1968年アメリカ合衆国大統領選挙とは? わかりやすく解説

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1968年アメリカ合衆国大統領選挙

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/02 06:23 UTC 版)

1968年アメリカ合衆国大統領選挙
United States presidential election, 1968

1964年 ←
1968年11月5日
→ 1972年

投票率 60.9%[1] 1.0%
 
候補者 リチャード・ニクソン ヒューバート・ハンフリー ジョージ・ウォレス
政党 共和党 民主党 独立党
出身地域 カリフォルニア州 ミネソタ州 アラバマ州
副大統領候補者
スピロ・アグニュー

エドマンド・マスキー

カーチス・ルメイ
獲得選挙人 301 191 46
勝利地域数 32 13 + DC 5
得票数 31,710,470 31,271,839 9,901,118
得票率 43.2% 42.7% 13.5%

州別獲得選挙人分布図
  ニクソン   ハンフリー   ウォレス

選挙前大統領

リンドン・ジョンソン
民主党

選出大統領

リチャード・ニクソン
共和党

1968年アメリカ合衆国大統領選挙英語: United States presidential election, 1968)は、1968年11月5日に行われたアメリカ合衆国大統領選挙(第46回)。

候補者指名争い

共和党

候補者

党の有力者の多くは様々な問題を抱えていた。リチャード・ニクソン元副大統領は共和党員の間での待望論が強かったが、一般に1962年のカリフォルニア州知事選挙での敗北で政治生命を絶たれたと考えられていた。ネルソン・ロックフェラーニューヨーク州知事は、自らの離婚で人気を失っていた。また前回の候補者、バリー・ゴールドウォーター上院議員は前回選挙での惨敗により、再び候補者として名を挙げられることはなかった。こうした中で、ジョージ・ロムニーミシガン州知事が、ビジネス界での成功と知事としての高い評価を背景に最有力候補者となった。しかし、ベトナム戦争を巡る彼の発言が適切さを欠いたことから支持を失い、撤退を余儀なくされた。イリノイ州選出のチャールズ・パーシー上院議員、ジョン・リンゼイニューヨーク市長らの名も挙げられたが、立候補を表明しなかった。ロムニー撤退後、立候補表明をしていたニクソン、レーガン両候補と急遽立候補を表明したロックフェラーの三人の有力候補が争ったが、終始ニクソンがリードした。8月5日から8日にかけてフロリダ州マイアミビーチで開かれた党大会において、ニクソンは1回の投票で候補者に指名され復活を遂げた。

副大統領候補としては、ロムニーや指名を争ったロックフェラー、レーガンが取り沙汰されたほか、ジェラルド・フォード下院院内総務はリンゼーを公式に推薦した。しかし、ニクソンはこれら大物候補ではなく、全国的に無名のスピロ・アグニューメリーランド州知事を副大統領候補に選んだ。

民主党

候補者

  • トマス・リンチ - カリフォルニア州司法長官
  • ロジャー・ブレニガン - インディアナ州知事

当初、現職のリンドン・ジョンソン大統領が容易に党の候補者指名を獲得するものと思われていた。一方でユージーン・マッカーシー上院議員がベトナムからの即時撤退を訴える反戦綱領を掲げて立候補したが、泡沫候補と見られていた。しかし、ベトナム戦争に反対する世論が高まり、反戦運動が高揚する中、マッカーシーは草の根レベルで運動を行い、広範な支持を得た。ニューハンプシャー州予備選でまったく予想外の高い得票率で2位につけ、ジョンソンを追い詰めたことでマッカーシーは事実上の勝利者としてメディアに扱われ、「マッカーシー旋風」を起こした。その後、ジョンソンは党の指名を求めないと声明した。「マッカーシー旋風」に触発され、ロバート・ケネディ上院議員が立候補を決断した。ケネディはマッカーシー同様にベトナムからの即時撤退を盛り込んだ反戦綱領を掲げ、マッカーシーを支持した層に食い込むと共に、自らの知名度と若年層の間での人気をいかした運動をし、マッカーシーと並び最有力候補に躍り出た。だが、カリフォルニア州予備選で勝利を収め、指名獲得を確実にしたと思われた矢先、カリフォルニア州予備選の勝利演説の場でケネディは暗殺された(ロバート・ケネディ暗殺事件参照)。ケネディ暗殺後、党内の有力者を中心にヒューバート・ハンフリー副大統領が有力視されるようになったが、副大統領としてジョンソン政権の一員であったハンフリーは、次第に党の多数を占めるようになっていった反戦派にとっては不満の残る選択となる。8月26日から29日にかけてイリノイ州シカゴで開かれた党大会には、反戦運動家が多数集結し会場を取り囲んだ。やがて彼らは暴徒化し、リチャード・デイリーシカゴ市長の派遣した警官隊と衝突、流血の惨事となった。こうして最悪の事態となった党大会で、ハンフリーは予備選挙での運動を行わなかったにもかかわらず、マッカーシーやケネディのあとを継いだジョージ・マクガヴァン上院議員を破り、党の候補者に指名された。

