全般検査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 04:17 UTC 版)
「全般検査」(ぜんぱんけんさ)とは、車両の主要部分やすべての機器類を取り外し、全般にわたり細部まで検査を行うことで、略して「全検」とも呼ばれる。定期検査としては最も大掛かりなもので、車体の修繕と台車や機器類などの分解・検査・整備のほか、車体の再塗装などや内装のリフレッシュ等も同時に行い、ほぼ新車の状態にする(いわゆるオーバーホール)。期間は編成両数にもよるが、東京周辺の通勤電車の場合でおよそ10日 - 1か月程度要する。蒸気機関車の場合、現在は半年近くの時間を要することがほとんどである。 検査周期(検査のサイクル)は、設計・製造年次の古い車両(旧形車)や新幹線など高速運転を行う車両では短縮されることがある。逆に、イベント用など使用頻度の少ない(走行距離が極端に短い)車両の場合、一時的に休止扱いにして検査時期の期間を引延ばすことも行われている。 東日本旅客鉄道の蒸気機関車C57形180号機は、1999年(平成11年)3月に動態復元された後、2006年(平成18年)11月の入場までの間は一度も全般検査を実施していない。これは国鉄分割民営化の際、既に営業用の蒸気機関車が存在していなかったため蒸気機関車に対する検査周期規定が設けられておらず、このため電気機関車などと同じ8年周期での全般検査を実施しているためである(蒸気機関車の復元・営業が開始されたのは民営化後のため、以降に車両登録が行われた蒸気機関車は民営化後の規定が適用される形となる)。ただし、蒸気機関車の状態や使用頻度によっては検査周期を適宜に早める場合があり、D51形498号機がこれに当たる。一方、西日本旅客鉄道のC57形1号機及びC56形160号機は、民営化以前より車籍を有しかつ民営化後も営業運転に就いていたことから、この2両のみ、国鉄時代の規定通り4年に一度の周期で全般検査を実施している。 国鉄でも無煙化計画の末期に、廃車が進んで残り少なくなった状態の良い蒸気機関車で所要両数を確保し、かつ検査費用を抑えつつ広域に転属配置するため、第一種休車(一休)にして検査期間を伸ばす(継続検査を受けずに延命する)ことが全国で行われていた。 国土交通省告示第5条の「全般検査」として定められた最大検査周期は以下のとおりである。 車両の種類経過年・月数による期間走行距離による期間無軌条電車 3年 - 新幹線電車 3年(4年表内注1) 120万キロメートル(90万キロメートル表内注2) 蒸気機関車 4年 - 貨車 5年 - 新幹線の貨車 5年 - 電車及び貨車以外の新幹線車両 6年 - 懸垂式鉄道、跨座式鉄道、案内軌条式鉄道の電車 6年(7年表内注1) - 内燃機関車及び内燃動車 8年 - 新幹線以外の電車 8年 - 機関車、旅客車、貨物車などの特殊車以外の車種のみを示す。告示では特殊車についても定められているが、ここでは省略した。 経過月・日数による期間以外に走行距離による期間が定められている場合は、いずれかを超えない期間とされる。 長期間運用から外される場合の車両については別規定がある。 表内注1:車両新製から最初の検査に対するもの。 表内注2:主回路制御方式がタップ切替式の車両(現在在籍車なし)。 出典:国土交通省告示第千七百八十六号、別表(第5条関係)
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