カネミ油症事件 カネミ油症事件の概要

カネミ油症事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/06/03 23:51 UTC 版)

概要

福岡県北九州市小倉北区(事件発生当時は小倉区)にあるカネミ倉庫株式会社で作られた食用油(こめ油・米糠油[2]「カネミライスオイル」の製造過程で、脱臭のために熱媒体として使用されていたPCB(ポリ塩化ビフェニル)が、配管作業ミスで配管部から漏れて混入し、これが加熱されてダイオキシン変化した。このダイオキシンを油を通して摂取した人々に、顔面などへの色素沈着や塩素挫瘡(クロルアクネ)などの異常、頭痛、手足のしびれ、肝機能障害などを引き起こした。

カネミ油症の原因物質であるライスオイルの処分先は、明確にされていないが、カネミ倉庫の事業所が、北九州市及び大阪市に存在する。当時はPCBの無害化技術も確立していない時代であり、不適切な処理をされた蓋然性がきわめて高い。なお、北九州市及び大阪市では、ダイオキシン類の一つであるコプラナーPCBが、河川及び港湾の底質から基準を超えて検出されている。

原因の究明まで

患者発生の直前1968年春には、同社製の「ダーク油」を添加した配合飼料を与えられた鶏40万羽が変死していた[3]

1969年、医学専門誌『福岡医学雑誌』60巻5号には、患者から生まれた死産女子の解剖結果が報告されている。そこでは、副腎皮質が奇形であったことが示唆され、性器の肥大・突出があったことも書かれている。

1971年、専門誌『産科と婦人科』8月号に患者の性機能に関する報告が掲載された。経血が茶褐色に汚くなったことや性ステロイドの減少が見られることをふまえ、「PCB中毒はあらゆる意味で女性性機能を障害すると考えざるを得ない」とまとめている。翌年、『福岡医学雑誌』63巻10号は「PCBには女性ホルモンを増強する作用がある」と報告した。

1975年、長山淳哉[4]らの研究により、ダイオキシン類のポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)が事件に関係していることが判明した。

2002年に当時の坂口厚生労働大臣が、厚生官僚の反対を押し切り「カネミ油症の原因物質はPCBよりもPCDFの可能性が強い」と認めた。発症の原因物質はPCDF及びCo-PCBであると確実視されており、発症因子としての役割は前者が85%、後者が15%とされている。

被害認定

日本全国でおよそ1万4,000人が被害を訴えたが、認定患者数は2006年末現在で1,906人と少ない。うち、相当数が既に死亡している。家族が同じ物を食べて被害にあったにも拘らず、家族のうち1人だけが被害者に認定されるケースもあるなど、認定の基準が被害者には曖昧なものであった。

2004年9月厚生労働省の所管組織である国の「油症治療研究班(九州大学医学部を中心とする研究グループ)」は、新たに血液中のダイオキシン濃度を検査項目に加えた新認定基準を発表した。また、自然界では、ダイオキシンに曝露したことの影響と見られる生殖器官の異常など動物の奇形も見られるが、直接の被害者が男性の場合、精子など遺伝子へのダイオキシン類による被害があっても、親から子へと胎内を通じて直接、子孫に影響があると考えられる女性とちがい、血中のダイオキシン濃度測定だけでは、世代を超えた影響は関知しえないという問題もある。

裁判

民事

1970年、被害者らは食用油を製造したカネミ倉庫・PCBを製造した鐘淵化学工業(現・カネカ)・国の3者を相手取って賠償請求訴訟を起こした。二審では被害者側が国に勝訴し、約830人が仮払いの賠償金約27億円を受け取ったが、最高裁では逆転敗訴の可能性が強まったため、被害者側は訴えを取り下げた。この結果、被害者らには先に受け取った仮払いの賠償金の返還義務が生じることになったが、既に生活費として使ってしまっていたケースも多く、返還に窮した被害者の中からは自殺者も出るに至った。なお、カネカは仮払い金の返還を請求する権利を有していたが、被害者らがカネカに責任がないことを認める代償として仮払い金の返還請求権を行使しないという内容で和解に至った。

提訴は、関係者の思惑から全国統一訴訟団と油症福岡訴訟団にわかれて提訴された。全国統一訴訟は国を相手にしていたが、福岡訴訟団は時間節約を目的として国を外しカネカ・カネミ倉庫を相手とした。和解終結後の認定患者に対してはカネミ倉庫は訴訟患者の和解条件と同様の取り扱いをしているが、医療費自己負担分の支払い、一律23万円の一時金、死亡時3万円の葬祭料の支払い。鐘淵化学工業(カネカ)は新規認定患者約80人に対しては和解金300万円を支払っていない。理由として訴訟時に原告であった人だけを対象としてカネカに責任は無いとする条件で和解した為その後の認定患者への責任は無いとしている。

2008年5月「カネミ油症新認定訴訟」を福岡地裁小倉支部に提出するが、カネミ倉庫(株)の製造・販売した過失を認め、原告らがカネミ汚染油を摂取した為に、カネミ油症にり患したと認めながら、「除斥期間により権利が消滅している」として、原告全員の請求を棄却した[5] 。原告は控訴していたが、福岡高裁2014年2月24日、一審判決を支持しこれを棄却。2015年6月2日に最高裁が上告を棄却し、判決が確定した。

刑事

当時の社長・加藤三之輔と工場長が業務上過失傷害容疑で告訴された。社長は無罪。工場長は一、二審とも禁錮1年6月の実刑判決を受け、服役した。


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  1. ^ 明石昇二郎 『黒い赤ちゃん-カネミ油症34年の空白』 講談社 2002年 p.132. 国際会議Dioxin99
  2. ^ カネミ倉庫株式会社では、2013年8月現在、引き続き食用こめ油・米糠油を製造している(外部リンクの公式ウェブサイトに記載あり)。
  3. ^ 1985年2月13日付毎日新聞夕刊
  4. ^ 2002年当時、国の「油症治療研究班」メンバーで、九州大学医療技術短期大学助教授
  5. ^ カネミ油症「新認定訴訟」で正義ある判決を求める要請書
  6. ^ NHK ETV特集「毒と命~カネミ油症 母と子の記録~」


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