自動車用の実用化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 06:48 UTC 版)
1903年にアメリカ合衆国ニューヨーク市で、発明家のクライド・J・コールマンが「自動車用電気式スターター」として米国特許(番号745,157)を取得したが、この時点では実用化されなかった。 本格的な実用化はキャディラック社の創業者であるヘンリー・リーランドの要望が元になったとするのが通説である。リーランドの自動車製造業界での友人であったバイロン・J・カーターは、路傍でキャディラック製自動車のエンジンを始動できずに困っていた女性ドライバーに代わってクランク棒の操作を行ったところキックバックを受けて重傷を負い、これが遠因となり1908年に亡くなった。リーランドは自社製品で友人を死なせた事態を哀しみ、クランク棒に代わるエンジン始動方式の開発を命じたがキャディラックの開発陣には実現できず、車両用電装品メーカーのデルコを創業していた技術者チャールズ・ケタリングの社外案が採用された[要出典]。 ケタリングは1910年にコールマンによる電気式スターターの特許を買い取り、自身がNCRで電動キャッシュレジスターに用いたモーター技術を組み入れて改良した。レジスター用のモーターは瞬間的に大きな出力を発生しながら繰り返される負荷に耐える必要があり、その特性は自動車エンジン用のセルモーターとして応用できるものであったためである。1911年までにはキャディラックでのテストを繰り返して実用的なものに改良した。蓄電池を搭載し、イグニッションシステムとあわせて電気式ヘッドライトも組み込まれ、自動車における電装部品の機能を拡大した。ケタリングのシステムでは、セルモーターはエンジンを始動するだけでなく走行時にはバッテリー充電のための発電機となった(セルダイナモ)[要出典]。これは後年でも一部の自動車では使用されたが、現在はセルモーターと発電機とは個別に独立した装置を搭載するのが一般的となっている。 ケタリングらによるセルモーターは1912年にキャディラックの市販車に搭載され、四輪自動車用として史上初の本格的な電気式スターターシステムとされている。当初は女性向けのオプション装備であったが、数年のうちに米国では代表的な大衆車であるフォード・モデルT(1917年からオプション装備)をはじめとして、ほとんどすべての自動車がセルモーターを装備するようになった。この動向は1920年代にはヨーロッパにも広まり、以降1950年代までの自動車にはセルモーターと非常用の手動クランクを共に搭載するのが一般化した。1960年代以降は電装品の信頼性が向上して手動クランクは併用されなくなった。[要出典]
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