2020年米大統領選
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 01:31 UTC 版)
「2020年アメリカ合衆国大統領選挙の結果を覆そうとする試み(英語版)」も参照 日本のSNS上では、2020年米大統領選に関する大量の陰謀論や偽情報が流れており、主な内容としては「トランプ大統領が戒厳令が発令」、「戒厳令の布告は緊急放送システムを使って行われるとみられる」、「戒厳令 速報!ペロシ逮捕 & 特殊部隊PC押収について!」、「停電したバチカンでローマ教皇が逮捕された」などがある。匿名のSNSユーザーがTwitterやFacebook、YouTubeを利用して発した例もある一方で、著名な政治評論家がSNS上で発言している例もある。元々、ゲーム実況などをしていた者が陰謀論に「鞍替え」してアクセス数を荒稼ぎしているケースも推測されるという。また、日本のネット上ではトランプのことを「おやびん」や「トランプおやびん」などと呼ぶミームがおきた。 藤倉善朗は統一教会系メディアのワシントン・タイムズや世界日報、法輪功系メディア大紀元(Epoch Times)といった新興宗教系メディアの存在が2020年米大統領選に関する陰謀論やフェイクニュースの発信源となっていたと指摘する。 なお、公人の中でも大紀元を引用する向きはあり、例えば元北海道議会議員の小野寺秀(自由民主党)は大紀元の報道を引用する形で「この大問題を日本のマスコミは一切スルー…今回の大統領選挙のデータだけが消去されていた事や集計ソフトに問題があった事等が判明したにも拘らず…だ。正に民主主義を嘲笑うテロ行為ではないか!【ドミニオン調査レポート「重要記録が削除された」「エラー率68%」】」といわゆる「ドミニオン社をめぐる陰謀論」についてツイートしている。 公人がトランプ寄りのフェイク情報を拡散した例としては、神戸市会議員の岡田祐二(自民党)がいる。岡田は、トランプ氏の支持者が2020年11月14日に首都ワシントンで開いた集会をめぐり、トランプ側に立ったフェイク情報をツイッターで拡散した。他にも豊島区議会議員の沓沢亮治(元N国党、元しきしま会)がトランプ支持を表明して、フェイク情報を拡散している。 2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件においても、アメリカ議会占拠はANTIFAの仕業だという陰謀論がSNS上で広まった。このときは、単に匿名のSNSユーザーが拡散させたのみならず、夕刊フジは、2021年1月8日付(7日発売)の紙面で「議事堂に侵入したデモ隊について、トランプ支持者と報じるメディアが多いが、ネット上には極左集団が紛れ込んでいるとの情報もある」と報じたり、現地のワシントンDCで2021年1月に取材をしたジャーナリストの我那覇真子が「ANTIFA犯行説」を唱えたり、朝日放送テレビの『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(2021年1月9日放送)で、お笑い芸人のほんこんが「TwitterとかYouTubeとかで見させてもろたけど、警察の方々が招き入れてる映像も残ってるんですよ……これがほんまにANTIFAっていう証言も出てるんで、それは平行に〔?〕公平性をもって放送したほうがエエと思いますけども」と発言したりしている。また、日本文化チャンネル桜の水島総も「米議会侵入は本当にトランプ派か?」と題した番組(2021年1月13日放送)の中で「議会突入をした者の背後には中国政府の工作員がいるに決まっている。」、「襲撃事件後にトランプ及びトランプ派の共和党議員に資金提供をやめると発表した大企業(ロックフェラーなど)こそがディープステートの構成員だ。」という趣旨の話をしている。 ニュースサイトのLITERAは、トランプ寄りの立場から2020年米大統領選の不正デマを発した著名人の例として、小説家の百田尚樹、ジャーナリストの有本香、動物行動学者の竹内久美子、フジテレビ報道局解説委員室上席解説委員の平井文夫、高須クリニックの高須克弥、小説家の門田隆将の名前を挙げている。他に深田萌絵、田母神俊雄、ASKA、藤原直哉、石平と大高未貴、洪熒、孫向文、井上太郎、岡村幹雄、河添恵子と馬渕睦夫、仲田洋美、宮崎正弘と渡辺惣樹、篠原常一郎と山口敬之、中杉弘、フィフィらも2020年米大統領選に関する陰謀論を主張している。 