セルモーター オートバイへの普及

セルモーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/08 15:02 UTC 版)

オートバイへの普及

オートバイにおいては、ケタリングがセルモーターを発明する前の年である1910年に、ヴィンセント・ベンディックスワンウェイクラッチの一種であるベンディックスギアを開発し、スタータークラッチとしてセルモーターに組み合わせた。自動車におけるピニオンギア構造と比較すると小型で、補機を搭載するための空間的な余裕が少ないオートバイの車体にもセルモーターの搭載が可能となった。

一方、小排気量のオートバイの場合はキックスターターなどでも実用上の問題がなく、セルスターターの需要は大排気量車に限られた。小型オートバイに至るまでセルモーターが普及したのは第二次世界大戦後であった。

レブリダクション

通常タイプとリダクションタイプのセルモーター比較

クランクシャフトを回転させるのに必要なトルクが比較的小さい自動車やオートバイでは、モーターの回転を直接伝達するピニオンがリングギアやプライマリードリブンギアに噛み合わされるが、高いトルクを必要とするエンジンではレブリダクション方式が用いられる場合がある。レブリダクション方式はモーターの回転がギアあるいは遊星ギアによって減速され、トルクが増大されてピニオンに伝達されるタイプのものである。

トラックなどの大型車両やディーゼルエンジン車などエンジンの回転抵抗が大きい車両だけでなく、普通乗用車のオートマチックトランスミッション搭載車のように、クランクシャフトに慣性モーメントが大きいトルクコンバーターが固定されている場合にも多く用いられる。純正でレブリダクション方式のセルモーターを搭載していない車種でも、改造によって圧縮比を高くした場合や排気量を増加させた場合にはクランクシャフトの回転抵抗が増大するため、リダクション方式のセルモーターに交換する場合がある。

緊急発進

万一、踏切など速やかに通過しなければならない場面においてエンジンが停止し再始動できない場合、マニュアルトランスミッション車で利用可能な緊急手段として、スターターモーターのトルクで車両を移動させる方法が自動車教習所で用いられる教本に掲載されている。トランスミッションの低いギア(1速か後退)を選び、クラッチを接続したままスタータースイッチを入れることでスターターモーターのトルクを車輪に伝達させる手順であるが、クラッチスタートシステムという安全装置が装備されている車種では利用できない。

モータースポーツの世界では、1988年ル・マン24時間レースでクラウス・ルートヴィッヒの運転するポルシェ・962Cが燃料切れを起こし、スターターモーターで走行してピットに戻った。これは自走してピットに戻れなければリタイアとなるルールのために行われたものである。


  1. ^ トヨタKB型トラック - トヨタ自動車75年史(更新日不明)2018年7月7日閲覧
  2. ^ トヨタKB型トラック- トヨタ自動車75年史 > カタログ(更新日不明)2023年9月14日閲覧
  3. ^ 自動車部品検索サイト”. 2011年10月12日閲覧。


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