廻り舞台とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 廻り舞台の意味・解説 

まわり‐ぶたい〔まはり‐〕【回り舞台】


廻り舞台

隠語大辞典は、明治以降の隠語解説文献や辞典、関係記事などをオリジナルのまま収録しているため、不適切な項目が含れていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

廻り舞台

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 09:38 UTC 版)

廻り舞台がある舞台(村国座

廻り舞台(回り舞台、まわりぶたい、英語: Revolving stage)は、劇場における舞台機構の一つ。1758年(宝暦8年)に日本の歌舞伎で初めて採用され、1896年(明治29年)には西洋演劇でも初めて採用された。

仕組み

舞台装置の転換

舞台の床面を円形に切った盆(ぼん)を作り、中心部の下部に設置した心棒によって回転させる機構のことである[1]。現在は機械制御で回転させるのが主流だが、初期の廻り舞台は奈落で手動で回転させており、数人の道具方がつらい思いをしながら棍棒で心棒を回していた[1]。舞台装置の転換を円滑化する目的で創案されたが、2か所で起こっている出来事を観客に対して同時に示す目的(「いってこい」)でも用いられる[1]

歴史

正徳享保年間(1711年 - 1736年)に活躍した江戸狂言役者・中村伝七[2]によって、廻り舞台の原型である「ぶんまはし」が考案された[3]。中村伝七は中村座での『嫁入角田川』の公演で引道具を用いたことが浜松歌国の『南水漫遊』に見える。「ぶんまはし」とは引道具を舞台上で回転させる程度のものだったとみられる[4]

現在のような廻り舞台は、宝暦8年(1758年)、独楽まわしに着想を得た大坂の狂言作者並木正三によって『三十石艠始』で初めて披露されたと言われる。しかし河竹繁俊によれば、このときにはまだ舞台上の二重舞台を回転させる上廻し式だったとされる[5]

『戯場年表』によれば、寛政5年(1793年)中村座の例が舞台の床に切り込みを入れる廻り舞台の江戸での始まりであり、これは大阪から持ち込まれた技術であるとしている[5]

文政10年(1827年)三代目尾上菊五郎による『独道中五十三駅』の市村座における初演で、長谷川勘兵衛の考案による蛇の目廻し(二重廻し)が初めて用いられた[5]

近代になると電動式の廻り舞台が登場し[1]、道具方が汗水たらして棍棒を押す作業は過去のものとなった。

19世紀後半には西洋でジャポニスムが起こり、1893年(明治26年)には川上音二郎の劇団がパリで公演を行っている。1896(明治29年)には、ドイツのカール・ラウテンシュレーガー(Karl Lautenschlager)によって、西洋で初めてミュンヘン王立劇場で廻り舞台が採用された[6]。お披露目は『ドン・ジョヴァンニ』だった。1906年(明治39年)には、マックス・ラインハルト春のめざめの初演で廻り舞台を採用した。以後は西洋の演劇にも欠かせない装置となった。

機構による分類

廻り舞台下部の奈落(村国座)皿回し式。

上廻し式

舞台床面より一段高い舞台を回転させる。操作員は回転舞台に取り付いて回すか、鳶口や紐・綱で舞台上又は舞台袖から回す。舞台床面に回転軸や軌条が設けられる場合もある。

  • 二重舞台の回転 - 二重舞台に車がついている。
  • 木枠回転 - 二重舞台を回転用の木枠に載せて回転させる。

切込み式

上廻し式から発展し、舞台床面に円形の切込みを入れ、円形の床面(鍋蓋)が回転する。舞台床下に回転機構が設けられるが、操作員は床上に配置される場合もある。

独楽回し式

鍋蓋の中心から心棒を下に伸ばし、床下地面に支点を設ける。心棒に横木が付けられており(取外し可能な場合もある)、横木を複数人で押して回転させる方式が多い。心棒に綱を巻き付け、綱を引いて回転させる方式もある。

