公益法人 概要

公益法人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/15 03:00 UTC 版)

概要

公益法人は公益法人認定法により公益性の認定を受けた一般社団法人一般財団法人をいう(公益法人認定法2条3号)。公益性の認定を受けた一般社団法人公益社団法人(公益法人認定法2条1号)、公益性の認定を受けた一般財団法人公益財団法人という(公益法人認定法2条2号)。

従来、日本では1898年(明治31年)に施行された民法によって公益法人など民間の非営利部門での公益的活動を担う法主体が規律されていた[1]。改正前の民法では法人を公益法人(改正前民法34条)と営利法人(改正前民法35条)に分け、営利法人については主に商法(のちに会社法)で規律され許可を要することなく設立できるとされていたのに対し、公益法人については民法で設立に主務官庁の許可が必要とされていた[2]。改正前の民法34条の規定では「祭祀、宗教、慈善、学術、技芸其他公益ニ関スル社団又ハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ主務官庁ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコトヲ得」とされ、具体的には、この規定に直接基づき設立を許可された社団法人及び財団法人を公益法人と呼んだ[3]。また後記の広義の公益法人(特別法公益法人を含む。)と区別する際には、民法に直接基づくため民法法人とも呼ばれた[4]

しかし、民法で採用されていた許可主義は法人設立が簡便ではないことや、公益性の判断基準も不明確であったことから、社会的需要に適合しなくなっていると指摘されていた[1]

公益法人制度改革により、2008年(平成20年)12月1日に公益法人制度改革3法(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)が施行された。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般社団・財団法人法)が施行されたことにより、公益目的でなくても、非営利目的(構成員に対し利益の分配を行わない)であれば、簡易に準則主義に従い一般社団法人や一般財団法人を設立できるようになった。さらに一般社団・財団法人法により設立された一般社団法人または一般財団法人のうち、公益法人認定法による公益性の認定を受けたものは、それぞれ公益社団法人または公益財団法人として税制上の優遇措置を受けることができる。公益法人は公益社団法人と公益財団法人をまとめて言う場合の呼称である。

2008年(平成20年)12月1日から2013年(平成25年)11月30日の5年間は新制度への移行のための暫定期間として、明治以来2008年(平成20年)11月30日までに公益法人として設立された法人も特例民法法人と呼ばれる形態が認められていた。

なお「公益法人等」と「特例民法法人」の検索は「国・都道府県公式公益法人行政総合情報サイト」である「公益法人information」から行える[5]

これらの他に、制度改革以前も以後も、広義のものとして、公益法人として主要なものとして各種の特別法[6]に基づき設立された社会福祉法人学校法人医療法人宗教法人特定非営利活動法人(通称NPO法人)、更生保護事業法による更生保護法人などの法人も公益法人と呼ばれている[7]

この項目では特別の断りのない限り公益法人認定法における「公益法人」について記述する。


  1. ^ a b 河上正二『民法総則講義』日本評論社、132頁。ISBN 978-4535515963 
  2. ^ 星野英一『民法概論 I 改訂版』良書普及会、123頁。ISBN 978-4656300110 
  3. ^ たとえば竹内昭夫松尾浩也塩野宏ほか編著『新法律学辞典第3版』有斐閣、1989年(平成元年)、389頁。
  4. ^ (財)公益法人協会編『公益法人用語辞典』(財)公益法人協会、2002年(平成14年)、243頁
  5. ^ 公益法人information
  6. ^ これらの特別法にとっての根拠法及び一般法は、制度改革以前は改正前民法33条・34条民法第三十三・三十四条 (PDF, 34.1 KB) - 民法(明治二十九年法律第八十九号)(抄)、
    第三十三条 法人ハ本法其他ノ法律ノ規定ニ依ルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス
    第三十四条 祭祀、宗教、慈善、学術、技芸其他公益ニ関スル社団又ハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ主務官庁ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコトヲ得(行政改革推進本部事務局)(PDFファイル)閲覧日:2010年(平成22年)1月8日、改革以後は民法33条「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。2  学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。」。
  7. ^ 前掲『新法律学辞典第3版』389頁、金子宏・新堂幸司・平井宜夫ほか編著『法律学小辞典第4版補訂版』有斐閣、2008年(平成20年)、331頁
  8. ^ 認定法 第32、33、50条
  9. ^ 認定法 2,3条
  10. ^ 認定法 第2条第4号
  11. ^ 認定法 第5条
  12. ^ 2010年4月28日付「委員会だより(その3)」(内閣府公益認定等委員会) (PDF, 34.1 KB) 10頁 - 11頁
  13. ^ 法人税法施行令第5条第2項
  14. ^ 所得税法78条及び所得税法施行令217条、法人税法第37条及び法人税法施行令第77条
  15. ^ 認定法 第57条
  16. ^ 整備法 第45条ほか
  17. ^ 認定法 58条
  18. ^ 公益法人などに対する課税に関する資料財務省
  19. ^ みなし寄附金(公益法人協会)


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