東京から西日本方面の各新幹線
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「新幹線車両」の記事における「東京から西日本方面の各新幹線」の解説
0系 東海道・山陽新幹線の初代車両。東海道新幹線開業時から1986年まで、38次のマイナーチェンジを重ねながら延べ3,216両が製造された。このため、製造年度によって様々な仕様がある。登場時の最高速度は210 km/hだが、後に100系に合わせ220 km/hに引き上げられた。 全電動車方式を採用し、2両単位で編成を増減することが可能である。普通車・グリーン車のほか、ビュフェと称する軽食サービスを行う車両を組み込み、12両編成で登場した。その後、1970年の大阪万博輸送に対応するため16両編成が登場。1975年には、山陽新幹線全線開業に合わせ、食堂車が組み込まれた。 一方、東海道新幹線に比べ輸送規模の小さい山陽新幹線では需要に合わせた短編成化も実施された。国鉄末期の1985年には山陽新幹線内の「こだま」用として普通車のみの6両編成が登場。JR西日本となってからは、座席を一列4人掛けとするなどの車内改良を実施した6・8・12両の「ウエストひかり」も登場した。晩年は4両編成も加わり、もっぱら「こだま」に用いられた。 1999年に後継車両への置き換えに伴い東海道新幹線での営業運転を終了。2008年にはN700系の増備で余剰となった500系への置き換えにより、山陽新幹線でも営業運転を終了した。営業用の新幹線車両としては初の消滅形式である。 100系 1985年、長期にわたり製造され陳腐化した0系の置き換えを目的に、新幹線初のモデルチェンジ車両として登場した。国鉄および民営化で誕生したJR東海とJR西日本によって、1,056両が製造された。 営業運転速度はこれまでより10 km/h速い220 km/hにとどまったものの、モーターの出力増強・新しいブレーキの採用により、16両編成のうち4両を付随車(モーターを持たない車両)として製造コスト削減。車内もアコモデーションアップが図られ、座席間隔の拡大により3人掛け座席をはじめて回転可能としたほか、個室も設けられた。また、新幹線で初めて2階建車両をグリーン車や食堂車などに2両組み込んだことが大きな特徴である。JR西日本では編成中4両を2階建車両とした「グランドひかり」編成も製造された。グランドひかり編成は100N系とも呼ばれ、最高速度を230 km/hに向上した。 東海道新幹線での営業終了は2003年。「のぞみ」の大増発に伴い、全列車の最高速度を270 km/hに引き上げたための措置であった。山陽新幹線では2002年に「グランドひかり」が廃止されたのち、2階建車両を取り外して4両ないし6両に短編成化され「こだま」に使用されたが、2012年3月には、N700系7000番台の増備で余剰となった700系7000番台への置き換えにより、300系とともに山陽新幹線でも営業運転を終了した。 なお、X編成の先頭車と食堂車がリニア・鉄道館、「グランドひかり」編成の食堂車とグリーン車、先頭車が博多総合車両所に展示・保管されている。なお、博多のものはイベント時を除き非公開となっている。 300系 東海道新幹線の高速化を図るため、JR東海が開発した車両。1992年3月14日に営業運転開始した。JR東海のほかJR西日本でも製造され、1998年まで1120両(東海で61本・976両、西日本で9本・144両)が製造された。 最高速度は270 km/hに引き上げられ、この車両とともに「のぞみ」が登場。東京駅 - 新大阪駅間を従来より約30分速い2時間30分で結び、大幅な時間短縮を達成した。1993年には山陽新幹線への乗り入れも開始し、新大阪駅 - 博多駅間を従来より17分早い2時間32分で結んだ。 車体はこれまでの鋼製に代わりアルミニウム合金が採用されたほか、車内にも樹脂製部品が積極的に用いられ、徹底した軽量化が行われた。また、インバータ制御を用いた交流モーターを採用し、旧来の直流モーターに比べ小型化・高出力化が図られた。一方、利用の減少が続いていた食堂車や、軽量化・低重心化の障害となる2階建車両は組み込まず、普通車・グリーン車のみによる16両編成とした。 最高速度の向上により大幅な所要時間短縮を達成した300系であったが、後継車両の投入が相次いだことにより2001年には「のぞみ」の定期運用を外れている。その後は「ひかり」「こだま」の運用が主となり、2007年にN700系の投入が始まると廃車が進められた。 2012年3月に、東海道・山陽新幹線ともに営業運転を終了し、全編成が引退した。短編成化された車両はない。 500系 山陽新幹線のさらなる高速化を目的としてJR西日本が開発した車両であり、新幹線初の300 km/h運転を達成した。1997年に東京駅 - 博多駅間を直通する「のぞみ」として運用を開始し、新大阪駅 - 博多駅間の所要時間を300系より15分早い2時間17分とした。 300 km/hという高速運転を実現するため、0系以来の全電動車編成とし出力を増強。