スタアとは? わかりやすく解説

スタア


スタア

作者三島由紀夫

収載図書三島由紀夫短篇全集
出版社新潮社
刊行年月1987.11

収載図書決定版 三島由紀夫全集 19 短編小説
出版社新潮社
刊行年月2002.6

収載図書殉教 改版
出版社新潮社
刊行年月2004.7
シリーズ名新潮文庫


スタア

名前 Starr

スタア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/20 02:37 UTC 版)

スタア』は、三島由紀夫短編小説。人気絶頂の20代の映画俳優を主人公にした一人称小説で、三島自身が俳優として初主演した映画『からっ風野郎』の撮影経験がヒントになって書かれた作品である[1][2][3][4]


注釈

  1. ^ それまでも自作の映画化作品『純白の夜』、『不道徳教育講座』などに出演したことはあるが、すべて端役である[15]
  2. ^ 三島は、従来的な自然主義私小説の懺悔や告白小説は〈嘘〉だとし[22][23]、〈あらゆる種類の仮面のなかで、「素顔」といふ仮面を僕はいちばん信用いたしません〉と言っていた[23]
  3. ^ 三島はそこで、〈イリュージョンのために死んでもいい。ちっとも後悔しない〉とも語り、西郷隆盛乃木大将の死は〈イリュージョンの完成〉だとして、〈人間というものにはそういうやみがたい欲求があるのじゃないか〉としている[24]
  4. ^ 澁澤龍彦は『天人五衰』において、「初めて、三島文学の中に〈現実〉が入ってきた」と指摘し、その闖入した〈現実〉を「破綻」とも言い換えている[46][5]
  5. ^ 三島は『小説とは何か』の第11回の中で、〈二種の現実〉(作品内の現実と作品外の現実)を決して混同しないことが〈私にとつては重要な方法論、人生と芸術に関するもつとも本質的な方法論であつた〉とし[39]、〈二種の現実の対立と緊張〉から〈書くことの根源的衝動〉が生れてくると語っている[39]
    その二種の現実のいづれにも最終的にくみせず、その二種の現実の対立・緊張にのみ創作衝動の泉を見出す、私のやうな作家にとつては、書くことは、非現実の霊感にとらはれつづけることではなく、逆に、一瞬一瞬自分の自由の根拠を確認する行為に他ならない。その自由とはいはゆる作家の自由ではない。私が二種の現実のいづれかを、いついかなる時点においても、決然と選択しうるといふ自由である。この自由の感覚なしには私は書きつづけることができない。選択とは、簡単に言へば、文学を捨てるか、現実を捨てるか、といふことであり、その際どい選択の保留においてのみ私は書きつづけてゐるのであり、ある瞬間における自由の確認によつて、はじめて「保留」が決定され、その保留がすなはち「書くこと」になるのである。この自由抜き選択抜きの保留には、私は到底耐へられない。 — 三島由紀夫「小説とは何か 十一」[39]
  6. ^ その三島の二元論的な把握の源は、トーマス・マンの『トーニオ・クレーガー』から得た〈芸術家〉対〈美しい無智者〉の分裂意識[51]、〈小説固有の問題〉である〈芸術対人生、芸術家対生、の問題〉意識で、それは〈われわれが生きながら何故又いかに小説を書くか〉〈われわれが生きながら何故又いかに芸術に携はるか〉という近代小説固有の問題に帰着すると三島が述べている[40]

