1952年(昭和27年)5月8日までの約4か月半にわたる世界一周旅行[注釈 1]見聞録である。「航海日記」「北米紀行」「南米紀行―ブラジル」「欧州紀行」「旅の思ひ出」の5部から成る。横浜港から客船で出帆したこの旅は三島の初の海外旅行で、作家としての自分を高めるべき「自己改造」の契機となった渡航でもあり、三島の一つの転換点として位置づけられている[1][2]


注釈

  1. ^ アジアアフリカオセアニアには行っていないが、「世界一周旅行」と呼称されている。
  2. ^ その面接場所はNHKビルの一部にあった米軍の文化教育関係のオフィスで、試験官は米人であったという。試験官に「お前の小説はいかなる流派(スクール)に属するか」と聞かれ、「いや、大学は法科を出た」と返事をしてしまったと三島は述懐している。この失敗をきっかけに三島は猛勉強し英会話をマスターする[1]
  3. ^ 『聖セバスチャン』は、三島の自伝的小説『仮面の告白』で、主人公が13歳の時に強い衝撃を受けた絵画であるが、作中の絵画は同じグイド・レーニでも、腹に矢のないバージョンの「二本矢」である(ジェノヴァのパラッツォ・ロッソ美術館に所蔵)。三島は「二本矢」の方が好きだと綴っている[9]。これは三島の鋭い審美眼で、美術史的には「二本矢」の方が先のもので、ヴェネツィア美術館「三本矢」の方は一種のレプリカだという[16]。なお、のちに三島は、ダンヌンツィオの歌劇『聖セバスティアンの殉教』を、池田弘太郎との共訳で翻訳もしている。
  4. ^ 三島の小説に『荒野より』(1966年)があり、実話に基づいて、三島宅へ侵入してきた一人の青年のことを書かれている。三島は、「あいつ」(青年)がやって来たところの「荒野」を、「私の心の都会を取り囲んでゐる荒野」と表現している[18]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 私の遍歴時代」(東京新聞夕刊 1963年1月10日-5月23日号)。『私の遍歴時代』(講談社、1964年4月)、遍歴 1995, pp. 90–151、32巻 2003, pp. 271–323、論集II 2006, pp. 267–328
  2. ^ a b c d e f g h 「第二章 物語を動かす『他動的な力』――『潮騒』における日本回帰」(柴田 2012, pp. 36–65)
  3. ^ a b 「第五回 多面体としての性」(徹 2010, pp. 63–75)
  4. ^ a b 「焦土の異端児」(アルバム 1983, pp. 22–64)
  5. ^ a b c d e f 山中剛史「才華繚乱の文学」(太陽 2010, pp. 48–53)
  6. ^ a b c d e f g 「第三章 問題性の高い作家」(佐藤 2006, pp. 73–109)
  7. ^ a b c d e f g h i j k 佐伯彰一「解説」(アポロ 1982
  8. ^ a b c d 井上隆史「作品目録――昭和27年」(42巻 2005, pp. 398–401)
  9. ^ a b c d e f g h i j k l 『アポロの杯』(朝日新聞社、1952年10月)。27巻 2003, pp. 507–641
  10. ^ 山中剛史「著書目録――目次」(42巻 2005, pp. 540–561)
  11. ^ a b c d 田中美代子「解題」(27巻 2003, p. 717)
  12. ^ 久保田裕子「三島由紀夫翻訳書目」(事典 2000, pp. 695–729)
  13. ^ 「年譜 昭和26年12月25日」(42巻 2005, p. 175)
  14. ^ 「あとがき(「夜の向日葵」)」(群像 1953年4月号)。28巻 2003, pp. 64–65
  15. ^ a b 野尻抱影による」(『アポロの杯』本扉裏 朝日新聞社、1952年10月)。42巻 2005, pp. 568–569
  16. ^ a b c 宮下 2010
  17. ^ a b c d e f 太陽と鉄」(批評 1965年11月号 - 1968年6月号)。『太陽と鉄』(講談社、1968年10月)、太陽と鉄 1987, pp. 7–120、論集I 2006, pp. 15–108
  18. ^ 荒野より」(群像 1966年10月号)。荒野 1975, pp. 10–28、20巻 2002, pp. 517–537
  19. ^ 「第二部 追想のなかの三島由紀夫――(二)伝記と評伝」(佐伯 1988, pp. 127–233)
  20. ^ 「その死の場合――三島由紀夫のニヒリズム」「三島由紀夫と天皇制――文学的死・政治的死をめぐって」(田坂 1977, pp. 260–297)





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