空気抵抗や騒音の低減、高速運転に伴って生じるトンネルの爆音(トンネル微気圧波)への対策のため、車体は角を落とした円形断面として断面積を縮小したほか、先頭車は15 mに及ぶロングノーズにキャノピー型の運転室を設けるなど、他の新幹線車両とは外観上も異なっているのが特徴である。16両編成9本、計144両が製造された。 山陽新幹線最速の車両として東京駅 - 博多駅間を結ぶ「のぞみ」を中心に運用されてきたが、2007年より後継のN700系に徐々にその運用を譲り、2010年に東海道新幹線での営業運転と「のぞみ」での運用を終了した。余剰となった車両は8両に減車のうえ、2008年から0系に代わって山陽新幹線の「こだま」として運用を開始した。 700系 100系の置き換え用として製造された車両。1999年3月13日に営業運転を開始した。285 km/h運転(山陽。東海道は270 km/h)対応車。JR東海・西日本の共同開発に移行(JR西日本の車両は3000番台)。 500系は山陽新幹線での300 km/h運行を可能としたが、製造コストが高い、空力性能の重視によって車内空間に制約があるなどの課題を抱えていた。また、線形条件の劣る東海道新幹線においては300系と同等の270 km/hに留まり、コストに見合った性能が発揮できなかった。そこで700系では費用対効果を重視し、東海道・山陽新幹線全体の底上げを図るとともに、乗り心地・快適性の改善に主眼が置かれた。最高速度は500系より若干抑えた285 km/hとし、先頭形状はカモノハシに似た独特の形状が採用された。この形状は、車内空間への影響を最小限に留めつつトンネル微気圧波を抑制するものである。 「のぞみ」用16両編成としてJR東海・JR西日本により1,200両(東海で60本・960両、西日本で15本・240両)が製造された。現在では「ひかり」「こだま」にも使用されている。派生車種として山陽新幹線専用の7000番台(8両編成、ひかりレールスター用)がJR西日本により製造されたほか、台湾新幹線用の700T型、九州新幹線用の800系や後述のN700系など、本系列をベースとした車両も多い。2012年にN700系のマイナーチェンジ車・N700Aの投入に伴い廃車が進められ、2020年3月をもって東海道新幹線での営業運転を終了した。700系7000番台 JR西日本のみの在籍。0系の改造車で運行されていた「ウエストひかり」に代わる「ひかりレールスター」用として製造された編成。2000年3月10日に営業運転を開始した。 山陽新幹線区間の輸送需要に合わせて、8両編成と短い。外部色は700系と異なるほか、内装は指定席車が4列シートで、指定席車のうち、8号車新大阪寄りがコンパートメント席となっている。定員が少ないため、東海道新幹線には乗り入れない。 2011年にN700系7000・8000番台が登場し、「ひかりレールスター」は「さくら」に置き換わる形で便数が大幅に減少。そのため、今は一部の便を除き、「こだま」で使用されている。 800系 2004年3月13日の九州新幹線部分開業にあわせて製造された車両である。6両編成。基本構造は700系をベースとしているが、区間内に存在する35パーミルの急勾配 を通過するため、全車が電動車となっている。 デザインは水戸岡鋭治の手による。先頭形状は700系の設計時にコンペで不採用になったデザインをもとにした形状である。内装デザインは700系と大きく異なり、「和」を基本コンセプトとしたデザインとされ、座席は全車4列シートで、座席をはじめ内装部品には木材が多用され、内装の色も柿渋色・古代漆色などの伝統色が用いられている。 九州新幹線区間内のみを運行する「さくら」「つばめ」で使用されている。営業運転では山陽新幹線には乗り入れない。歴代車両では唯一東京駅に入線歴がない形式である。 N700系 700系を基本に『最速・快適・環境への適合』 をキーワードとして、さらなる性能向上を目指した車両。JR東海・JR西日本の共同開発により、2007年に営業運転を開始した。 軽量化、空力性能の改善およびモーター出力の増強により、500系以来となる山陽新幹線での300 km/h運行を可能とした。東海道新幹線での最高速度は従来と同じ270 km/hに留まるものの、加速性能の向上、新幹線初となる車体傾斜装置の導入により、所要時間の短縮を達成している。外観は700系に準じるが、エアロダブルウィングと称する先頭形状、空気抵抗を低減する連結部の全周ほろ、小さな窓、大型のフルカラーLEDによる行先表示などが特徴となっている。また、車内は全席禁煙とされ、喫煙者向けに喫煙ルームが設けられた。 500系・700系に代わり主に「のぞみ」への投入が続いており、2012年までに1552両(東海で81本・976両、西日本で16本・256両)が製造され、2013年から15年にかけて全般検査の際にN700Aに準じた仕様に改造された。N700系1000番台・4000番台(N700A) 2013年2月8日から導入。