ファクシミリ ファクシミリの概要

ファクシミリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/08 04:03 UTC 版)

家庭用FAXを使用する若者(1994年)
ラジオファクシミリ(無線で伝送するファクシミリ)で受信した気圧配置図。無線FAXによる定時配信を自動受信することで入手する。この図は2011年12月にイギリス軍ノースウッド司令部内のJOMOC(Joint Operations Meteorology and Oceanography Centre 気象学と海洋学に関する統合運用センター)から配信されたもの。

概要

一般的なFAXは、静止画像を電子データに変換するイメージスキャナ、電子データを送受信するための電気信号に変換するモデム、電子データを印字するためのプリンタが組み合わさった装置である。通信回線としては、有線無線の両方が用いられるが、一般的には公衆交換電話網が利用される。

2000年代以降は電子メールチャットクラウドストレージの普及により世界的に利用者が減少しているが、日本ではこれらを使いこなせない高齢者や、デジタル化が遅れている職場、情報を印刷物の形で記録したい層からの需要があるため機器の製造が続けられている[2]。中小企業の場合、8割がFAXに頼る傾向がある[3]

ギャラリー

歴史

ベイン: ファクシミリの原型を発明

ベインの装置(1850年のもの)

1843年、イギリス人のアレクサンダー・ベインがファクシミリの原型を発明し、特許を取得した[4][5]

送信側では、振り子の振幅方向に平行な下部側面に絶縁板をセットする。その絶縁板上に金属の文字を置き、振り子の先に絶縁板に接触する金属針を取り付けて、左右に振り子を動かす。接触針は絶縁板を左右に移動して、絶縁部分に接触している時は“非導通”、金属部分に接触すると“導通”の信号を送る。1回の振幅毎に絶縁板を上方(又は下方)に少しずつ移動させて、絶縁板全体を走査させる。

受信側でも同様な振り子と接触針を設けて、化学反応によって変色する記録紙に接触針を走査させる。“導通”の信号のときに電流を流して、記録紙を変色させて送信側の絶縁板上の金属文字を再生させる。

送信側の読取走査と受信側の記録走査は、それぞれ別の振り子を利用しているので同期が難しく、記録位置にずれが発生して画像が乱れ実用化されなかった[6][7][8]

パンテレグラフ

1933年に作られたパンテレグラフのレプリカ、レオナルドダビンチ博物館の展示

ベインの装置では同期が難しいという欠点を改良したのがイタリア人のジョヴァンニ・カゼッリである。1862年、カセルは送信側から振り子の同期信号を送り、受信側の振り子を電磁マグネットで制御して同期を取るパンテレグラフを発明した。フランス郵便・電信公社で採用され、手書きの文字や図面や絵等の電送に使用された。用紙は111mm×27mmで、約25文字程度が電送でき、主に銀行のサイン照合に利用された[5][8][9][10]

ベイクウエル: 現在のファクシミリの基本形を発明

ベイクウエルの装置(1848年)

1848年、イギリス人ベイクウエル(Frederick Collier Bakewell)は、ベインの発明を大きく改良し、現在のファクシミリの基本形を発明した。

1851年のロンドン万国博覧会で展示された。送信側は、金属円筒に特殊な絶縁インクで書いた金属箔を巻き付ける。円筒の円周方向に固定して接触させた金属針(接触針)を設け、円筒を回転させて“導通”、“非導通”の信号を得る。円筒を回転しながら、接触針を円筒の片方の端から他端にむかって軸方向に少しずつ移動させることによって、円周面(金属箔)全体を走査して受信側に送る。受信側も送信側と同じ大きさの金属円筒と接触針を設け、電流が流れたときに変色する化学紙を巻き付け、送信側に同期して回転させる。送信側の導通・非導通の信号は記録紙に濃淡となって表示される。受信側の円筒の回転速度やスタート・ストップを送信側の円筒と同期することが難しく実用化されなかった[7][8][9][11]