出典

  1. ^ a b c d 「あとがき」(『スタア』新潮社、1961年1月)。映画論 1999, pp. 309–310、31巻 2003, pp. 515–516に所収
  2. ^ a b 佐渡谷重信「スタア」(旧事典 1976, p. 219)
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 安智史「スタア」(事典 2000, pp. 199–201)
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 山内由紀人「『スタア』の世界――映画と三島由紀夫」(研究15 2015, pp. 4–15)
  5. ^ a b c d e f g h i j 山内由紀人「三島由紀夫の時間――小説家とは何か」(群像 1995年8月号)。「小説家とは何か――三島由紀夫の時間I」として山内 1998, pp. 75–122に所収
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 山中剛史「マスコミ時代の貴種流離譚――三島由紀夫『スタア』論」(研究15 2015, pp. 125–139)
  7. ^ 「作品年譜――昭和35年11月」(旧事典 1976, p. 512)
  8. ^ 井上隆史「作品目録――昭和35年」(42巻 2005, pp. 422–424)
  9. ^ a b c 田中美代子「解題――スタア」(19巻 2002, pp. 805–806)
  10. ^ 山中剛史「著書目録――単独の著書 昭和35年-昭和36年『スタア』」(42巻 2005, p. 585)
  11. ^ a b 「第十二章『憂国』の運命――二つの『憂国』」(山内 2012, pp. 319–329)
  12. ^ 山中剛史「著書目録――単独の著書 昭和46年『獅子・孔雀』」(42巻 2005, p. 614)
  13. ^ Star-三島由紀夫(CiNii Books)
  14. ^ Donald Keene Center of Japanese Culture”. www.keenecenter.org. 2023年6月15日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g h i 滕夢溦 2023
  16. ^ 「あとがき」(『三島由紀夫短篇全集6』講談社、1965年8月)。33巻 2003, pp. 414–416に所収
  17. ^ a b c 「製作意図及び経過」(『憂國 映画版』 新潮社、1966年4月)。映画論 1999, pp. 494–523、34巻 2003, pp. 35–64に所収
  18. ^ a b c 「スタア」(群像 1960年11月号)pp.6-41。殉教・文庫 1982, pp. 177–237、19巻 2002, pp. 695–756に所収
  19. ^ a b c 山中剛史「ぼくはオブジェになりたい」(太陽 2010, pp. 86–95)
  20. ^ a b c d e 「作家と結婚」(婦人公論 1958年7月号)。遍歴 1995, pp. 187–197、30巻 2003, pp. 304–312に所収
  21. ^ a b 石原慎太郎との対談「新人の季節」(文學界 1956年4月号)。『源泉の感情』(河出書房新社、1970年10月)、39巻 2004, pp. 263–276、石原対話 2020, pp. 10–33に所収
  22. ^ 中村光夫との対談「対談・人間と文学――告白の形式」(講談社、1968年4月)。中村対談 2003, pp. 88–90、40巻 2004, pp. 87–88に所収
  23. ^ a b 林房雄宛ての書簡」(昭和22年11月4日付)。38巻 2004, pp. 773–776、太陽 2010, pp. 42–43に所収
  24. ^ a b c 中村光夫との対談「対談・人間と文学――小説家の自己規定」(講談社、1968年4月)。中村対談 2003, pp. 124–138、40巻 2004, pp. 108–115に所収
  25. ^ a b c d e f g h i 「忘我」(映画芸術 1970年8月号)。『蘭陵王』(新潮社、1971年5月)、映画論 1999, pp. 612–615、36巻 2003, pp. 243–246に所収
  26. ^ a b c d e f g h 高橋睦郎「解説」(殉教・文庫 1982, pp. 329–334)
  27. ^ 「小説戯曲文学における物語要素」(折口・発生 2017, pp. 109–143)
  28. ^ 井口樹生「解説『日本文学の発生 序説』――三『物語要素』の敷衍」(折口・発生 2017, pp. 339–349)
  29. ^ a b 江藤淳「文芸時評」(四国新聞 1960年10月27日号)。江藤 1989, pp. 92–94に所収。事典 2000, p. 199に抜粋掲載
  30. ^ 江藤淳「『政治』と『性』の照応」(週刊朝日 1961年3月17日号)。事典 2000, pp. 199–200に抜粋掲載
