象徵とは? わかりやすく解説

象徴

読み方:しょうちょう

「象徴」とは、概念感情のような抽象的な物事を、より具体的なものに置き換えて端的に示すこと、または、そのような役割をもつもののことである。シンボルsymbol)ともいう。

「象徴」は、とうてい言い尽くすことのできないような奥深さのあるものごとを、(あえて言い尽そうとはせず、むしろ奥深さ損なわない表現手段として)よりシンプルな形で代替する、記号あるいは比喩寓意)である。

「象徴」の例

王政・君主制の国家においては、しばしば特定の宝物が「正統王権を持つことの証」として継承されてきた。こうした宝物を「レガリアregalia)」という。そして、レガリアは、とりもなおさず王権の象徴」である。たとえば日本の皇室に伝わる「三種の神器」は皇位象徴するレガリアである。
国旗国歌などは、それぞれ国家の象徴としても位置づけられる。

象徴天皇」は、天皇主権者為政者ではなく日本国の象徴」であり「日本国民統合の象徴」と位置づける旨の言葉である。戦後成立した日本国憲法」の第1条由来する

「象徴」の語源・由来

日本語の「象徴」という言葉は、明治時代中江兆民フランス語の「symbole(サンボル)」の訳語として考案したいわゆる漢訳語(和製漢語)であるとされる

現代中国語でも「象徴」(簡体字では「象征」)は symbole(英語の symbol)の訳語として用いられている。
そもそもフランス語の symbole や英語の symbol は、古代ギリシャ語の sumbolon(シュンボロン)を語源とする。sumbolon は「合わせる一緒にする」という意味の動詞「symballein(旬バレイン)」から派生した言葉とされる。もともとは契約取引の際に使われる印鑑証拠品を指すような言葉だったらしい。

「象徴」の類語

「象徴」の主な類語には、「シンボル」表象」「代表」「典型」「比喩」などが挙げられるいずれも「ある物事が他の物事を表す」ことを意味する表現である。

「シンボル」は「象徴」の語源(の英語名)を和訳せずカタカナ表記した言葉であり、その意味で象徴の同義語といえる

表徴」も「象徴」の同義語として扱えるとりわけ内在している要素外面顕著に現れた徴(しるし)」という意味で用いられることもある。

表象」にも「象徴」と同じ意味があるが、どちらかといえば表象」は哲学用語として、 symbol訳語としてよりも representationVorstellung)の訳語として用いられることが多い。哲学における「表象」は、外的事象知覚され意識中に現れたもののことである。

比喩」は、ある物事直接的に示すのではなく、他の類似した物事によって(婉曲的に)表現する、という修辞技法のことである。「比喩」は表現方法を指す言葉であり「象徴」とは使い所異なる(相互に言い換えることは難しい)。

「象徴」を含む熟語・言い回し

「象徴的」とは

象徴的」の読み方は、「(それが)(何かを)象徴している」または「まるで象徴しているかのようである」という意味の形容動詞として用いられる表現である。

たとえば、ある事柄端的に体現しているかのような具体例を「象徴的な出来事」という。

概念感情などの抽象的な事柄を、直接的に説明しようとせず、それを彷彿とさせるような代替表現によって描写する立場手法を「象徴的な表現」という。象徴的な表現積極的に芸術取り入れようとした立場を「象徴主義」という。

「象徴天皇」とは

象徴天皇」とは、日本国憲法において規定され天皇の地位を指す言葉である。日本国憲法第1条によれば、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権存する日本国民総意に基づく」。

戦前の「大日本帝国憲法」下では、天皇国家主権者位置づけられていた。戦後の「日本国憲法」(現行憲法においては主権者国民であり、天皇政治的権力持たない天皇国家の象徴位置づけられている。

天皇政治的権力持たず国政直接関与するともないが、内閣助言承認のもとに国家の象徴として国事携わっている。

「象徴動物」とは

「象徴動物」とは、特定の概念性質象徴する存在として一般に認知されている動物総称である。たとえばフクロウ)は知恵の象徴、キツネ)は狡猾さの象徴、ハト)は平和の象徴ライオン勇敢さの象徴とされる日本では鶴と亀長寿の象徴であり、トンボ武勇の象徴とされる

象徴動物イメージ結びつきは、その動物の姿や習性由来している場合もあれば、神話や伝承基づいている場合もある。

国鳥国獣といった「国家象徴する動物」も、象徴動物呼ばれることがある。「象徴動物」という表現用いられることはそう多くないが「ハクトウワシアメリカ象徴するである」といった言い方多く用いられる