ハンメル: ベイクウエル方式の改良

1898年、アメリカ人ハンメル(Ernest A. Hummel)はベイクウエルの欠点を改良した装置(Telediagraph)を発明した。8インチ径の円筒を用い、送信側の円筒が1周回転する毎に同期信号を発生し、その信号毎に接触針を軸方向に1/56インチ移動していく。受信側では送信側の同期信号を受けて同様な方法で円筒と接触針を制御して同期を取る。同時に送信原稿の信号を受けて記録する。送信原稿は薄い金属箔に非導通のワニスで記載し、受信側では2枚の白紙に挟まれたカーボン紙に記録する。原稿サイズは最大8×6インチ(203mm×152mm)で送信時間は20 - 30分、いくつかの米国新聞社で採用された[8][12]

コルンとベラン: 電子式ファクシミリの発明

その後、1876年にベル(Alexander Graham Bell)により電話が発明され、更に、1883年にエジソンにより真空管が発明、更に真空管から光電管が発明された。

Arthur Kornによるtelephotographyテレフォトグラフィの実験(1902年)

1906年、ドイツ人コルン(Arthur Korn)とフランス人ベラン(Edouard Belin)がほぼ同時に、同様な方法で写真の電送に成功した。送信側の円筒に巻き付けていた金属箔を写真やイラスト、文字等が書かれた用紙に変え、接触針の代わりに光電管を使用した。回転するドラムに巻き付けた用紙の小さな一点にレンズで焦点を合わせて、光電管に光を送る。固定したレンズと光電管をドラムの軸方向に少しずつ移動させる。用紙に書かれた文字やイラスト等の“白”と“黒”およびその中間色の部分は光電管によって色の濃さに比例した電気信号に変わり、その信号を電話回線で送る。受信側では送信側と同期して円筒を回転させ、円筒に巻いた印画紙に、送られてきた信号に基づいた光を当てて感光させる。写真の中間調(ハーフトーン)電送を実現させた。

コルン式もベラン式も、両方の円筒(ドラム)の回転を一致(同期)させるために、送受信それぞれ別の2個の音叉を使い、その振動に合わせて両方のモーターの回転数を同じにするという原理を使っていた。送信側と受信側の温度や湿度の違いで、音叉の周波数が微妙に変わるためにモーターの回転数に誤差が生じ、画像が乱れるという問題があった。

コルンのシステム(photoelectric telephotography)は1910年からパリ・ロンドン・ベルリン間を電話回線経由で結ばれて運用され、ベランのシステム(Belinograph)は1930年代・1940年代にニュースメディアで使用された[5][7][8][13][14]

その後、日本電気の丹羽保次郎と小林正次が画期的なFAXの技術を開発(後述)し、1920年代後半から実運用が開始された。

ヘル: テレプリンター方式ファクシミリの発明

1929年、ドイツ人ヘル(Rudolf Hell)はテレプリンター方式をファクシミリに採用した新しい方式ヘルシュライバーを発明した。

タイプライタ型のキーボードで文字を入力する。その文字を7×7ドットのパターン(ピクセル)に分解して左側のドット列から順次ON-OFF信号として送信する。受信側ではカーボンコピー紙と記録紙を重ねたテープを円筒に接触させ、円筒の回転に合わせて移動させる。回転する円筒には螺旋状に等間隔な小さな突起が連なり、この突起列は円筒を2周している。円筒と記録用のテープが接する箇所にハンマーがセットされ、受信したON信号によりハンマーで円筒をヒットすると円筒の小さな突起部分がカーボン紙から記録紙に転写される。記録された文字は傾いているが充分可視、判読できる。有線、無線に対応できること、通信系のノイズや歪み、電文の漏洩(秘密の保持)に対して強いことで、1930年代の第2次世界大戦まではポータブルな装置(Feld-Hell)がドイツ軍に使用された。その後は1980年代までニュースの電送に使用された[8][15][16]

日本

日本では1924年(大正13年)6月、大阪毎日新聞東京日日新聞が日本で初めてドイツからコルン式の電送写真機を3台購入し試験したが不安定であった。次いで、朝日新聞が1928年(昭和3年)6月フランスからベラン式の電送機を3台購入した。実験は成功したが、画像乱れの問題があり、実用化されなかった。


