渋沢栄一と家族
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渋沢栄一(しぶさわ えいいち) (渋沢栄一 → 渋沢篤太夫 → 渋沢栄一) 演:吉沢亮(少年:小林優仁) 本作の主人公。中の家(なかんち)当主・渋沢市郎右衛門の子。 剛情っぱりでおしゃべりな性格。また、物事を理論づけて考えることが得意であり、藍葉の買付や藍農家の番付などに商才を顕していく一方で、理屈に合わない迷信や理不尽には人一倍腹を立てたり反抗したりする。 農民が必死に働いて稼いだ金を代官から御用金として取り立てられることに納得がいかず、江戸幕府の身分制度に怒りを覚える。千代との結婚前後から攘夷思想に染まり、一時は高崎城の襲撃と横浜焼き討ちを計画するが、村に戻ってきた長七郎に「異国との軍事力の差からの武力による攘夷活動の限界」となった事件の数々を知らされる。幕府の嫌疑を逃れ別の道を模索するため、父に頼み込んで喜作とともに村を出て京に上るが、円四郎と出会ったことで一橋家の徳川慶喜に仕えることになり篤太夫(とくだゆう)と名乗る。 慶喜こそが幕府に代わって天下を治めるのに相応しい人物と見定め、「一橋の懐」を豊かにすべく兵の募集や財政改革に手腕を発揮し、慶喜からの信頼を得ていく。慶喜の将軍就任に伴い幕臣となり、進むべき道を見失うものの、パリ万博に参加する慶喜の弟・昭武の随行を打診されたことに光明を見出し、フランスへ旅立つ。パリで西洋の文明と経済の仕組みを学ぶ一方、日本で幕府が崩壊したことを聞かされ、帰国する。帰国後は慶喜が謹慎生活を送る駿府藩に仕え、パリで学んだ民間の資本を集める「合本」の仕組みを試すべく「商法会所」を設立する。新政府から出仕を命じられると任官を固辞するが、大隈重信の説得に心を揺らす。慶喜のもとを訪れ、「日本のために尽くせ」と告げられたことで決意が固まり、名を再び栄一に戻して大蔵省に出仕する。 新政府内にはびこる非効率な業務を目にし、様々な改革を進めるための専門部署である「改正掛」を立ち上げ、近代化のための改革を次々と手掛けていく。しかし幕臣嫌いの大久保利通によって改正掛は解散させられ、反発を強める。その後、三井組・小野組による合同銀行の設立を指揮するが、高所から物を言う官僚の立場に違和感を覚える。旧態依然とした官尊民卑の風潮を打破すべく、民間の第一線に立つことを決意する。 政府を離れた後、第一国立銀行の総監役に就任し、融資により新たな合本組織の設立に携わっていく。公益の追求と民間の地位向上を目指すが、一社で利益を追求する三菱商会の岩崎弥太郎とは相容れず、三菱の海運独占に対抗する。その最中であった明治15年(1882年)、最愛の妻である千代をコレラで亡くし、悲嘆に暮れるが、知人の紹介で後妻となる兼子と再婚。一度は離縁の危機に陥るも、自身の至らなさを深く謝罪し、家族を守るために力を貸して欲しいと頼み、離縁の危機を脱する。弥太郎との勝負は、五代友厚が間に入る形で共同運輸と三菱商会の合併が行われ、2年半に及ぶ戦いに終止符が打たれる。 兼子の助力もあり、多くの事業で成功を収める一方、嫡男・篤二が跡継ぎの重責から逃れるように放蕩を重ねるという家族内の問題に頭を悩ませる。また、慶喜が汚名を被ったまま静岡でひっそりと暮らしていることも気にかけ、徳川の世を再評価する機運が高まったことを気に、慶喜のもとを訪れて伝記作成への協力を依頼。この時は断られたが、作成を諦めないと告げて慶喜のもとを去る。 時代が20世紀へと移り、官僚時代の上司であった井上馨らに講演会で主戦論を掲げるよう頼まれ、戦費のための公債購入を呼び掛けるが、その直後に肺炎を患い、危篤状態に陥る。30年ぶりに東京へと戻ってきた慶喜がこれを知るとすぐに駆け付け「生きてくれたら、なんでも話す」と、伝記への作成に協力することを約束される。病状が回復し、慶喜の伝記作成の場が設けられると、慶喜の口から幕府崩壊に至った真相などが語られ、「隠遁は私の最後の役割だったのかもしれない」という思いも語られた。また、この出来事をきっかけに、今の日本を「心のない張りぼて」と憂い、そうさせたのは自分だと痛感。第一銀行と銀行集会所以外の役員職を除くすべての役職からの辞任を決め、実業界の第一線を退く。 引退後は日本人移民排斥の動きが強まっていたアメリカへと渡り、当時の大統領らと会談し、日本人の姿を理解してもらうための公演を行うなど、民間外交にも力を入れる。その一方、明治44年(1911年)には篤二が妾宅を持ったことを新聞に報じられ、篤二を廃嫡とする苦渋の決断を下し、孫である敬三に跡を継いでほしいと頭を下げて頼み込む。大正12年(1923年)の関東大震災では、既に80歳を超える身でありながら、被害救済のため老体に鞭を打つように最前線に立って行動する。 91歳を迎えてもなお、中華民国水災同情会の会長として中華民国の水害救援への呼びかけを行うなど、生涯をかけて平和への活動を続けたが、昭和6年(1931年)11月11日、家族に見守られながら永眠。 孫で家督をついだ敬三は、追悼式で「死んだあとも、私はみなさまの事業や健康をお守りするつもりでおりますので、どうか今後とも他人行儀にはしてくださらないよう、お願い申します」という亡くなる間際のメッセージを読み上げている。 渋沢千代(しぶさわ ちよ) (尾高千代 → 渋沢千代) 演:橋本愛(少女:岩﨑愛子) 栄一の従妹、先妻。尾高惇忠の妹。 控えめで口数が少ないが芯は強い。幼い頃から学問に憧れ、女子でも学びたいと兄に訴える気丈さを持つ。従兄で幼なじみの栄一とは仲むつまじい関係を築く。栄一が京へ旅立つと、夫に代わって中の家を支え、うたを育てる。パリから帰国した栄一との再会後、栄一が働く静岡に呼ばれ再び同居を始める。 栄一にとってはかけがえのない存在であり、住み込みの書生たちの世話や東京養育院の支援、アメリカ合衆国前大統領の接待など、公私両方に渡って栄一を支えたが、明治15年(1882年)にコレラで危篤となり、栄一に「生きて…必ず…あなたの道を…」と告げて息を引き取る。 渋沢市太郎(しぶさわ いちたろう) 栄一と千代の長男。麻疹のため1歳前に夭逝。 穂積歌子(ほづみ うたこ) (うた → 渋沢うた → 穂積歌子) 演:小野莉奈(2か月:宮島瑠花 / 1歳半:岡部光花俐 / 2-5歳:三井絢月 / 6-10歳:山崎千聖 / 11歳:山崎香歩) 栄一と千代の長女。 誕生してすぐに栄一が京に出たため、長く離れて暮らした。維新後は両親とともに、静岡から東京に引っ越して暮らす。伊達宗城から旧宇和島藩士の穂積を紹介され、互いに惹かれ合って結婚する。 穂積陳重(ほづみ のぶしげ) 演:田村健太郎 歌子の夫。旧宇和島藩士で学者。 阪谷琴子(さかたに ことこ) (こと → 渋沢こと → 阪谷琴子) 演:池田朱那(2-3歳:吉川さくら / 7歳-13歳:森美理愛) 栄一と千代の次女。阪谷芳郎と結婚。 阪谷芳郎(さかたに よしろう) 演:内野謙太 琴子の夫。大蔵省の役人。 渋沢篤二(しぶさわ とくじ) 演:泉澤祐希(少年:齋藤絢永) 栄一と千代の次男、嫡男。 10歳の頃に実母・千代と死別し、以後は姉の歌子とその夫である穂積陳重が親代わりとなる。父・栄一が偉大な存在になるにつれて嫡男としての立場が重くなり、やがて放蕩を重ねるようになる。生活改善のため熊本の学校に入学させられるが、そこでも女性を連れて大阪に逃げたことが発覚したため、栄一によって学校を退学させられ、栄一の実家である血洗島の中の家で謹慎。その後、明治27年に橋本実梁の娘である敦子と結婚する。 その後は妻・敦子との間に、敬三、信雄、智雄という3人の息子が生まれるが、明治44年(1911年)に家を出て妾宅を持ったことが新聞に報じられ、この事態を重く見た栄一により廃嫡とされ、長男の敬三が栄一の後を継ぐこととなる。 