耳嚢とは? わかりやすく解説

みみぶくろ【耳嚢/耳袋】

読み方:みみぶくろ

江戸中期随筆10巻根岸鎮衛(ねぎしやすもり)著。佐渡奉行勘定奉行町奉行務めた著者見聞録で、未刊ながら写本で伝わる。


耳嚢

読み方:ミミブクロ(mimibukuro)

江戸時代随筆根岸鎮衛著。


耳嚢

読み方:ミミブクロ(mimibukuro)

分野 随筆

年代 江戸後期

作者 根岸鎮衛


耳嚢

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/26 00:18 UTC 版)

耳嚢(みみぶくろ)は、江戸時代中期から後期にかけての旗本で、勘定奉行南町奉行も務めた根岸鎮衛が、佐渡奉行時代(1784-87)に筆を起こし、没する前年の文化11年(1814)まで、約30年にわたり書きためた全10巻の雑話集。

公務の暇に書きとめた来訪者や古老の興味深い話を編集したもので、さまざまな怪談奇譚や武士や庶民の逸事などが多数収録されている[1]耳袋とも表記される。

概要

奇談・雑話の聞書の集録で、話者には姓名または姓を記した者が約120名、ある人の話としたものや、又聞きの話も収められている。その他、著名な高級旗本、同僚、下僚、医師、剣術者の名が見られる。収録された話の内容は、そのほとんどが奇異談・巷説だが、虚偽の噂話や先行する小説の内容を事実談として収めるものもある。文章は文学的表現というには粗く、当時の社会相を知る資料としては虚構が多いが、当時の幅広い階層の人々が享受した巷説を知ることができる作品とされる [2]

『耳嚢』の諸本は、二巻本・三巻本・五巻本・六巻本・八巻本などがあるが、五巻本を二分して10冊としたり、貸本屋側で冊数を細分化したりした本が見られる。なかでも、カリフォルニア大学バークレー校所蔵の旧三井文庫本は、現在唯一知られる十巻完備本として貴重とされる[2] [3]

著者はこの書の流布することを嫌い、読みたいと望む人のために同家に近しい者などが無断で、急ぎ筆写したために何種類もの刊本が出回りその間に異同があるとも推測されている[4]。この門外不出の方針は、本書を無断で出版した者があったためにさらに強まる。ただしその出版の時期や犯人の正体[注釈 1]は明らかではない[7]

明治にも、林若樹『集古随筆 : 四大奇書』に伊勢貞丈、東蘭洲、山東京伝と並んで収載される[8]

内容

書かれた主な人物、事物

刊行本

発行年順
現代語抄訳

脚注

注釈

  1. ^ 無断出版については千坂廉斎がその随筆に式亭三馬が犯人ではないかとの臆測を記したことがあるが、森銑三によって「根もない浮説」と否定されている[5]。勝海舟は談話の中で「根岸肥前守の小姓を勤めていた13歳の滝沢馬琴が『耳嚢』を読みたいという肥前守の縁者(児島春庵)のところに原稿を持っていく使いを任されたところ、道中に読んで全文を記憶し、約10年後にその内容を公にした」という情報を伝えている[6]
  2. ^ 柳田による解題は『柳田國男集 幽冥談』(東雅夫編、ちくま文庫、2007年)に新版収録。なお単行初版は『老読書歴』に収録(1950年に刊)。
  3. ^ 本文は『日本庶民生活資料集成』巻16(三一書房刊)所収の10巻本を底本に作成[9]