丹羽と小林: コルン・ベラン方式の改良

NE式写真電送装置の送信装置。国立科学博物館の展示。
NE式写真電送装置の受信装置。国立科学博物館の展示。

1928年、日本電気の丹羽保次郎とその部下、小林正次はベラン式やコルン式の同期ずれによる画像乱れを改良したNE式写真電送機を開発した[17][18]。NE式は在野の発明家安藤博による「同期検定装置」を採用[19]。送信側の回転ドラムを三相交流モーターで回し三相の波を単相にした波を電話回線で相手側に送り、受信機側で三相交流電流に戻して記録用の交流モーターを回して同期を取る、同期信号を受信側に送ることで送信側と受信側のモーターを完全に同じ回転数で回せる方式だった、この方式の利点は送信側が一回転ごとに同期信号を送ってくるため送信側の回転数がブレても受信側も同じ回転数になるため同期が崩れない。当時三相交流は強電系の技術であり直流モーターを使用することが普通だった弱電で使用する機械は珍しかった。写真の明暗の変化は光電管で電気信号に変換して電話回線の中では音の強弱に変換されて送られる、電話の音の周波数をモーターの回転数に、音量を明暗の濃さに変換することで画像に乱れなく写真を電送出来た。この同期検定装置は後にファクシミリだけでなく遠隔地のモーターの回転数を制御する技術として広範囲に活用されている。高い精度で送れる反面、データー圧縮が行えないので通信速度面では不利であった。

1928年11月10日に京都御所で行われた昭和天皇の即位礼を、京都から東京に伝送したのが実用化第1号であった。即位礼の時、速報を大阪毎日新聞社と朝日新聞社がかって出た。

しかし、同じ音叉などを送受信双方に組み込んで同期を取るベラン式やコルン式は気温や湿度の影響を受けやすく環境変化で同期が崩れる問題が克服できず[注 1]画像が歪んでしまい、国は歪んだ画像を文書に載せ公開することを禁止する法律を制定した。朝日新聞社にドイツのFAXの技術者が、大阪毎日新聞社に当時の日本電気の技術者が就き、両社とも試験時はまったく成功せず、NE式を採用した大阪毎日新聞社が本番のとき、初めて成功した。

朝日新聞社は、大阪毎日新聞社が速報を出した数時間後に、やっと成功した[7][20][21][22]

その後、NE式は新聞社から始まり官公庁や大企業で専用回線を使用した写真電送に使用され、一般向けでは逓信省が1930年(昭和5年)に「写真電報」という名でサービスを開始した。昭和11年には甲乙丙丁の四種類があり、送れる用紙の大きさによって値段が異なった。普通の電報がカタカナ数字しか送れなかったのに対して写真電報は手書きの文字がそのまま送れたので漢字が使える利点が大きかった。[23]

  • 甲:8円、18×26センチ
  • 乙:5円、18×13センチ
  • 丙:3円、18×8センチ
  • 丁:1円、18×8センチ、用紙サイズは丙と同じだが半分しか書けない

1936年に開催されたベルリンオリンピックではベルリン - 東京間に敷設された短波通信回線により電送された写真が新聞紙面を飾り、それまでの飛行機便による速報写真は役目を終えていった[24]

1937年(昭和12年)にNE式は携帯端末となり、日中戦争の報道に使用された。NECの無線技術は高く評価され、後に日本陸軍の無線・通信設備を独占した[24]

戦後は、逓信省による東京 - 大阪間の公衆模写電信業務[25]、電電公社の電報[26]、気象庁の天気図[27]、国鉄(現JR)による連絡指示事項を全国の駅に一斉同報[27]、警察の手配写真[27]、新聞報道の写真や記事伝送[26]などに利用された。

画像データの伝送標準化と回線開放

FAXの普及が急速に進んだ理由は、CCITT(現 ITU-T)によるFAX画像データ伝送方式の標準化と、通信自由化による電話回線のデータ通信への開放である[28]

CCITT(現 ITU-T)において国際的なFAXの画像データ伝送方法(プロトコル)についての標準化が審議された。

最初に、1960年(昭和35年)に前述のコルンやベラン、小林らが開発した円筒・機械式走査の『写真電送装置の標準化』が行われた[29]

円筒の直径は66・70・88mmの3種が選定され、走査ピッチ(円筒軸方向の移動幅)は円筒直径を協約数(264または352)で除した数値(直径66mmで協約数264の場合の走査ピッチは0.25mm)とした。この規定により協約数が同一であれば、円筒径が異なる送受信機間でも画像乱れの無い通信が可能となる。その他、ドラムの回転速度(60・90・120・150rpmの4種)とその誤差、同期や位相振幅変調周波数変調等について勧告が出された。