「平和の象徴」とは

平和の象徴」とは、「平和が実現され世界」または「平和な世界実現することを祈念する思い」を象徴する存在のことであり、典型的に(がオリーブくわえている図像)のことである。

オリーブ加えている図像は、「旧約聖書創世記)」における「ノアの方舟」の物語由来する20世紀半ばパブロ・ピカソが、平和を祈るイベントポスター意匠起用したことがきっかけで、「平和の象徴」という認識広く世間一般広がったとされる

「象徴主義」とは

象徴主義」とは、「直接的な表現ではなく、象徴を用いて作品の主題や意味を伝える」ことを特徴とする芸術運動呼び名である。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、文学および絵画世界でムーブメント起こったそれまで流行していた自然主義リアリズム運動の反動として盛り上がった潮流とされる

象徴主義文学代表する作家としては、ボードレールマラルメヴェルレーヌメーテルリンクアルチュール・ランボーなどが挙げられる象徴主義絵画代表する画家としては、モロールドンムンククリムト、シンベリ、ヴルーベリらの名が挙げられる

しょう‐ちょう〔シヤウ‐〕【象徴】

読み方:しょうちょう

[名](スル)抽象的な思想観念事物などを、具体的な事物によって理解しやすい形で表すこと。また、その表現用いられたもの。シンボル。「平和の—」「現代を—する出来事


象徴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/02 22:27 UTC 版)

様々な運動のシンボルアウェアネス・リボンホワイトリボン

象徴(しょうちょう)は、抽象的概念を、より具体的な物事や形によって表現すること、また、その表現に用いられたもの[1]。一般に、英語 symbolフランス語 symbole)の訳語であるが[2]、翻訳語に共通する混乱がみられ、使用者によって、表象とも解釈されることもある[3]

言葉としての定義

日本語における「象徴」という言葉は、使用法から細分した場合に、次の様なものがある。

  1. あるものを、その物とは別のものを代わりに示すことによって、間接的に表現し、知らしめるという方法。
  2. 抽象的な概念、形のない事物に、より具体的な事物や形によって、表現すること。
  3. ある事物の側面、一点を、他の事物や形によって、強調表現すること。

学術的な定義

図像や形象においての象徴については、哲学者言語学者などによって、相当の蓄積がある。これらは、過去成立した数多の社会体制において育まれた文化的概念、すなわち言語芸術宗教哲学風俗時事など、歴史的な経緯により成立して広まり、当時の人々の間に生きて使われていた社会通念・概念のうち、目に見える形で表現され、後世に遺されたものである。扱う研究対象によって、ありとあらゆるものが見られるが、一例として、エルンスト・カッシーラーの「象徴形式の哲学」やスザンヌ・ランガーの「シンボルの哲学」、ホワイトヘッドの論考「象徴作用」、パースの記号理論、宗教人類学者のミルチャ・エリアーデ「イメージとシンボル」などがある。論者によって象徴の定義も異なるが、「記号のうち、特に表示される対象と直接的な対応関係や類似性をもたないもの」として定義されることもある[1]。これは定義の 2. に相当する代名詞的な用法である。

無論、平面上の記号や絵図のみならず、(実在如何に関わらず)存在や立体、無形物である音や光や香り、言葉の上だけの概念なども広義の象徴に含まれ、研究対象となる。ただしそのほとんどが失われた概念という無形物であるために調査類推も困難で、体系化されているのは象徴と意味との対応性がよく保存されている宗教象徴や偶像美術(イコン)や言語学の分野のみであるが、通常これらは象徴とは呼ばれず各分野の名称で独立的に扱われる。その他の手がかりは総じて少なく、前述の体系化された分野からの知見のみで類推という形を取る場合も多い。象徴研究は、文化の総体から理解がなされる必要性から、通常は文明を単位とした考古学に含まれ、しかも研究者ごとに必要に応じて行われており(文化的背景から象徴の意味を知るのではなく、失われた文化を知る手がかりとして象徴の意味類推が求められる)、象徴のみを専門に体系化した学問はまだ存在しない。概念的に近い物として美術分野における図像解釈学がある。

精神科学での定義

人の意識そのものの構成を探る精神科学の分野では、象徴とは、意識の中にある複雑な概念が抽象的なイメージとして形を帯びたものと捉える。漠然と「AがBを象徴する」といった場合に、(そこまでの心理解析は行われていないが)究極的にはその関連性や理由を科学的な論拠をもって説明可能とする学問である。