選挙戦

ジョージ・ウォレス(アメリカ独立党)

他に第三党の候補者として、民主党の前アラバマ州知事で、人種隔離政策を支持する綱領を掲げるジョージ・ウォレスがアメリカ独立党から立候補した。ウォレスは、第二次世界大戦で日本に対する無差別爆撃を指揮し、またベトナムでの無差別爆撃の継続を訴えるカーチス・ルメイ空軍大将を副大統領候補に据え、ベトナムでの強硬な政策を主張した。

選挙戦は当初、ニクソンの圧倒的リードでスタートした。ニクソンは公民権運動や反戦運動が暴徒化、過激化し違法性を強めることに対して、「法と秩序の回復」を訴えた。さらにベトナムからの「名誉ある撤退」を主張し、これを実現する秘密の方策があると語った。またジョンソン政権の国内政策、「偉大な社会」計画を批判した。彼はこれまで民主党を支持してきたが、保守的な南部の有権者をターゲットにし、「南部戦略」を推進した。対するハンフリーは、「偉大な社会」計画の継承を訴え、貧困の撲滅などの実現を主張したが、一方で外交政策、ベトナム政策に関して政権から次第に距離を置き始め、批判的な姿勢に転じた。ハンフリーは選挙戦が進むにつれニクソンに肉薄し、一時は支持率で逆転した。こうして選挙戦は一転して接戦となった。

結果は一般投票でのニクソン、ハンフリー両候補者の得票率の差が1.2ポイントと、まれに見る接戦となった。ウォレスはジョージア州、アラバマ州などのディープサウスで勝利を収めたが、ニクソンは南部諸州に進出し、「南部戦略」は一定の成果を得た。

結果

大統領候補 副大統領候補 政党 選挙人投票 (EV) 一般投票 (PV)
リチャード・ミルハウス・ニクソンニューヨーク州 (当選) スピロ・セオドア・アグニューメリーランド州 共和党 301 31,783,783 43.4%
ヒューバート・ホレイショ・ハンフリーミネソタ州 エドマンド・シクストゥス・マスキーメイン州 民主党 191 31,271,839 42.7%
ジョージ・コーレイ・ウォレスアラバマ州 カーチス・エマーソン・ルメイオハイオ州 アメリカ独立党 46 9,901,118 13.5%
その他     0 253,559 0.3%
合計     538 73,487,137 100.00

州ごとの結果

[2]