1970年代までは、ファクシミリ通信とは高価な装置を用いる業務用通信の手段で、使用は報道会社、鉄道会社、警察組織、軍の組織、特定の企業など、組織の内部通信のために使われていた[30]

G1

平面走査タイプのスキャナや新しい記録方式の開発に対応して、1968年(昭和43年)G1規格(電話回線、データ圧縮無しでA4サイズ原稿を6分で送信)が勧告された[31]

G1規格は走査線密度は3.85本/mm、電話回線での走査線周波数は180本/分(3本/秒)、振幅変調(AM : Amplitude Modulation)と周波数変調(FM : Frequency Modulation)について規定している。スキャナで得られる画像信号はアナログで、振幅変調で送信する場合は、搬送周波数1,300 - 1,900Hzの範囲内で白を最大振幅、黒を最小振幅と定めている。周波数変調で送信する場合は、白が搬送周波数-400Hz、黒が搬送周波数+400Hzの範囲内と規定され、交換回線経由での搬送周波数は1,700Hzと規定されている。

1971年(昭和46年)の特定通信回線、1972年(昭和47年)の公衆通信回線を利用した通信の自由化(第1次通信回線開放)とともに、電話回線がデータ通信やFAX通信に広く利用され、東方電機(後の松下電送)・NEC東芝東京航空計器日本無線等が競ってFAXのG1適用機を商品化した[26][32][33]

G2

さらに、1976年(昭和51年)にA4サイズの原稿を3分で送信するG2規格が勧告された[34]

走査線密度はG1規格と同じ3.85本/mmで、走査線周波数を360本/分にし、2倍の速度の標準化をしている。

G3

画像信号のデジタル化と伝送時間を短縮するデータ圧縮技術が実用化されて、1980年(昭和55年)にA4サイズの原稿を1分で送信するG3規格が勧告された[35](数回の改訂があり最新版は2003年7月)。対象とする用紙はA4・B4・A3・レターサイズ・リーガルサイズで、その短辺幅を考慮して、走査幅は215・255・303mmの3種を規定している。走査の送り方向の走査線密度(垂直方向)は3.85本/mm(G1・G2を踏襲)、オプションとして7.7本/mm・15.4本/mmを規格化している。走査方向(水平方向)の信号はG1・G2規格ではアナログであるが、G3規格では細かく分割した画素単位(8画素/mm)で白と黒の2値にデジタル化される。オプションとしてインチ系の規格もあり、走査の送り方向(垂直方向)は100・200・300・400・600・800・1,200本/1インチ(25.4mm)の7種が、走査方向(水平方向)は100・200・300・400・600・1,200画素/1インチ(25.4mm)の6種が規格化されている。画像データのデジタル化にともない、データ圧縮誤り訂正の技術やFAXにメモリーを内蔵しての種々の機能(一斉同報、機密保護通信、ポーリング受信、時刻指定通信、マルチドロップ、メモリー間通信等)が開発された。

G3規格ではオプションとして1次元符号化と2次元符号化、拡張2次元符号化によるデータ圧縮やECM(Error Correction Mode)などを規定することにより、1分送信を実現している。

G3規格の登場により、ファクシミリの市場が一気に活性化[30]。その結果日本の電機メーカー・通信機メーカー・事務機器メーカーなども開発・製造に乗り出し、特に、欧米と違い漢字文化を持つ日本では図像電送へのさまざまなニーズがあり、ファクシミリの性能向上への要求も強く、質や機能や使い勝手の向上が図られ[30]、そのおかげでファクシミリは同一企業内だけでなく不特定多数との交信にも使われる通信手段として広く普及し[30]、日本のメーカーのファクシミリは世界市場を席巻する情況になった[30]。オフィス用途では高スピード、高解像度、大量送信、大量受信に対応できるファクシミリ機器が採用され、家庭用やスモールオフィス用には低価格で省スペースのファクシミリ機器が販売された[30]。このような経緯で一般家庭にもFAX機の普及が進んだ。

G4

1984年(昭和59年)にFAXデータを高速デジタル回線で送信するための標準化、G4規格が勧告された[36]

