サハラ砂漠 地理

サハラ砂漠

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/03 23:40 UTC 版)

地理

主要地形区

サハラ砂漠はエジプト、チュニジア、リビア、アルジェリア、モロッコ、西サハラ、モーリタニア、マリ、ニジェール、チャド、スーダンにおよぶ。砂漠地形は風と季節雨が形成する。砂丘、砂平原、砂海(エルグ)、岩石高地(ハマダ)、礫平原(レグ)、涸れ谷(ワディ)、塩類平原(シャット)などがある。エルグは砂丘が連なる光景で、サハラ砂漠といえばまず連想される光景ではあるが、エルグは砂漠全体の14パーセントにすぎず、多くは台地状の岩石砂漠である[5]

深く切り裂かれた山地や山脈、火山などの高まりも見られる。サハラ砂漠で最高峰は北部チャドのティベスティ山地に位置するエミクーシ山(標高3,415メートルの火山)である。サハラの西部、モーリタニアの中央部にはリシャット構造と呼ばれる巨大な環状構造地形が存在する。これは長年の風化と侵食によって柔らかい岩石の部分が削られてできたもので、同心円状の山地が50キロメートルにわたって続き、その特異な形状から「サハラの目」とも呼ばれる。

サハラ中央部、チャド北部にはボデレ低地と呼ばれる広大な低地がある。この低地はガザール・ワディによって南のチャド湖とつながっており、過去の湿潤期にはチャド湖方面から流れ込んできた水によって大きな湖となっていた。8000年前の最湿潤期にはチャド湖と一体化した大チャド湖の一部となったこともある。そのころにたまったシルトや砂によって現在は一面の砂丘地帯となっており、サハラから近隣地域にまで拡散する膨大な砂塵はその多くがボデレ低地から運ばれたものとされる。また、サハラで最も低い土地はサハラ北東部、エジプト西部にあるカッターラ低地(標高マイナス133メートル)である。

リビア上空を覆う砂嵐。地中海にまで大量の砂塵が巻き上げられている様子が衛星軌道からも確認できる。2005年1月1日。

サハラからは季節によって周辺地域に風が吹き込む。冬にギニア湾や大西洋岸に向けて吹き込む風はハルマッタンと呼ばれ、熱風ではなくむしろ涼しい風であるがきわめて乾燥しており、この地方に乾季をもたらす。夏に北のリビア方面に吹き込む風はギブリと呼ばれ、熱く乾いている。この風がイタリアにまで到達するとシロッコと呼ばれるようになるが、間の地中海で水分を吸収するため湿った風となる。春にサハラからリビアやエジプトに向けて吹き込む熱く乾いた風はハムシンと呼ばれる。いずれの風もボデレ低地を中心としたエルグから巻き上げられた砂塵を大量に含むため、周辺地域に大量の砂塵を降らせ、市民生活に多大な支障をもたらす。この砂塵はさらに海を越え、ヨーロッパ北アメリカ南アメリカといったほかの大陸にまで到達する。巻き上げられる砂塵の量は年間20億から30億トンにもなり、2月から4月にかけてはカリブ海や南アメリカ大陸に、6月から10月にかけてはフロリダ州などに降り注ぐ[6]。この砂塵は黄砂のようにさまざまな害をもたらす一方、アマゾン熱帯雨林に必要な栄養素を補給するなどの役目も果たしている。

アハガル山地のオアシス

ナイル川を例外として、ほとんどの河川は季節的か間欠的に見られる。地下水が地表に現れオアシスを形成する。サハラ砂漠中央部は極度に乾燥しており、植生はほとんどない。砂漠の端で山地から水の供給のあるところでは草、潅木、高木が生えている。かつて湿潤だったころの名残として、ニジェール中部のテネレ砂漠にテネレの木と呼ばれるアカシアが生えており、世界でもっとも孤立したところにある木として知られていたが、1973年に倒されてしまった。南部のサヘルとの境界は気象学的に年間降水量150ミリの線である。


  1. ^ a b c フジテレビトリビア普及委員会 『トリビアの泉〜へぇの本〜 2』講談社、2003年。 
  2. ^ 「週刊朝日百科世界の地理98 モロッコ・モーリタニア・西サハラ」朝日新聞社 昭和60年9月8日 p10-215
  3. ^ 「週刊朝日百科世界の地理99 アフリカ西部諸国」朝日新聞社 昭和60年9月15日 p10-236
  4. ^ 「リビアを知るための60章」 p222 塩尻和子 明石書店 2006年8月15日
  5. ^ 『アフリカを知る事典』、平凡社、ISBN 4-582-12623-5 1989年2月6日 初版第1刷 p.174
  6. ^ 「キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告」p158 石弘之(岩波新書、2009)
  7. ^ 「ビジュアルシリーズ世界再発見2 北アフリカ・アラビア半島」p26 ベルテルスマン社、ミッチェル・ビーズリー社編 同朋舎出版 1992年5月20日第1版第1刷
  8. ^ 『アフリカを知る事典』、平凡社、ISBN 4-582-12623-5 1989年2月6日 初版第1刷 p.173
  9. ^ 石弘之著『地球環境報告』岩波書店《岩波新書(新赤版33)》 1988年 130ページ
  10. ^ アフリカに築かれる「緑の万里の長城(Great Green Wall)」”. 一般社団法人環境金融研究機構 (2016年9月7日). 2021年3月29日閲覧。
  11. ^ 2009年8月3日、ナショナルジオグラフィック ニュース「サハラ砂漠、気候変動で緑化が進行か」
  12. ^ 田辺裕島田周平柴田匡平、1998、『世界地理大百科事典2 アフリカ』、朝倉書店  p371 ISBN 4254166621
  13. ^ 「新書アフリカ史」第8版(宮本正興・松田素二編)、2003年2月20日(講談社現代新書)p184
  14. ^ 「サハラが結ぶ南北交流」(世界史リブレット60)p9 私市正年 山川出版社 2004年6月25日1版1刷
  15. ^ “砂漠の真ん中でカローラとすれ違う アフリカ道路事情(1) <アフリカン・メドレー>”. 岩崎有一 (アサヒカメラ.net). (2015-07-08 11:00 (JST)). http://dot.asahi.com/asahicameranet/info/topics/2015070800021.html 2015年7月17日閲覧。 
  16. ^ “サハラ砂漠に92人の遺体、行き倒れたニジェール難民”. AFP (フランス通信社). (2013年11月2日). http://topics.jp.msn.com/world/general/article.aspx?articleid=2164103 2013年11月10日閲覧。 
  17. ^ サハラ砂漠に水・食糧なしで放置、移民67人を救助 ニジェール AFP(2017年7月10日)2017年7月10日閲覧





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「サハラ砂漠」の関連用語

サハラ砂漠のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



サハラ砂漠のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのサハラ砂漠 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2023 GRAS Group, Inc.RSS