江戸文学とは? わかりやすく解説

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えど‐ぶんがく【江戸文学】

読み方:えどぶんがく

江戸後期明和安永ごろから幕末まで江戸で行われた文学天明から文政のころ最盛期迎え読本(よみほん)・洒落本(しゃれぼん)・滑稽本人情本黄表紙合巻(ごうかん)・川柳狂歌などがあり、通(つう)を尊び軽快洒脱(しゃだつ)の傾向が強い。広義には江戸時代行われた文学をさし、近世文学とよぶが、元禄のころを中心に栄えた前期の上方(かみがた)文学と、後期の江戸文学とに大別するのが普通である。→上方文学


日本の近世文学史

(江戸文学 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/02 05:13 UTC 版)

日本の近世文学史(にほんのきんせいぶんがくし)では、江戸時代日本文学歴史を述べる。

概略

近世の定義には諸説ある[1]中村幸彦は「政治史上の徳川幕府の期間」を近世と定義し、前期1期(1603 - 1680)・前期2期(1681 - 1763)・後期1期(1764 - 1803)・後期2期(1804 - 1867)に大別した[1]。本項もこの分類に従って特徴を説明する。

前期

京都大阪といった上方が中心である[1]

1期

細川幽斎の晩年、烏丸光広松永貞徳などの門人が集い、古典の学習や和歌が盛んになり、古活字版や製版印刷の普及に伴い、近世以前の古典やその注釈が流布する[1]連歌の退潮に対して、俳諧が大いに流行した[1]。口頭による教養娯楽の提供を目的とする舌耕文芸も広がりを見せた[1]。近世初期の小説と位置づけられる仮名草子も誕生した[1]。中世に発生した浄瑠璃三味線と繰人形が結びつくことで、近世演劇として独自路線へ進んだ[1][注 1]

2期

元禄時代に入ると、俳諧では貞門派に対して、談林派が興る[1]松尾芭蕉は俳諧を雅文学の領域に引き上げることを指向した[1]。芭蕉の死後、俳諧は様々な流派が興り、文学から遊びへと性質を変えた[1]1682年(天和2年)、井原西鶴が『好色一代男』を刊行し、新たに浮世草子というジャンルが生まれた[1]北条団水西沢一風都の錦江島其磧といった人物が作品を残した[1]。歌舞伎では続き狂言が出現し、女形中心から様々な役柄が増えた[1]。浄瑠璃では人形が3人遣いになって舞台装置も精巧となり、興行の最盛期を迎える[1]

漢詩文についても、押韻や格調に難点はあるが、鑑賞に堪えうる作品が生まれ始めた[1]。また、油煙斎貞柳にはじまる狂歌も広がりを見せた[2]落語講談実録本といった舌耕文芸も成立した[1]

後期

出版界の中心が上方から江戸に移り、文運東漸の状況が生じる[1]

1期

八文字屋本のマンネリに対抗して談義本が生まれたほか、洒落本草双紙(赤本・黒本・青本)黄表紙といった新しい小説が生まれる[1]。さらに、中国白話小説の影響を受けて読本が誕生し、都賀庭鐘上田秋成建部綾足などが作品を残した[1]。歌舞伎では寛政歌舞伎と呼ばれる時代を迎え、廻り舞台の発明や数多くの名優が輩出するなどの活況を呈した[1]。対して、浄瑠璃は歌舞伎の後塵を拝するようになる[1]

2期

山東京伝曲亭馬琴十返舎一九式亭三馬為永春水といった人物が活躍し、読本滑稽本合巻人情本といったジャンルが人気を博す[1]。漢詩では大窪詩仏・梁川星巌・菊池五山・大沼沈山・広瀬旭荘らが活動した[1]。歌舞伎では鶴屋南北河竹黙阿弥が好評で、落語や講談は明治期にかけての最盛期へと入った[1]