G4規格はG3規格を拡張して回線交換公衆データ網(CSPDN)、パケット交換公衆データ網(PSPDN)、ISDNに対応した規格である。

以上の規格の制定や回線開放と共に量産とコストダウンが進み、官庁や新聞社から大企業、さらに中小企業や個人へと使用が拡大した。

日本電信電話公社が販売していたミニファクス MF1

1981年には日本電信電話公社(電電公社)により、通信料金の安いファクシミリ通信網(Fネット)が開始された。同時に日本電気、日立製作所、富士通、松下電送、東芝が分担開発したミニファックスMF-1が電電公社から発売され、ヒット商品となった。1984年にはG3規格摘要の改良機MF-2を開発・販売を開始した[37][38],[39]

その間、現在の主力であるG3ファクスが開発され、また1985年電話機を始めとする端末設備の接続が自由化(端末の自由化)されると、中小企業や商店などで急速にファクスが普及し始めるとともに、パーソナルコンピュータなどのFAX内蔵モデムが登場する。

1988年に開催されたソウルオリンピックを目前に高解像度のカラーイメージスキャナーが登場し、同時に日本の主要都市に光ファイバーが敷設され、デジタル通信回線により高解像度の電送された写真が地方新聞社に送られカラー写真が紙面を飾った。

1990年代に入ると、コードレス留守番電話機と結合された形で、一般家庭でも使われるようになった。また、ファクシミリの機能を活用しあらかじめ決められたコード番号を入力することで様々な情報を受信することが可能なFAXサービスの提供が主な企業より行われた。

日本では1990年代半ばまでファクシミリの通信網契約数は右肩上がりで増えつづけ、たとえば1984年に1万8千件ほどだった契約数は、5年後の1989年には36万9千件ほどになり、1994年には67万8千件ほどに達していた[40]

2000年代以降の利用状況

1990年代後半あたりから情報転送の技術としてインターネットの利用が普及し、2000年代に入ってからビジネスでも徐々に文字・図像情報の転送にインターネットを利用することも増え、それと連動してファクシミリの利用は徐々に減った[2]。しかし、証拠を残す必要がある用途、パソコンを使わずに画像を即座に転送できるなどの有利な面があり[2]、業務用では官公庁向け、家庭用では高齢者向けに需要が残っている[2]

2020年に新型コロナウイルスの流行が拡大した際、日本社会のファクシミリ依存が表面化した[41]。日本の官公庁ではファクシミリに依存したシステムが使われ続けていることが業務の効率化を妨げているとして、2021年に河野太郎行政刷新担当大臣がファクシミリからの移行を提案しているが、事務方は国会対応のため議員とのやりとりに使うなどの理由から消極的である[42]。例外的に外務省は外部とのやりとりが少ないため、裁判資料の送付などを除き電子メールへ移行している[43]

日本の芸能事務所などではファクシミリで情報のやり取りをすることが多く、特に有名人が結婚・離婚・妊娠などの重大事項を発表する際などは、本人もしくは所属事務所がテレビ局や新聞社にファクシミリで送信することが多い。これは、ファクシミリは文面の下に自筆で署名もできるほか、発信者の確認がしやすく、「怪文書」扱いになりにくい形で複数の報道会社に向けて一括で送信できるからとされる[44]

日本におけるファクシミリの世帯普及率は2017年(平成29年)に35.3%。世帯主年齢が20代で1.3%、30代で11.2%、40代では35.1%[45]。2020年(令和2年)には20代は2.1%、30代は9.4%、40代は25.8%、50代は43.2%、60代は48%、70代は47.4%、80代以上は38.9%と高齢化傾向になっている[2]

ファクシミリ機器については、2000年代に入ってからはIP電話LANインターネットなどの電話交換機を介さないIP通信網を利用したInternetFAXも利用されるようになった。市販されているファクシミリ機器は、電話機と一体になっているものがほとんどである。

21世紀のアメリカ

2010年代にはスミソニアン博物館にファクシミリが産業遺産として収集されたが[46]、2020年代においてもセキュリティープライバシーなどを理由にインターネット網に接続していない、デジタルな集計を行わない機関や分野(警察、医療関係)では使用され続けている[47]。2020年に新型コロナウイルス感染症の集計が行なわれた際には、ファクシミリによる報告が少なからず行われ、現場が集計に手間取って恐慌をきたす場面もあった[48]


注釈

  1. ^ 当時は機械が設置されている環境の室温や湿度を管理する発想自体が無かった。

出典

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