ニクソン/アグニューが勝利した州
ハンフリー/マスキーが勝利した州
ウォレス/ルメイが勝利した州
リチャード・ニクソン
共和党
ヒューバート・H・ハンフリー
民主党
ジョージ・ウォレス
独立党
票差 州計
選挙人数 # % 選挙人数 # % 選挙人数 # % 選挙人数 # % #
アラバマ州 10 146,923 13.99 - 196,579 18.72 - 691,425 65.86 10 -494,846 -47.13 1,049,917 AL
アラスカ州 3 37,600 45.28 3 35,411 42.65 - 10,024 12.07 - 2,189 2.64 83,035 AK
アリゾナ州 5 266,721 54.78 5 170,514 35.02 - 46,573 9.56 - 96,207 19.76 486,936 AZ
アーカンソー州 6 189,062 31.01 - 184,901 30.33 - 235,627 38.65 6 -46,565 -7.64 609,590 AR
カリフォルニア州 40 3,467,664 47.82 40 3,244,318 44.74 - 487,270 6.72 - 223,346 3.08 7,251,587 CA
コロラド州 6 409,345 50.46 6 335,174 41.32 - 60,813 7.50 - 74,171 9.14 811,199 CO
コネチカット州 8 556,721 44.32 - 621,561 49.48 8 76,650 6.10 - -64,840 -5.16 1,256,232 CT
デラウェア州 3 96,714 45.12 3 89,194 41.61 - 28,459 13.28 - 7,520 3.51 214,367 DE
D.C. 3 31,012 18.18 - 139,566 81.82 3 - - - -108,554 -63.64 170,578 DC
フロリダ州 14 886,804 40.53 14 676,794 30.93 - 624,207 28.53 - 210,010 9.60 2,187,805 FL
ジョージア州 12 380,111 30.40 - 334,440 26.75 - 535,550 42.83 12 -155,439 -12.43 1,250,266 GA
ハワイ州 4 91,425 38.70 - 141,324 59.83 4 3,469 1.47 - -49,899 -21.12 236,218 HI
アイダホ州 4 165,369 56.79 4 89,273 30.66 - 36,541 12.55 - 76,096 26.13 291,183 ID
イリノイ州 26 2,174,774 47.08 26 2,039,814 44.15 - 390,958 8.46 - 134,960 2.92 4,619,749 IL
インディアナ州 13 1,067,885 50.29 13 806,659 37.99 - 243,108 11.45 - 261,226 12.30 2,123,597 IN
アイオワ州 9 619,106 53.01 9 476,699 40.82 - 66,422 5.69 - 142,407 12.19 1,167,931 IA
カンザス州 7 478,674 54.84 7 302,996 34.72 - 88,921 10.19 - 175,678 20.13 872,783 KS
ケンタッキー州 9 462,411 43.79 9 397,541 37.65 - 193,098 18.29 - 64,870 6.14 1,055,893 KY
ルイジアナ州 10 257,535 23.47 - 309,615 28.21 - 530,300 48.32 10 -220,685 -20.11 1,097,450 LA
メイン州 4 169,254 43.07 - 217,312 55.30 4 6,370 1.62 - -48,058 -12.23 392,936 ME
メリーランド州 10 517,995 41.94 - 538,310 43.59 10 178,734 14.47 - -20,315 -1.64 1,235,039 MD
マサチューセッツ州 14 766,844 32.89 - 1,469,218 63.01 14 87,088 3.73 - -702,374 -30.12 2,331,752 MA
ミシガン州 21 1,370,665 41.46 - 1,593,082 48.18 21 331,968 10.04 - -222,417 -6.73 3,306,250 MI
ミネソタ州 10 658,643 41.46 - 857,738 54.00 10 68,931 4.34 - -199,095 -12.53 1,588,510 MN
ミシシッピ州 7 88,516 13.52 - 150,644 23.02 - 415,349 63.46 7 -264,705 -40.44 654,509 MS
ミズーリ州 12 811,932 44.87 12 791,444 43.74 - 206,126 11.39 - 20,488 1.13 1,809,502 MO
モンタナ州 4 138,835 50.60 4 114,117 41.59 - 20,015 7.29 - 24,718 9.01 274,404 MT
ネブラスカ州 5 321,163 59.82 5 170,784 31.81 - 44,904 8.36 - 150,379 28.01 536,851 NE
ネバダ州 3 73,188 47.46 3 60,598 39.29 - 20,432 13.25 - 12,590 8.16 154,218 NV
ニューハンプシャー州 4 154,903 52.10 4 130,589 43.93 - 11,173 3.76 - 24,314 8.18 297,298 NH
ニュージャージー州 17 1,325,467 46.10 17 1,264,206 43.97 - 262,187 9.12 - 61,261 2.13 2,875,395 NJ
ニューメキシコ州 4 169,692 51.85 4 130,081 39.75 - 25,737 7.86 - 39,611 12.10 327,281 NM
ニューヨーク州 43 3,007,932 44.30 - 3,378,470 49.76 43 358,864 5.29 - -370,538 -5.46 6,790,066 NY
ノースカロライナ州 13 627,192 39.51 12 464,113 29.24 - 496,188 31.26 1 131,004 8.25 1,587,493 NC
ノースダコタ州 4 138,669 55.94 4 94,769 38.23 - 14,244 5.75 - 43,900 17.71 247,882 ND
オハイオ州 26 1,791,014 45.23 26 1,700,586 42.95 - 467,495 11.81 - 90,428 2.28 3,959,698 OH
オクラホマ州 8 449,697 47.68 8 301,658 31.99 - 191,731 20.33 - 148,039 15.70 943,086 OK
オレゴン州 6 408,433 49.83 6 358,866 43.78 - 49,683 6.06 - 49,567 6.05 819,622 OR
ペンシルベニア州 29 2,090,017 44.02 - 2,259,405 47.59 29 378,582 7.97 - -169,388 -3.57 4,747,928 PA
ロードアイランド州 4 122,359 31.78 - 246,518 64.03 4 15,678 4.07 - -124,159 -32.25 385,000 RI
サウスカロライナ州 8 254,062 38.09 8 197,486 29.61 - 215,430 32.30 - 38,632 5.79 666,982 SC
サウスダコタ州 4 149,841 53.27 4 118,023 41.96 - 13,400 4.76 - 31,818 11.31 281,264 SD
テネシー州 11 472,592 37.85 11 351,233 28.13 - 424,792 34.02 - 47,800 3.83 1,248,617 TN
テキサス州 25 1,227,844 39.87 - 1,266,804 41.14 25 584,269 18.97 - -38,960 -1.27 3,079,406 TX
ユタ州 4 238,728 56.49 4 156,665 37.07 - 26,906 6.37 - 82,063 19.42 422,568 UT
バーモント州 3 85,142 52.75 3 70,255 43.53 - 5,104 3.16 - 14,887 9.22 161,404 VT
バージニア州 12 590,319 43.36 12 442,387 32.49 - 321,833 23.64 - 147,932 10.87 1,361,491 VA
ワシントン州 9 588,510 45.12 - 616,037 47.23 9 96,990 7.44 - -27,527 -2.11 1,304,281 WA
ウェストバージニア州 7 307,555 40.78 - 374,091 49.60 7 72,560 9.62 - -66,536 -8.82 754,206 WV
ウィスコンシン州 12 809,997 47.89 12 748,804 44.27 - 127,835 7.56 - 61,193 3.62 1,691,538 WI
ワイオミング州 3 70,927 55.76 3 45,173 35.51 - 11,105 8.73 - 25,754 20.25 127,205 WY
合計: 538 31,783,783 43.42 301 31,271,839 42.72 191 9,901,118 13.53 46 511,944 0.70 73,199,998 US

接戦だった州

青字は民主党、赤字は共和党、紫字は独立党が勝利したことを示す。数字は得票率の差。

得票率差5%未満 (選挙人数223):

得票率差5%以上10%未満 (選挙人数155):

脚注

関連項目


1968年アメリカ合衆国大統領選挙

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 16:20 UTC 版)

リチャード・ニクソン」の記事における「1968年アメリカ合衆国大統領選挙」の解説

詳細は「1968年アメリカ合衆国大統領選挙」を参照 1962年カリフォルニア州知事選挙での敗北により、ニクソン共和党保守派を含む多くマスコミから「負け犬ニクソン」とまで言われていたが、再び大統領目指して1968年アメリカ合衆国大統領選挙に出馬する。そしてこの時期ベトナム反戦運動激化現職大統領であるジョンソン出馬断念上院議員であるロバート・ケネディ暗殺など民主党混乱国内世論分裂ニクソン追い風となった

※この「1968年アメリカ合衆国大統領選挙」の解説は、「リチャード・ニクソン」の解説の一部です。
「1968年アメリカ合衆国大統領選挙」を含む「リチャード・ニクソン」の記事については、「リチャード・ニクソン」の概要を参照ください。

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