全般検査の施工と試運転の繰り返し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 14:03 UTC 版)
「国鉄D51形蒸気機関車200号機」の記事における「全般検査の施工と試運転の繰り返し」の解説
改造後の姿として、外観は梅小路での保存開始当初の姿をテーマに、除煙板周辺の縁取りやボイラーバンドを鉄から真鍮に改めるなど装飾を増やしつつ、そのスタイルを大きく崩さないように配慮して行われ、本線運転にあたり、JR東日本が動態復元したD51 498とは異なり、現役時代同様にボイラー使用圧力は15kgf/㎠ (1470kpa) 、最高運転速度85km/hで使用され、一切のデチューンを施すことなく「現役時代のD51形」と同等の性能を引き出す使用条件を想定して修繕が行われることとなった。[要出典]本線復活発表後の2014年(平成26年)12月より、梅小路蒸気機関車館内にて本線復活に向けた修繕作業および全般検査が開始され、心臓部であるボイラーがサッパボイラへ搬送された。ボイラーのうち第1缶胴、第2缶胴、第3缶胴、火室は修繕により再用され、煙室、火室管板、火室底枠、大煙管、小煙管は腐食のため新造もしくは新品に交換された。火室底枠は本来はリベットで固定しているが、溶接技術の向上とリベット留めができる技術者の減少から溶接に変更され、リベットの飾り鋲を取り付けてカモフラージュしている。[要出典]修繕されたボイラーは2300kPa水圧検査に合格したのち、2016年(平成28年)1月に梅小路運転区に輸送されている。 下回りについては、台車枠や主連棒は再用である。軸箱、ばね装置、ブレーキ装置のほか、摩耗していた第四動輪および第三動輪のカウンターウエイトの蓋も取替えている。 「SL北びわこ号」など関西圏でのSL運転が行われる場合を想定して、本線運転用にATS-SW形の他に新型の保安装置ATS-P形がJR西日本のSLとして初めて搭載されることになった。12系客車や35系客車連結時は客車からATS用電源が供給されるような構成としたため、ATS発電機(蒸気タービン発電機)を直流32V仕様から直流24V仕様に変更、合わせて前部・後部標識灯回路用発電機も同様のものに交換されており、このため前照灯・後照灯も直流32Vの白熱灯が使用できなくなった関係で、前照灯の本体はそのままに電球が直流24Vのシールドビーム球に交換されている。加えて、安定稼働のため励磁装置が取り付けられた。また保安装置のATS-P追加に伴い、従来から取り付けられていた車軸発電機(速度検出用、炭水車第一軸機関士側)に加えてATS-P速度検出用の速度発電機が追加されている。炭水車の機関部との連結面にはATS-P形の車上子、炭水車には同制御装置が搭載された。運転台には、ATS-Pによる音声案内と連動した赤色回転灯が追加されており、騒音で案内が聞き取れないことへの対策としている。 炭水車については、台枠部は精密検査の結果、再用することとなった。水槽部も調査の結果、修復すれば使用に耐えられる状態ではあったが、ATS-Pの制御装置を搭載する際の改造の手間や、今後の更新の可能性も見越した結果、水槽部は廃棄し、新製された。その後修復された主台枠・ボイラー・動輪がSL第二検修庫に運び込まれ、その様子が公開された。 キャブ部分もほぼ新製に近い形で修繕され、運転サイドからの要望により、新たに機関士席・助士席側両方の前面窓に旋回窓が追加された。第一動輪および第四動輪に関しては、車軸が新日鉄住金で新規製作されている。炭水車の台車枠は整備されて再使用されたが、固定しているリベットが劣化していた箇所に関してはボルト留めに変更されており、リベット留めとボルト留めの箇所が混在している。 また、C57 1が炭水車に搭載する重油併燃装置は本機では搭載しておらず、燃料は石炭のみを使用する。 