煙草_(小説)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 煙草_(小説)の意味・解説 

煙草 (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/24 16:01 UTC 版)

煙草』(たばこ)は、三島由紀夫短編小説。三島が戦後に書いた短編小説で最も古いものである[1]学習院中等科に通っていた少年時代の「感覚的記憶」を題材・背景に、初めて吸った煙草の感覚と、その煙草をくれた上級生に同性愛的な恋心を抱く「私」の大人への精神構造変換の心境を綴った短編作品[1][2]。終戦前に執筆した『中世』と共に川端康成の推薦を受け、戦後文壇への足がかりとなった作品である[1][2][3]。また三島が自身の「四つの処女作」の一つとしている作品でもある[4][5]


注釈

  1. ^ 未刊短編集はこの時点で未刊行の「煙草」「菖蒲前」「サーカス」「岬にての物語」「贋ドン・ファン記」の収録を見込んだものである[8]。〈佐藤先生〉の序文への御礼が記されており、佐藤春夫が序文を書いていたものと推定されている[7]
  2. ^ 同じエッセイ中で、その頃の思春期の時代については以下のように語っている[11]
    思春期の恋愛は、たばこや酒と同じやうなもので、自分と同年の友だちにひけをとるまい、軽蔑されるまい、そして、何とか自分も同じ列まで行きたいといふ成長の欲望と、純粋な肉体的欲望とが、いつもまざり合つてゐるものです。われわれの成長するときの盲目的な衝動は、一つ一つ分けて考へられるものではなくて、純粋な肉体的欲望も友だちにひけをとるまいといふ競争意識も、また哲学の本とか、むづかしい本に急に親しみ出すやうな知的欲望も、みな一緒くたに、ごつちやになつてゐるものです。それを総括して言へば、人生への渇望といつていいでせう。 — 三島由紀夫「わが思春期」[11]

出典

  1. ^ a b c d e f g 「解説」(真夏・文庫 1996, pp. 289–294)。36巻 2003, pp. 202–207に所収
  2. ^ a b c d e 長谷川泉「煙草」(旧事典 1976, p. 250)
  3. ^ a b c d e f g 私の遍歴時代」(東京新聞夕刊 1963年1月10日-5月23日号)。『私の遍歴時代』(講談社、1964年4月)、遍歴 1995, pp. 90–151、32巻 2003, pp. 271–323に所収
  4. ^ a b c 「四つの処女作」(文学の世界 1948年12月号)。27巻 2003, pp. 122–124に所収
  5. ^ a b c d e f 高橋新太郎「煙草」(事典 2000, pp. 222–223)
  6. ^ a b c d 田中美代子「解題――煙草」(16巻 2002, pp. 752–755)
  7. ^ a b 「解題――跋に代へて(未刊短編集)」(26巻 2003, p. 653)
  8. ^ a b c 「跋に代へて(未刊短編集)」(1946年夏に執筆)。26巻 2003, pp. 587–589に所収
  9. ^ a b 山中剛史「著書目録――目次」(42巻 2005, pp. 540–561)
  10. ^ 久保田裕子「三島由紀夫翻訳書目」(事典 2000, pp. 695–729)
  11. ^ a b c 「わが思春期」(明星 1957年1月号-9月号)。遍歴 1995, pp. 7–89、29巻 2003, pp. 339–408に所収
  12. ^ a b 臼井吉見中村光夫「対談・三島由紀夫」(文學界 1952年11月号)。佐藤 2006, pp. 57–58
  13. ^ a b c d e 「戦後派ならぬ戦後派三島由紀夫」(本多・中 2005, pp. 97–141)
  14. ^ 「第三章――昭和21年」(年表 1990, pp. 53–59)
  15. ^ 「作家白描――三島由紀夫」(木村 1995, pp. 143–168)
  16. ^ a b 「第二章 戦中・戦後の苦闘」(佐藤 2006, pp. 39–72)
  17. ^ 木村徳三宛ての書簡」(昭和21年5月3日付)。38巻 2004, pp. 484–487に所収
  18. ^ a b 長谷川泉「川端康成」(旧事典 1976, pp. 101–102)
  19. ^ 井上謙 1994, p. 469 [1]
  20. ^ 村松定孝「浮説昭和文壇史」(文学者 1985年11月号)。本多・中 2005, p. 101
  21. ^ 「少年」(人間 1948年5月号-1949年3月号)。小説10 1980, pp. 141–256に所収
  22. ^ 田中美代子「死の冥想と失楽園の予感」(『三島由紀夫短篇全集1』月報 講談社、1971年1月)。事典 2000, p. 223
  23. ^ a b c d e 山内由紀人「戦後耽美派の誕生――三島由紀夫と中井英夫:第三章『二度目の遺書』」(山内 1998, pp. 33–43)。事典 2000, p. 223
  24. ^ 「あとがき」(『三島由紀夫短篇全集1 花ざかりの森』講談社、1965年2月)。33巻 2003, pp. 404–405
  25. ^ 三好行雄編『三島由紀夫必携』(学燈社、1983年5月) 改装版は1989年4月、1993年6月。ISBN 978-4312005229
  26. ^ a b 「『煙草』異稿」(1946年1月18日執筆)補巻 2005, pp. 324–327に所収



「煙草 (小説)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「煙草_(小説)」の関連用語

煙草_(小説)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



煙草_(小説)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの煙草 (小説) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS