朝鮮 「朝鮮」の由来

朝鮮

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/20 09:07 UTC 版)

「朝鮮」の由来

朝鮮の名は、司馬遷の『史記』の箕子のくだりに見られ紀元前からあったとされるが、李氏朝鮮時代に広まった[4]。その由来について、南北朝時代に編纂された史記の注釈書『史記集解[5]には張晏中国語版の説で「朝鮮には湿水、洌水、汕水が有り、3つのは洌水として合わさる。恐らくここから楽浪は朝鮮と名付けたのだろう」とある。唐代の史記注釈書『史記索隠』では「朝鮮とは潮汕の音写である[注 1]」と記されており、史記の時代から唐代までの中国では、川に因んだ地名と見做されていた。朝鮮王朝の官選地理書『新増東国輿地勝覧』には「朝日が鮮明なるところ」[注 2]とあり、李瀷は「朝は東方、鮮は鮮卑族の意」と解釈した[4][6][注 3]

13世紀に成立した朝鮮の史書『三国遺事』には、伝説的な人物である檀君が国を建てる際に「朝鮮」と号したという話があるが、三韓時代百済新羅高句麗、日本の史書、中国の史書にはこのような記載はなく[7]後漢時代にはこの伝説は生まれていなかったと見られている[7]

朝鮮の異称や雅号に三千里錦繍江山」、「槿域」、「青丘」、「鶏林」、「」、「海東」などがある[4]

古代における朝鮮の場所

かつての朝鮮は半島全体を示す地域名称ではなかったが、その地域は史書によって相違点もある。

漢書』巻28下には、「箕子が朝鮮に赴いて民を教化した」という記述がある[8]。箕子はいわゆる王朝としての箕子朝鮮の祖である。前漢代に設置された楽浪郡の都は朝鮮県と呼ばれており、かなり狭い範囲のものであった。現在では発掘調査の結果、「朝鮮県」は現在の平壌付近を指すことが定説となっている[9]。『三国志』が引く『魏略』には、箕子が統治した「朝鮮」は、の東、遼東、遼西を含めた地域であると説明されている[10]。『魏書』には、北魏の支配する平州には楽浪郡があり、その下に朝鮮県があったと記述されている。『遼史』では東京遼陽府、現在の遼寧省遼陽市がかつて朝鮮と呼ばれていたという記述があるが、同時にかつて「平壌城」と呼ばれていたという記述もある[11]

李氏朝鮮による採用

李氏朝鮮の初代国王李成桂1392年冊封した高麗王昌王恭譲王を廃位して高麗王位を簒奪して高麗王を称した後、すぐにに使節を送ったが、洪武帝は王朝が交代したことで、国号を変更するよう命じた。これをうけた李成桂は、重臣達と共に国号変更を計画し、「朝鮮」と「和寧」の二つの候補を準備し、洪武帝に選んでもらった[12]。「和寧」は李成桂の出身地の名であったが、北元の本拠地カラコルムの別名でもあったので、洪武帝は、前漢武帝が滅ぼした衛氏朝鮮の名前であり、平壌付近の古名である「朝鮮」を選んだ。そして李成桂を権知朝鮮国事に封じたことにより、「朝鮮」は正式な国号となった。「和寧」が単に李成桂の出身地であるだけなのに対し、「朝鮮」はかつての衛氏朝鮮箕子朝鮮檀君朝鮮の正統性を継承する意味があったことから本命とされており、国号変更以前からそれを意識する儀式が行われていた[13]

国号が「朝鮮」という二文字なのは、中国の冊封体制に、新王朝の君主が外臣として参加して、一文字の国号を持つ内臣より一等級格下の処遇を与えられていることを意味する[14]

国号を洪武帝に選んでもらったことは、事大主義を象徴していると揶揄されるが(例えば黄文雄は、「李朝の太祖・李成桂は、『易姓革命』によって高麗朝を簒奪した事実と実権支配の獲得を太祖に認知させるため、国家主権を明に売り渡し、明の属国と決め込んだ。朝鮮の国号王位を明によって下賜されるかたちをとったのである」と述べている[15]。)[12]、新王朝が擬定した「朝鮮」の国号は、朝鮮初である檀君朝鮮と朝鮮で民を教化した箕子朝鮮を継承する意図があり[8]、首都が漢陽に置かれたのは、檀君朝鮮と箕子朝鮮の舞台であるためである。新王朝は、檀君箕子を直結させることにより、正統性の拠り所にする意図を持っていた。朝鮮という国名は、の賢人箕子が、武王によって朝鮮に封ぜられた故事に基づく由緒ある中国的な呼称であるため[16]、洪武帝は、新王朝が箕子の伝統を継承する「忠実な属国」となり、自らは箕子を朝鮮に封じた武王のような偉大な賢君になりたいと祈念した[13]。したがって、中国への事大主義を国是とする新王朝が、周の武王が朝鮮に封じた箕子の継承を意図する朝鮮の国号を奏請したことは適切であった[17]


注釈

  1. ^ 原文「朝音潮 直驕反 鮮音仙 以有汕水故名也 汕一音訕」
  2. ^ 「國在東方 先受朝日之光鮮 故名朝鮮」
  3. ^ 意味によって発音も異なり、鮮麗の鮮は「xiān」、鮮少の鮮は「xiǎn」である(郑春兰『传统文化经典读本 汉字』四川辞书出版社, 2018.01, P.209)。

出典

  1. ^ "North Korea". World Reference Atlas (2nd American ed.). New York: Dorling Kindersley. 1996. p. 413. ISBN 0-7894-1085-0
  2. ^ "South Korea". World Reference Atlas (2nd American ed.). New York: Dorling Kindersley. 1996. p. 498. ISBN 0-7894-1085-0
  3. ^ MT.co.kr
  4. ^ a b c 「地域・国名編-朝鮮」【監修】伊藤亜人+大村益夫+高崎宗司+武田幸男+吉田光男+梶村秀樹『[新版] 韓国 朝鮮を知る事典』平凡社、2014年3月19日 新版第1刷発行、ISBN 978-4-582-12647-1、580頁。
  5. ^ Wikisource 中国語版 「史記三家註/卷115」冒頭
  6. ^ 世界大百科事典Korea』 - コトバンク
  7. ^ a b 矢木毅 2008, p. 46
  8. ^ a b 矢木毅 2008, p. 45
  9. ^ 矢木毅 2008, p. 41,50
  10. ^ 矢木毅 2008, p. 61
  11. ^ 矢木毅 2008, p. 50-51
  12. ^ a b 矢木毅 2008, p. 43
  13. ^ a b 矢木毅 2008, p. 44
  14. ^ 矢木毅 2008, p. 40
  15. ^ 黄文雄『日本の植民地の真実』扶桑社、2003年10月31日、137頁。ISBN 978-4594042158 
  16. ^ 矢木毅 2008, p. 41
  17. ^ 矢木毅 2008, p. 49
  18. ^ 韓国ノ国号ヲ改メ朝鮮ト称スルノ件(明治43年勅令第318号)
  19. ^ アジア歴史資料センター、レファレンスコードC01007778900
  20. ^ アジア歴史資料センター、レファレンスコードC01007819700
  21. ^ アジア歴史資料センター、レファレンスコードC01007867000
  22. ^ 毎日新聞』2002年4月10日朝刊
  23. ^ 日本経済新聞』2002年4月10日朝刊






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