2016年4月1日の京都鉄道博物館の関係者公開時では第二検修庫内で主台枠とボイラーが合体し、ボイラーに外装パーツが取り付けられた。同年9月12日にD51 200の輪軸と車体を合体させる車入れを行い、翌10月に梅小路運転区構内で構内試運転を開始した。同月20日にEF65 1133とスハフ12 129を連結し、米原操車場 - 木ノ本間で本線試運転が行われる予定だったが、梅小路 - 米原操車場間を回送中に、第2動輪と炭水車の輪軸1本が不具合を起こした。そのため草津駅到着の段階で試運転は断念され、網干総合車両所野洲派出所で折り返し、同日中に梅小路に回送された。炭水車台車の車軸は損傷しており、使用不能との判断が下されたが、予備がないことから新規製作で対応することとなり、全検出場は半年後に伸びることとなった。不具合の原因は、軸受の曲線部がきつく、潤滑油が車軸にうまく回りきらなかったことが原因であることが判明したため、再調整を行い、炭水車の車軸の新製交換と第2動輪の修復が終わり、2017年4月10日に機関部、同月21日に炭水車の車入れが実施され、約半年ぶりに線路上にD51 200が姿を見せた。 その後再度構内試運転が行われたのち、2017年5月12日に梅小路 - 向日町をDE10 1118牽引による本線無動走行を行い、45 km/hまでの速度では軸焼けが起きないことを確認し、梅小路に戻った後も構内試運転が行われた。同月19日にEF65 1133とスハフ12 155を連結して米原操車場 - 木ノ本間での本線試運転を成功させ、本機は本線復活に伴う全般検査を完了させた。同年6月3日と翌4日には、「SL北びわこ号」に準じた12系5両編成を牽引し、同じ米原操車場 - 木ノ本間でATS-Pの動作確認に伴う試運転を終了させ、9月から開始される山口デスティネーションキャンペーンを新たに「SLやまぐち号」で導入される35系客車4000番台と同時に運行開始することを目指すべく、6月13日から15日にかけて新山口に回送された。本機が新山口駅に来るのは、1991年(平成3年)にC62 2・C56 160とともに駅構内にて有火展示を行って以来、26年ぶりとなる。 梅小路での試運転中はそれまでは「SLスチーム号」ヘッドマーク掲出時に使用された着脱式小形ヘッドマークステーを取り付けていたが、梅小路での試運転終了後、車体側固定・折り畳み式の大型ヘッドマークステーを新規製作し、未掲出時は折りたたんだ状態で、掲出時はステーを展開してヘッドマークを掲出する方式に変更されており、それまでは非常に野太く雄々しい音を出していた汽笛も調整され、独特のやや高く掠れたような音に変化している。しかし汽笛は再調整されてかつての野太い音に戻った時期もある。 全般検査出場直前のD51 200。除煙板は塗装下地処理中でパテが盛られた状態。 D51 200の公式側サイドビュー。ボイラーバンドや除煙板の周囲が真鍮で装飾されている。除煙板は塗装下地処理中でパテが盛られた状態。 ヘッドマークステーが折りたたみ式に変更された後の前面。ステーは折りたたまれた状態。 24Vシールドビーム電球に交換された前照灯。光り方が白熱灯とは明確に異なる。 リベット留めから溶接に変更され、飾り鋲が付いた火室底枠。 炭水車の車軸に取り付けられた車軸発電機(手前)と、一部がリベット留めからボルト留めに変更された台車枠の固定部(奥) タービン発電機と励磁装置。取付位置が変わり、励磁装置が追加されたため、印象が変化した。 山口線走行前は着脱式の小型ヘッドマークステーを装着していた。
※この「全般検査の施工と試運転の繰り返し」の解説は、「国鉄D51形蒸気機関車200号機」の解説の一部です。
「全般検査の施工と試運転の繰り返し」を含む「国鉄D51形蒸気機関車200号機」の記事については、「国鉄D51形蒸気機関車200号機」の概要を参照ください。
- 全般検査の施工と試運転の繰り返しのページへのリンク