車体傾斜装置をR=5000未満でも動作させるようにして東海道新幹線区間での最高速度を285 km/hとし、中央締結式ディスクブレーキの採用により制動距離の短縮を図った。また、既存の東海道・山陽直通用N700系には、N700Aに準じた改造が行われた。増備途上でN700系の総製作両数が2000両を突破した。 N700系7000番台・8000番台 2011年の九州新幹線全線開業に伴い、山陽・九州新幹線の直通列車用として製造された車両。JR西日本が保有する7000番台と、JR九州が保有する8000番台がある。8両編成で、800系と同様、九州新幹線の35パーミル急勾配区間 を走行するため全電動車編成となっている。さらに桜島など活発な火山があるため、台車のギヤボックスを気密性とし火山灰対策としている。 座席は普通車自由席が5列シート、グリーン車と普通車指定席が4列シートとなっている。内装の一部には木製品が使用され、内装の色は伝統色が用いられている。 山陽・九州新幹線直通の「みずほ」「さくら」「つばめ」に使用されるほか、山陽新幹線内及び九州新幹線内で折り返す一部の列車にも使用されている。 N700S系 東海道・山陽新幹線の次期新幹線車両で、2020年営業運転開始。外観はN700系(N700A)との大きな違いはないが、車体側面の青帯が運転席部分まで伸びていることやライトの形が違うことなど、細部の違いは多く存在する。また、搭載機器の変更も存在する。初期型のN700系置き換え用として登場。また、N700系1000番台・4000番台(N700A)からの改造も計画されている。(N700S系に編入されるかは不明)N700S系6両編成(番台未定) 2022年秋開業予定の西九州新幹線(長崎新幹線)武雄温泉駅 - 長崎駅間「かもめ」用の新型車両。運行区間が短いためグリーン車はなく、自由席と指定席がそれぞれ3両の6両編成となる。喫煙ルームの有無は不明。 L0系 中央新幹線の営業用として製造される車両。2013年から山梨リニア実験線で走行試験を行っている。 2015年4月21日、加速距離約20キロで603 km/hを記録。2020(令和2年)8月17日、950番台走行試験開始。 以上の新幹線営業車両の諸元をまとめ下表に示す。形式によって複数の仕様を持つものは、断りのない限り代表的な値を示した。 表:東海道・山陽・九州・中央新幹線営業車両の諸元形式0系100系300系500系700系800系N700系L0系新製時の編成12両・16両 16両 16両 16両 16両・8両 6両 16両・8両 不明 最高速度 (km/h)210 (220*) 220・230* 270 300・285* 285 260 300 505 編成質量(16両)967 t 839 t・852 t* 711 t 688 t 708 t 700 t 420 t 車体材質普通鋼 アルミニウム合金 編成出力(16両編成時)11,840 kW (16M) * 11,040 kW (12M4T) 12,000 kW (10M6T) 17,600 kW (16M) 13,200 kW (12M4T) 06,600 kW (6M) * 17,080 kW (14M2T) 地上一次リニア同期モーター 電動機直巻整流子電動機 かご形三相誘導電動機 製造初年1964年 1985年 1992年 1997年 1999年 2004年 2007年 2013年 製造両数3,216両 1,056両 1,120両 144両 1,328両 54両 (2,993両*) (14両*) 最大在籍両数2,338両 1,056両 1,120両 144両 1,328両 54両 (製造両数-1両) 備考0系の最高速度は1986年に220 km/hに引き上げ。0系は廃車時に0系を製造継続していたので、製造数と最大在籍数が一致しない。 100系の*付数字は100N系(グランドひかり編成)を示す。 編成出力におけるM・Tは、それぞれ編成中における電動車(モーター付車両)・付随車(モーターなし車両)の両数を示す。 製造両数は、国鉄、JR東海、JR西日本およびJR九州の合算値。 500系の*付数字は7000番台(V編成、8両)を示す。 800系は6両編成時の編成出力。 N700系の製造両数は2019年度までの16両編成(N700A含む)と8両編成の投入数。うち8両編成は240両。N700Sは含まない。783-2059は東海道新幹線火災事件で初代は事故廃車・2代目を再製造した。製造両数は本来の2,992両に再製造の1両を含めている。 L0系の製造両数は2015年までの投入数。 0系 0系ウエストひかり 0系2002年からJR西日本で施行された塗装 100系 100系2002年からJR西日本で施行された塗装 300系 500系 700系 700系7000番台ひかりレールスター 800系 N700系 N700系7000番台山陽・九州直通用 N700S系 L0系
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