文学の周辺

形骸化した歌学を批判する形で、儒教の一派の古学の影響を受けた国学が現れ、賀茂真淵本居宣長らが活躍した。

また、滑稽話の元祖として安楽庵策伝の『醒睡笑』が著され、さらに江戸と上方で現在の落語の原形となる話芸が流行する。その他、三味線音楽など江戸期に特徴的な音曲が流行したり、葛飾北斎らにより浮世絵が描かれて町人に愛玩されたり、歌舞伎浄瑠璃が町人の娯楽となったりと、様々な芸術が庶民に愛された。特に、浮世絵は、遠くフランスの印象派にも大きな影響を与えたことが知られている。

近世文学の主な作品一覧

北越雪譜』二編 巻一(鈴木牧之著、天保12年(1841年)刊)

近世文学研究者

近世文学を専門とする主な研究者とその専門分野を挙げる。近世文学研究者が集う学会として、日本近世文学会がある[3]

脚注

注釈

  1. ^ 竹本義太夫以前の浄瑠璃は古浄瑠璃として区別される[1]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 日本古典文学大辞典編集委員会『日本古典文学大辞典第2巻』岩波書店、1984年1月、244-255頁。ISBN 4000800620 
  2. ^ 平成29年度水曜講座”. 國學院大學 取材日誌. 2021年11月23日閲覧。
  3. ^ 日本近世文学会(学会名鑑)”. gakkai.jst.go.jp. 2021年11月23日閲覧。

参考文献

  • 日本古典文学大辞典編集委員会編『日本古典文学大辞典』第2巻、岩波書店、1984年1月。ISBN 4000800620

関連文献

単著
  • 内藤虎次郎『近世文学史論』政教社、1897年。
  • 佐々政一『近世国文学史』聚精堂、1911年7月(改訂版、太陽堂、1923年5月)
  • 佐佐木信綱『近世和歌史』博文館、1923年1月。
  • 藤村作『近世国文学序説』雄山閣、1927年3月。
  • 伊藤愼吾『近世国語学史』立川文明堂、1928年5月。
  • 福井久蔵『近世和歌史』成美堂書店、1930年10月。
  • 能勢朝次『近世和歌史』日本文學社、1933年3月。
  • 彌富破摩雄『近世国文学之研究』素人社書屋、1933年5月。
  • 重友毅『近世国文学考説』積文館、1933年8月。
  • 重友毅『日本近世文学史』岩波書店〈岩波全書119〉、1950年10月。
  • 重友毅『近世文学史の諸問題』明治書院、1963年12月。
  • 吉田澄夫『近世語と近世文学』東洋館出版社、1952年10月。
  • 黒羽英男『日本の近世文学』文化書房、1965年5月。
  • 諏訪春雄『図説資料近世文学史』勉誠社、1986年3月。
  • 森田喜郎『日本近世文学論』和泉書院〈和泉選書29〉1987年3月。ISBN 4870882302
  • 森修『西鶴・芭蕉・近松:近世文学の表現と語法』和泉書院〈和泉選書68〉、1992年7月。ISBN 487088545X
  • 前田金五郎『近世文学雑考』勉誠出版、2005年11月。ISBN 4585031103
  • 前田金五郎『近世文学雑記帳』勉誠出版、2007年11月。ISBN 9784585031185
  • 長谷川強『近世文学考』汲古書院、2007年6月。ISBN 9784762935626
  • 林達也『江戸時代の和歌を読む:近世和歌史への試みとして』原人舎、2007年9月。ISBN 9784925169158
  • 井上泰至『「悪口」の文学、文学者の「悪口」』新典社新典社新書3〉、2008年4月。ISBN 9784787961037
  • 神作研一『近世和歌史の研究』角川学芸出版、2013年1月。ISBN 9784046214102
  • 村尾誠一『教養としての日本古典文学史』笠間書院、2022年11月。ISBN 9784305709714
  • 鈴木健一『近世文学史論:古典知の継承と展開』岩波書店、2023年2月。ISBN 9784000615808
共著
編著
訳著

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