出典

  1. ^ 旗本御家人 - 25. 耳嚢(みみぶくろ)”. www.archives.go.jp. 国立公文書館. 2020年2月21日閲覧。
  2. ^ a b 根岸鎮衛・長谷川強校注 1991, pp. 421-434(上).
  3. ^ a b 国文学研究資料館調査研究報告』第9号、長谷川強「(翻刻)旧三井文庫『耳嚢』(巻一)」、P.181、1988年。第10号、長谷川強「(翻刻)旧三井文庫『耳嚢』(巻之二)」、P.55、1989年。
  4. ^ 根岸鎮衛・長谷川強校注 2000, p. 499.
  5. ^ 根岸鎮衛・長谷川強校注 2000, p. 507.
  6. ^ 関如来(編)『当世名家蓄音機』文禄堂、1900年、31頁。 
  7. ^ 根岸鎮衛・長谷川強校注 2000, p. 505.
  8. ^ 『集古随筆 : 四大奇書』、魁真楼、1899年(明治32年)。国立国会図書館デジタルコレクション、doi:10.11501/898501、コマ番号107–。
  9. ^ 耳袋 / 根岸鎮衛著 ; 鈴木棠三編注. -- 1 ; 2. -- 東京 : 平凡社 , 1972.3-1972.4. -- 2冊 : 挿図 ; 18cm. -- (東洋文庫 ; 207,208)”. 国立情報学研究所. 2020年10月27日閲覧。
  10. ^ 根岸鎮衛『耳袋』鈴木棠三編、平凡社ライブラリー、2000年、 NCID BA46647171

関連文献

発行年順

  • 佐藤恭道、戸出一郎、雨宮義弘「「耳嚢」にみられる歯痛の治療法について」『日本歯科医史学会会誌』第27巻第3号、東京学芸大学国語科古典文学研究室、2008年4月、139-142頁、 ISSN 028729192020年8月8日閲覧 
  • 佐々木雅章「近世随筆『耳嚢』における狸 : 類話を通じて」『学芸古典文学』第6巻、東京学芸大学国語科古典文学研究室、2013年3月、151-160頁、 ISSN 188270122020年8月8日閲覧 
  • 佐々木雅章「『耳嚢』における猫 : 怪異譚の視点から」『学芸古典文学』第7巻、東京学芸大学国語科古典文学研究室、2014年3月、139-150頁、 ISSN 188270122020年8月8日閲覧 
  • 東雅夫ほか(編纂)『鉱物』国書刊行会〈書物の王国 6〉、1997年、ISBN 4336040060、NCID BA33421471。収載した作家はアンドレ・ブレトン、澁澤龍彦、宮澤賢治、稲垣足穂、杜光庭、葛洪、戴孚、蒲松齢、柴田宵曲、田中貢太郎、寺山修司、H・G・ウェルズ、ジョルジュ・サンドほか。
  • 人文社編集部(編)、根岸鎮衛『耳嚢で訪ねるもち歩き裏江戸東京散歩』、人文社 〈古地図ライブラリー別冊〉、2006年、ISBN 4795912971 、NCID BA76286957。
  • Z会(編)『日本の名作「こわい話」傑作集』、集英社〈集英社みらい文庫 あ-4-1〉、2012年、ISBN 9784083211119、NCID BB11884848。収載した作家は芥川龍之介、ラフカディオ・ハーン、上田秋成、小川未明、中島敦、岡本綺堂根岸鎮衛、夏目漱石、内田百間、平尾リョウ。
  • 京極夏彦、根岸鎮衛、宮部みゆき『旧談』、KADOKAWA 〈角川文庫19551, き26-64〉、2016年、ISBN 9784041035511、NCID BB20921650。
  • 東雅夫、松川碧泉、伊東潮花、門賀美央子『あやかしの深川 : 受け継がれる怪異な土地の物語』、猿江商會、2016年、ISBN 9784908260056、NCID BB21991414。文学散歩のガイド。谷崎潤一郎、日影丈吉、宮部みゆき、泉鏡花、永井荷風、種村季弘、今尾哲也、三遊亭円朝、根岸鎮衛などの作品に取材した。

関連項目

  • 新耳袋 - 現代怪談集
  • 風野真知雄 - 耳嚢を題材とした時代小説『耳袋秘帖』シリーズを執筆。

外部リンク

  • 現代語訳のサイト  

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