大正12年(1923年)に関東大震災が発生した際には、家族を心配して飛鳥山の渋沢家に急いで駆け付け、再会した栄一と互いの無事を喜び抱き合う。既に80歳を超える老齢でありながら、被災者の為に必死で動き続ける栄一の姿を見て、「そういう人だ…あれこそ、渋沢栄一だ」と、改めてその姿に感服する。 栄一の臨終にも駆けつけ、敬三をはじめとする家族皆で最期を看取る。 渋沢敦子(しぶさわ あつこ) 演:藤松祥子 篤二の妻。華族の娘。 渋沢敬三(しぶさわ けいぞう) 演:笠松将(幼少:塚尾桜雅) 篤二の長男、嫡孫。 生物学者を夢見ていたが、父・篤二が廃嫡となったことで、祖父の栄一から直々に跡を継いでほしいと頭を下げられたため、戸惑いながらも頼みを受け入れる。大学卒業後に横浜正金銀行に入行し、銀行業務に就く。 最終回は彼の視点で物語が展開する。岩崎弥太郎の孫である登喜子と結婚し、横浜銀行ロンドン支店での勤務を経て日本へと帰国し、祖父・栄一をより深く知ろうと考える。その中で、栄一のこれまでの人生や成功と挫折など、その多くを知ることとなる。 栄一の死後、追悼式で素顔の栄一のことを語り、臨終前の栄一が遺したメッセージを読み上げる。追悼式後、栄一の故郷・血洗島を訪れ、若かりし頃の栄一と語り合い、走り去る栄一の姿を見送り、血洗島を後にする。 渋沢登喜子(しぶさわ ときこ) 演:今泉マヤ 敬三の妻。旧姓は木内(きうち)で、岩崎弥太郎の孫。 渋沢雅英(しぶさわ まさひで) 演:黒岩紘翔 敬三の子。栄一から「雅英」と命名される。 渋沢信雄(しぶさわ のぶお) 演:岡部ひろき(幼少:森口太翔) 篤二の次男。 渋沢智雄(しぶさわ ともお) 演:越中優人 篤二の三男。 渋沢兼子(しぶさわ かねこ) (伊藤兼子 → 渋沢兼子) 演:大島優子 栄一の後妻。横浜の元豪商・伊藤八兵衛の娘。 実家の家業が明治維新後に没落し、芸者として身を立てるために訪れた置き屋で三味線の師匠となるやすと出会う。その後、やすの勧めで栄一の後妻となる。 栄一と結婚するも、死別した前妻の千代を忘れられずにいる栄一や彼の家族の姿を見ることに苦悩し、「望まれて妻になりたいとは毛頭思いませんが、それでもいくばくかの情がなければ妻にはなれません」と一度は離縁を切り出す。しかし、「もっと自分を叱って欲しい」「この家と家族を守りたい。どうか力を貸してください」と頭を下げる栄一の姿を見て離縁の申し出を撤回。以後は公私両方の面から栄一を支える。 栄一が実業界を引退後に行った民間外交にも同行し、栄一が亡くなるまで妻として彼を支え続けた。 渋沢武之助(しぶさわ たけのすけ) 演:山口大地(4歳:熊谷すばる / 8歳:加藤櫻華) 栄一と兼子の長男。 渋沢正雄(しぶさわ まさお) 演:竹内寿(乳児期:坂井柊介、幼少:番家天嵩) 栄一と兼子の次男。 渋沢博子(しぶさわ ひろこ) / 渋沢純子(しぶさわ すみこ) 演:黒田茉白(博子) / 内藤恵菜(純子) 正雄の娘。 渋沢秀雄(しぶさわ ひでお) 演:遠藤健慎(幼少:菊池拓眞) 栄一と兼子の三男。 渋沢華子(しぶさわ はなこ) 演:遙 秀雄の次女。 大内くに(おおうち くに) 演:仁村紗和 栄一の妾。 大阪の料亭で女中として働いていたところ、大阪造幣局へ出張中の栄一と関係を持ち、ふみを身ごもる。懐妊の知らせを受けた栄一が千代に頭を下げたことで、東京の渋沢邸へ迎えられる。以後、ふみを育てながら邸内で家事に勤しむ。 ふみが尾高惇忠の次男・尾高次郎と結婚後、新しい人生を送るため渋沢家を離れた。 渋沢文子(しぶさわ ふみこ) (渋沢ふみ → 渋沢文子) 演:八木優希(幼少:山本理楽) 栄一とくにの娘。 尾高惇忠の次男・次郎のもとに嫁ぐ。
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