  31. ^ a b c 山本健吉「文芸時評」(三社連合 北海道新聞中部日本新聞西日本新聞 1960年10月25日号)。山本時評 1969, p. 230-232に所収
  32. ^ 河上徹太郎「文芸時評」(読売新聞 1960年10月24日号)。事典 2000, p. 199に抜粋掲載
  33. ^ 河上徹太郎「文芸時評」(読売新聞夕刊 1960年10月22日号)。研究15 2015, p. 138に抜粋掲載
  34. ^ 中村真一郎「短編小説と詩」(文學界 1960年12月号)。事典 2000, p. 199に抜粋掲載
  35. ^ a b 平野謙「今月の小説(下)」(毎日新聞 1960年11月1日号)。事典 2000, p. 199に抜粋掲載
  36. ^ 荻久保泰幸「三島由紀夫全作品解題――スタア」(必携 1989, p. 106)
  37. ^ 菅野昭正「非存在者の像刻む」(図書新聞 1961年2月18日号)。事典 2000, p. 199に抜粋掲載
  38. ^ 湯浅朝雄「風俗作家としての資質」(日本読書新聞 1961年2月26日号)。事典 2000, p. 199に抜粋掲載
  39. ^ a b c d e 「小説とは何か 十一」(波 1970年5・6月号)。『小説とは何か』(新潮社、1972年3月)、34巻 2003, pp. 737–742に所収
  40. ^ a b 「6月27日(月)」(『小説家の休暇』講談社、1955年11月)。休暇 1982, pp. 11–13、28巻 2003, pp. 556–558、論集I 2006, pp. 113–115に所収
  41. ^ 「楽屋で書かれた演劇論」(芸術新潮 1957年1月号)pp.176-183。休暇 1982, pp. 195–212、29巻 2003, pp. 417–431に所収
  42. ^ 「映画俳優オブジェ論」(京都新聞夕刊 1960年3月28日号)。映画論 1999, pp. 298–299、31巻 2003, pp. 402–403に所収
  43. ^ 「ぼくはオブジェになりたい――ヒロインの名は言へない」(週刊公論 1959年12月1日号)。映画論 1999, pp. 286–292、31巻 2003, pp. 294–300に所収
  44. ^ 「『からつ風野郎』の情婦論」(講談倶楽部 1960年4月号)。映画論 1999, pp. 300–306、31巻 2003, pp. 404–410に所収
  45. ^ a b 中井英夫「二度目の遺書」(図書新聞 1972年5月6日号)。山内 1998, pp. 76–77に抜粋掲載
  46. ^ a b 澁澤龍彦出口裕弘の対談「三島由紀夫――世紀末デカダンスの文学」(ユリイカ 1986年5月号)。澁澤 1986, pp. 198–263に所収
  47. ^ a b c 磯田光一「華麗なる仮面劇(昭和35年~昭和40年)」(アルバム 1983, pp. 65–79)。『磯田光一著作集1 三島由紀夫全論考 比較転向論序説』(小沢書店、1990年6月)に所収
  48. ^ a b c 磯田光一「太陽神と鉄の悪意――三島由紀夫の死」(文學界 1971年3月号)。磯田 1979, pp. 434–445に所収
  49. ^ 松本徹『三島由紀夫論』(朝日出版社、1973年12月)。事典 2000, p. 200に抜粋掲載
  50. ^ 文化防衛論」(中央公論 1968年7月号)。防衛論 2006, pp. 33–80、35巻 2003, pp. 15–51に所収
  51. ^ 「芸術にエロスは必要か」(文藝 1955年6月号)pp.88-90。28巻 2003, pp. 481–485に所収
  52. ^ a b c 田中美代子「小説の創り方19――0氏の自画像」(19巻 2002月報)
  53. ^ a b c 「第六章 小説に描かれた三島由紀夫――蠱惑する文学と生涯【四 実録小説】」(岡山 2016, pp. 170–173)



スタア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 14:27 UTC 版)

霊子甲冑」の記事における「スタア」の解説

南北戦争での戦訓をもとに米国開発された、世界初人型蒸気。しかし、背後巨大な蒸気機関背負ったトップヘビー設計機体バランス極めて悪く、数歩歩いただけ転倒するなど実用機とは言い難かった

※この「スタア」の解説は、「霊子甲冑」の解説の一部です。
「スタア」を含む「霊子甲冑」の記事については、「霊子甲冑」の概要を参照ください。


スタア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/10 09:57 UTC 版)

エナジーブレイカー」の記事における「スタア」の解説

端正な容姿とともに繊細そうな印象をあたえる好青年だが、それとは裏腹に体内別人格を潜ませている不死身の男

※この「スタア」の解説は、「エナジーブレイカー」の解説の一部です。
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