ジャック・ラカン精神分析理論(: schéma RSI)においての象徴とは、自己の内にある概念やイメージの置き換えであり、一般には言語活動によって説明され、言語によって表現されるべき「自己の内に沸きあがるもの」と定義される。言葉それ自体も肉声に置き換えられた象徴であるとする。これは有意識における象徴の発現過程を論ずるものである。

カール・グスタフ・ユング精神医学の研究(臨床心理学)において発見された無意識に形造られる象徴は、コンプレックス原型を元とし自己の無意識に沈むイメージと、そこから意識の表層に形となって浮かび上がるものを指す。無意識が与える象徴は、心理学において意識の根底や概形を知る上での重要な手がかりとなる。

芸術における用法

芸術においては、19世紀フランスに「象徴主義」という運動が起こった(象徴詩)。ボードレールをはじめ、ヴェルレーヌランボーマラルメヴァレリーといった詩人がいる。これらの運動を受けて、直接的に表しにくい抽象的な観念を想像力を媒介にして暗示的に表現する手法を含意するようになった。

17世紀頃までの静物画には、一見無意味な構図や対象に意味を持たせて描く、つまり象徴が多く取り入れられ、宗教画や寓意画としての性質が強かった。これは絵画そのものだけでなく、象徴を理解することで婉曲表現の技法や描かれた精神性にも美しさを見出すことができるため、図像学図像解釈学によって象徴の研究がなされている。

人文的な意味

人間の定義は象徴的な活動を行う動物と定義される。プラトンは「人間とは二足、無羽の動物なり」と定義し、ディオゲネスから嘲笑されたが、この一連のやりとりも人間らしい象徴的な行為と言えるだろう。

徴(しるし)

人間以外の存在が示した象徴はしるし(徴、: signs)と呼ばれて区別される。宗教的には、信仰対象が人に与えたものと理解され、現実に示される予兆や奇跡のほか、啓示懺悔(の発端としてのひらめき)など、人の精神世界に直接示されるものが含まれる。

  • キリストにおいて、「預言者ヨナのしるしのほかにはなんのしるしも与えられない」と述べられている。
  • 聖書には奇跡として多くのしるしが示されている。またキリスト教でのしるしは神の実在の証と考えられ有意に探し求められるものだった。

古代の祈祷占いで得る神託予言は、しかるべき手順を踏んで得た「徴」から意味を読み取ろうとするものである。供物や音楽・踊りを捧げて儀式を行ったり、命がけで危険な行為をする等は、行為や状況を通して自然そのもの、或いは超自然的な存在から何か特別な「徴」を得る為の手段であり、「徴」を人間が理解可能な「象徴」へと置き変える手法であると表現できる。

脚注

  1. ^ a b c 松村明編「象徴」『大辞林』(第2版)三省堂、1995年。ISBN 4-385-13900-8http://dictionary.goo.ne.jp/srch/all/象徴/m0u/2010年2月9日閲覧 
  2. ^ 中江兆民の訳書『維氏美学』(1883年刊)で用いられた。
  3. ^ 松村明編「表象」『大辞林』(第2版)三省堂、1995年。ISBN 4-385-13900-8http://dictionary.goo.ne.jp/srch/all/表象/m0u/2010年2月9日閲覧 

関連項目

  • シンボル
  • 象徴主義 - 1870年頃のフランスとベルギーに起きた文学運動および芸術運動。象徴派。
  • 図像解釈学(イコノロジー) - 美術表現の表す歴史意識、精神、文化などを研究する学問。
  • 図像学(イコノグラフィー) - 美術表現の表す意味やその由来などについての研究。
  • ダ・ヴィンチ・コード

象徴(シンボル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 14:34 UTC 版)

歓喜天」の記事における「象徴(シンボル)」の解説

歓喜天祀る寺院には、巾着袋砂金袋)と大根図案化したもの多く見ることが出来る。また、三叉戟象徴される場合もある。

※この「象徴(シンボル)」の解説は、「歓喜天」の解説の一部です。
「象徴(シンボル)」を含む「歓喜天」の記事については、「歓喜天」の概要を参照ください。

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象徴

出典:『Wiktionary』 (2021/08/11 07:05 UTC 版)

名詞

しょうちょう

  1. 分かりにくくて捉え難い物事分かりやすく想い起こさ代わり表すはっきりした備えた)目印

語源

関連語

翻訳

動詞

象徴する (しょうちょうする)

  1. 捉え難い事柄分かりくいものなどを、それを想い起こさせるハッキリした備え目印によって)分かりやすく代わり表す

活用

翻訳


「象徴」の例文・使い方・用例・文例

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