右派メディアのDHCテレビジョンの「虎ノ門ニュース」は米大統領選をめぐって2つに割れた。2020年11月24日の虎ノ門ニュースで、百田尚樹、藤井厳喜が「大統領選は不正選挙だ」という立場で出演して、特に百田は番組内で「トランプの弁護士のシドニー・パウエルやL・リン・ウッドを支持する」という趣旨の発言をしたのに対して、翌日25日には上念司、ケント・ギルバートは「トランプは大統領選で正式に敗北した」という立場で虎ノ門ニュースに出演している。これに関して京本和也は、上念らを擁護して百田を批判した。その後、百田と京本の間で論争が起こり、11月29日には百田及び百田と近しい有本香が京本を裁判で訴えると表明し、上念もDHC側の要望で、虎ノ門ニュースを含むDHCテレビジョンのすべての番組から2021年1月5日付けで降板させられた。降板後に本件に関して上念は「極右や差別主義には迎合しない」という趣旨のツイートをした。 他に保守・右派サイドからの2020年米大統領選に関する陰謀論への批判を行った者として、言論人には倉山満、渡瀬裕哉、渡部悦和、江崎道朗、政治家には野田聖子、音喜多駿、武井俊輔らがいる。倉山はトランプ関連の陰謀論を唱える右派の言論人に対して「ネトウヨ言論人どもの所業、目に余る」、「ネトウヨメディアに出演する言論人に、言論の正当性などという概念はない。サービス業の如く、客が望む言論を発するだけだ」と辛らつに批判した。渡部もトランプ支持者に批判されたが、渡部自身はトランプ支持者を「日本の主要メディアをマスゴミと馬鹿にして信じないし、そこから情報を入手しようとしない。無条件に信じているのはトランプがツイッターなどで発信する内容だ。自分が信じていることを裏付けてくれる出所不明の権威のない情報に飛びついて、ファクトチェックをしないで信じている。」とこれを批判しつつ、分析している。 木下ちがやは、アメリカ大統領選の不正選挙の陰謀論を唱えた百田及びその支持者のネット右翼がそれに異を唱えた上念らを攻撃する様について、上念らを「常識的な右翼言論人」と一旦は捉えた上で、この陰謀論に加担する右翼言論人は「もう限界値を超えてしまい、後戻りできないところに行ってしまった残念な保守(限界ネトウヨ)」とし、一連の出来事は「安倍政権終焉で始まった右翼の内ゲバ」と分析した。古谷経衡も、日本の保守派やネット右翼がトランプ支持を表明し、大統領選の不正選挙論まで唱えた背景には「第2次安倍政権のイデオロギーを継承しない菅義偉政権に不満を溜めていた彼らにとって、トランプ前大統領は心のよりどころだったからだ」と安倍政権の終焉に絡めて、これを論じている。 江川紹子はオウム真理教の行った不正選挙主張、在特会のいわゆる在日特権の主張、2017年の特定の弁護士への大量懲戒請求(余命事件)といった過去にあった日本の陰謀論の事例と今回のQアノン現象の類似を指摘した上で「陰謀論は善悪二元論だからシンプルだし、面白くて分かりやすい。だけど、現実はもっと複雑で、面倒臭いし分かりにくいものですよね。日本のメディアも分かりやすさを最優先させてきた、という点で、土壌を作る役割を果たしてしまったところはあると思います。」と分析した。 保守・右派サイドからの陰謀論が目立つが、大袈裟太郎によると、軍産複合体に反対するリベラル系の中にも「不正選挙デマ」に乗る者がいるという。その理由としては「リベラル派の中にトランプ支持が浸透する大きな理由は『トランプは戦争をしていない』というイメージ」があるからだという。沖縄の基地反対運動を行う人、山本太郎が代表のれいわ新選組の支持者の人、さらには香港の民主派の人の中にすらトランプ支持の声があると大袈裟は報告している。また、Kダブシャインなどいわゆるスピリチュアル系の人やその系統のミュージシャンにも不正選挙論は浸透しているとも大袈裟は指摘する。その理由としては「社会経験の乏しさから、社会の構造への認知が歪んでおり、そこにQ的な陰謀論が入り込むのだろう」という。なお、熱を入れてQアノンに染まってしまったKダブシャインは今や名前を捩られ「Qダブシャイン」とアメリカで呼ばれてしまっているとも大袈裟は報じている。 日本国内で新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)に関するPCR検査所に抗議する活動をしている集団が、Qアノンと相互に影響しあっているという指摘もある。
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