例:白雲座、葛畑の舞台(芝居堂)

皿回し式

鍋蓋の下の地面から支えを上に延ばし、鍋蓋裏面中央に支点を設ける。心棒に横木を取り付けて動力とすることはできないため、腕木を付ける場合は鍋蓋裏に設置される。

  • 床下の操作員が腕木を押して回転させる方式。
  • 足廻し式 - 床上から鍋蓋を足で蹴って回転させる。
    • 例:田熊の舞台
  • 鍋蓋上廻し式 - 舞台横のハンドル操作で回転させる。
    • 例:高野の舞台

柱立回し式

鍋蓋の中央にが設けられるため、心棒を通さず、鍋蓋を複数の柱で支え、回転軸は柱の台枠の下中央に設けられる。迫の昇降機構ごと回転するため、回転と昇降を同時に行うことができる。

例:上三原田の歌舞伎舞台

[7][8]

著名な廻り舞台

電動式
手動式

脚注

  1. ^ a b c d 「廻り舞台」『日本大百科全書』小学館(コトバンク)
  2. ^ 五代目中村勘三郎の一族で、江戸の専業歌舞伎作者の祖とされる。
  3. ^ 国立国会図書館デジタルコレクション”. dl.ndl.go.jp. 2024年4月27日閲覧。
  4. ^ 河竹 1943, pp. 508–509.
  5. ^ a b c 河竹 1943, pp. 179–184.
  6. ^ 廻り舞台 歌舞伎用語案内
  7. ^ 松崎 1967, pp. 21–24.
  8. ^ 名生 1978, pp. 49–50.

参考文献

  • 河竹, 繁俊『歌舞伎史の研究 : 近世歌舞伎の性格を中心として』東京堂、1943年10月15日。doi:10.11501/1125649 
  • 名生, 昭雄「農村歌舞伎舞台特有の回り舞台」『日本演劇学会紀要』第17巻、日本演劇学会、1978年3月31日、49-55頁、ISSN 2189-7816 
  • 松崎, 茂『日本農村舞台の研究』松崎茂工学博士論文刊行会、1967年9月1日。 

廻り舞台

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 07:16 UTC 版)

歌舞伎」の記事における「廻り舞台」の解説

廻り舞台(まわりぶたい)は舞台中央にあって水平に回転する舞台である。手前側と向こう側2つ場面装置仕込んでおき、回転させることによって素早く場面転換ができる。通常役者舞台乗ったままの状態で、装置ごと回す。上演中であっても裏側回った方の装置をこわし、さらに次の場面装置仕込むことができる。廻り舞台の回転歌舞伎見せ場のひとつで、照明消さず幕を開けたまま廻り舞台を回転させ、場面転換観客印象づけることができる。この手法を明転(あかてん)という。また、たとえば悪だくみたくらむ場面とその被害者宅の2つを廻り舞台の上乗せ一方から他方への転換見せ次に逆回転させて元の場面に戻るというようなことができる。これを俗に行って来い」といい、場面が戻るとともに時間も戻るかのように感じられるため、2つ場面同時性強く表現できる。 『佐倉義民伝の子別れ、『入谷』などのように少しだけ廻して建物の横などを見せることもある。半廻しという。歌舞伎以外の芝居では装置通常表側だけしか作らないが、歌舞伎ではこのようにみのある装置を組むことがあるときには裏側まで作る

※この「廻り舞台」の解説は、「歌舞伎」の解説の一部です。
「廻り舞台」を含む「歌舞伎」の記事については、「歌舞伎」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「廻り舞台」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「廻り舞台」の例文・使い方・用例・文例

  • 廻り舞台
Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「廻り舞台」の関連用語

廻り舞台のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



廻り舞台のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
皓星社皓星社
Copyright (C) 2025 株式会社皓星社 All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの廻り舞台 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの歌舞伎 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS