サハラ砂漠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/03 23:40 UTC 版)
交通

サハラ砂漠を南北に縦断するルートは何本か存在するが、一般的な自動車が走破可能な道路を選び、かつ、給油の便を考えるとわずか3本ほどに絞られる[15]。モロッコのマラケシュから大西洋沿岸を西サハラのアイウン、ダクラ、モーリタニアのヌアディブーを通ってヌアクショットへいたるもの、アルジェリアのベシャールやアバドラから南下してマリのガオにいたるもの、アルジェからタマンラセット、ニジェールのアーリットを通ってアガデスへと抜けるものなどである。しかしどのルートも国境付近には道路らしい道路はなく、前の車の轍を目印に走ることとなる。車両の故障が命取りとなり、多くの犠牲者を出す例もある[16]。 しかし21世紀に入り、ヌアディブーからヌアクショットの道路が舗装されて大西洋沿岸のルートはほぼ舗装が完了し、サハラ初の縦貫舗装道路となった。なお、サハラを横断する道路は一本も存在しない。
また縦貫路は、サハラ以南の経済難民が砂漠を縦断して欧州を目指す経路にもなっている。ただし悪質な密航業者により砂漠内で難民が遺棄されるケースもあり、死者も発生している[17]。
1979年から2007年までの間は、パリから出発してセネガルのダカールまでの約1万2,000キロを走破する世界有数のラリーレイド競技であるパリ・ダカール・ラリーのメインコースとなっていたが、テロや強盗に遭うことが少なくなく、2008年には治安の悪化によってレース自体が中止に追い込まれた。これを受けて、2009年度からはダカールラリー・アルゼンティーナ・チリ・ペルーと名を変えて南アメリカ大陸でレースが行われることとなり、サハラでの競技は行われなくなった。
鉄道はほとんど存在しないが、モーリタニア北端を走るモーリタニア鉄道は例外である。この鉄道はサハラ砂漠の中にあるズエラットと大西洋岸のヌアディブーの間を結ぶ全長717キロの鉄道で、全線が砂漠の中を走る。ズエラット近郊のフデリックの鉄鉱石をヌアディブー港まで運ぶための鉄道であり、鉄鉱石を積んだ貨車の列は全長3キロにもおよび、世界一長い列車として知られる。旅客専用列車はないが、この貨物列車の最後尾に客車が連結されており(混合列車)、旅客の利用もできる。
- ^ a b c フジテレビトリビア普及委員会 『トリビアの泉〜へぇの本〜 2』講談社、2003年。
- ^ 「週刊朝日百科世界の地理98 モロッコ・モーリタニア・西サハラ」朝日新聞社 昭和60年9月8日 p10-215
- ^ 「週刊朝日百科世界の地理99 アフリカ西部諸国」朝日新聞社 昭和60年9月15日 p10-236
- ^ 「リビアを知るための60章」 p222 塩尻和子 明石書店 2006年8月15日
- ^ 『アフリカを知る事典』、平凡社、ISBN 4-582-12623-5 1989年2月6日 初版第1刷 p.174
- ^ 「キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告」p158 石弘之(岩波新書、2009)
- ^ 「ビジュアルシリーズ世界再発見2 北アフリカ・アラビア半島」p26 ベルテルスマン社、ミッチェル・ビーズリー社編 同朋舎出版 1992年5月20日第1版第1刷
- ^ 『アフリカを知る事典』、平凡社、ISBN 4-582-12623-5 1989年2月6日 初版第1刷 p.173
- ^ 石弘之著『地球環境報告』岩波書店《岩波新書(新赤版33)》 1988年 130ページ
- ^ “アフリカに築かれる「緑の万里の長城(Great Green Wall)」”. 一般社団法人環境金融研究機構 (2016年9月7日). 2021年3月29日閲覧。
- ^ 2009年8月3日、ナショナルジオグラフィック ニュース「サハラ砂漠、気候変動で緑化が進行か」
- ^ 田辺裕、島田周平、柴田匡平、1998、『世界地理大百科事典2 アフリカ』、朝倉書店 p371 ISBN 4254166621
- ^ 「新書アフリカ史」第8版(宮本正興・松田素二編)、2003年2月20日(講談社現代新書)p184
- ^ 「サハラが結ぶ南北交流」(世界史リブレット60)p9 私市正年 山川出版社 2004年6月25日1版1刷
- ^ “砂漠の真ん中でカローラとすれ違う アフリカ道路事情(1) <アフリカン・メドレー>”. 岩崎有一 (アサヒカメラ.net). (2015-07-08 11:00 (JST)) 2015年7月17日閲覧。
- ^ “サハラ砂漠に92人の遺体、行き倒れたニジェール難民”. AFP (フランス通信社). (2013年11月2日) 2013年11月10日閲覧。
- ^ サハラ砂漠に水・食糧なしで放置、移民67人を救助 ニジェール AFP(2017年7月10日)2017年7月10日閲覧
- サハラ砂漠のページへのリンク