万葉代匠記とは? わかりやすく解説

まんようだいしょうき〔マンエフダイシヤウキ〕【万葉代匠記】

読み方:まんようだいしょうき

江戸前期万葉集注釈書20巻契沖著。徳川光圀(みつくに)の命により、天和3年(1683)着手初稿本は元禄元年(1688)ごろ、精撰本は同3年成立万葉集全巻にわたり詳密な注を加えたもので、以後万葉集研究基礎となり、最初実証的研究書とされる万葉集代匠記。


万葉代匠記

読み方:マンヨウダイショウキ(manyoudaishouki)

江戸時代万葉集注釈書契沖著。


万葉代匠記

読み方:マンヨウダイショウキ(manyoudaishouki)

分野 万葉集注釈書

年代 江戸前期

作者 契沖


万葉代匠記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/30 13:25 UTC 版)

『万葉代匠記』
著者 契沖
ジャンル 注釈書
日本
言語 日本語
形態 和装本
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万葉代匠記』(まんようだいしょうき)は、江戸時代国学者契沖が著した『万葉集』の注釈・研究書。古典学史上画期的なものとして、内外の典籍を自由自在に使用した実証的な注釈が高く評価されている[1]

沿革

和書漢籍仏典を典拠に示しながら詳細な注釈を施す方法は、仙覚の注釈態度を継承するものであるが、網羅的かつ包括的という点において契沖のが勝る[2]。こうした注釈を通して上代語に対する追究が進み、やがて成立したのが『和字正濫鈔』である[3]。これに準拠した表記法は「契沖仮名遣」と呼ばれ、後世の歴史的仮名遣の成立に大きな影響を与えた[4]

「代匠」という語は、『老子』下篇と『文選』第46巻豪士賦の中に出典があり、「本来これを為すべき者に代わって作るのであるから誤りがあるだろう」という意味である[要出典]。当時、水戸徳川家では、主君の光圀の志により、『万葉集』の諸本を集めて校訂する事業を行っていて、寛文延宝年間に下河邊長流が註釈の仕事を託されたが、ほどなくして長流がでこの依頼を果たせなくなったので、同好の士である契沖を推挙した[注 1]

契沖が『代匠記』に着手したのは天和3年(1683年)の頃であり、「初稿本」は元禄元年(1688年)頃に、「精選本」は元禄3年(1690年)に成立した。「初稿本」が完成した後、水戸家によって作られた校本[注 2]と『詞林采葉抄』が契沖に貸し与えられ、それらの新しい資料を用いて「初稿本」を改めたのが「精選本」である。「初稿本」は世の中に流布したが、「精選本」は光圀の没後における水戸家の内紛などにより[7]、日の目を見ることのないまま水戸家に秘蔵され[8]明治になって刊行された。

内容

「初稿本」は長流の説を引くことが多く、一つの歌に対する契沖の感想や批評がよくあらわれている。純粋に歌の解釈のみを提出し、文献を基礎にして確実であるという点では、「精選本」の方が優れているという[7]。契沖は「古典の理解にあたっては現在の価値観を読み込むのではなく、書かれた当時の時代を明らかにすべき」と説き、それによって古典の文章の意味を宗教的教義や道徳的教戒へと牽強付会する従来の解釈を排したほか、後世の解釈を無批判に受け入れることを戒めている[9]。「『万葉集』を証拠立てて研究するためには、『万葉集』よりも古い書物を使用しなければならない」という命題は、契沖の文献学の根本原理であるだけでなく、現代の文献学的研究の目指すべきところである[10]

評価

『万葉集』研究としての『代匠記』は、鎌倉時代仙覚や元禄期の北村季吟に続いて、画期的な事業と評価されている[11]。仏典漢籍の莫大な知識を補助に、著者の主観・思想を交えないという註釈と方法が、もっともよく出ている契沖の代表作で、以後の『万葉集』研究に大きな影響を与えた[8]

注解本

脚注

注釈

  1. ^ これにより『代匠記』における「為すべき者」については、「長流」とする意見[5]が多いが、「光圀」とする意見[6]もある。
  2. ^ 「四點万葉集」と「中院本」のこと。

出典

参考文献

図書
論文
  • 井野口孝「「万葉代匠記」所引の漢籍をめぐって」『萬葉』第113号、萬葉学会、1983年3月、31-42頁。 
  • 井野口孝「「万葉代匠記」と「性霊集抄」:「代匠」との関連において」『萬葉』第126号、萬葉学会、1987年7月、28-42頁。 
  • 吉永登「万葉代匠記初稿本に関する一二の問題」『萬葉』第34号、萬葉学会、1960年4月、40-46頁。 
  • 小山内めぐみ「「万葉代匠記」の成立と契沖の国学者意識:水戸藩との交渉をめぐって」『國學院雜誌』第83巻第6号、1982年6月、18-30頁。 
  • 西澤一光「契沖『万葉代匠記』の解釈学をめぐって」『上代文学』第129号、上代文学会、2022年11月、1-20頁。 
  • 池田利夫「万葉代匠記の起筆年次:契沖と光圀・長流との交流を中心に」『文学』第47巻第7号、岩波書店、1979年7月、79-92頁。 
  • 長谷川千秋「契沖における仮名遣論の展開:『萬葉代匠記』から『和字正濫鈔』へ」『山梨大学教育人間科学部紀要』第13号、2012年3月、1-11頁。 
  • 長谷川千秋「契沖」『日本語学』第35巻第4号、明治書院、2016年4月、32-35頁。 
  • 田中康二「本文批判成立史」『神戸大学文学部紀要』第41号、2014年3月、1-41頁。 

関連文献

  • 築島裕ほか著『契沖研究』岩波書店、1984年1月。
  • 丸山隆司『困惑する書記:『万葉代匠記』の発明』おうふう、2012年12月。ISBN 978-4-273-03701-7

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