カボチャ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/06 10:42 UTC 版)
品種
栽培されている品種は、C. argyrosperma(ニホンパイカボチャ)、クロダネカボチャ、セイヨウカボチャ、ニホンカボチャ、ペポカボチャの5種とそれらの雑種である[30]。日本で流通しているカボチャは、ニホンカボチャ、セイヨウカボチャ、ペポカボチャの3系統に大別される[31][7]。日本に先に定着した東洋系のニホンカボチャ(日本種)は、黒皮系で縦に溝が入ったゴツゴツとした形のものが多く見受けられ[31]、果肉は粘質で、日本では昔から栽培されているので多くの地方品種がある[32]。またセイヨウカボチャ(西洋種)は、肉質が粉質で、果皮色は黒緑色、白色、赤色などがあり、日本では栽培されるカボチャの主流になっており、当初は冷涼地向けの品種が多かったが、暖地向きの品種も育成されている[31][7]。ぺポカボチャ(ペポ種)は、若どり用のつるなしカボチャや、外観が色とりどりのものがあり、観賞用に栽培されるものもある[32]。
- クロダネカボチャ(学名:C. ficifolia)
- アメリカ大陸原産。強健な性質を利用して、キュウリなどの接ぎ木の台にすることも多い。
- セイヨウカボチャ(西洋かぼちゃ、学名:C. maxima)
- アンデス山脈高地の冷涼な土地で栽培化された種で、現在日本で広く栽培されているカボチャである。花梗はスポンジ状で膨れており、畝は無い。一般的に、果肉はニホンカボチャよりデンプン含有量は多く、粉質で食感はホクホクとして甘みは強く、栗かぼちゃとも呼ばれる[33][7]。果皮色はさまざまで、青皮系、黒皮系、赤皮系などがある[33]。「えびす」[33]などの品種や打木赤皮甘栗かぼちゃ、宿儺かぼちゃがこれに含まれる。
- 黒皮栗かぼちゃ(別名:栗かぼちゃ) - 日本で主流の西洋カボチャで栗かぼちゃといわれている品種。偏円形で表面に少し凸凹がある[34]。
- えびすかぼちゃ - 西洋カボチャの代表種。栗のようなホクホクした肉質が特徴[34]。
- 芳香青皮栗かぼちゃ(通称:東京かぼちゃ) - 宮城県で作出された日本で最初の西洋カボチャで関東を中心に出回る。偏平の中型のカボチャで果皮は白っぽい灰緑色で浅い溝がある[34]。ほっくりした肉質と甘味がある[31]。スープにしたり、菓子などにも使われる[34]。
- 打木赤皮天栗かぼちゃ(うつぎあかがわあまぐりカボチャ) - 皮色と果肉が鮮やかなオレンジ色の加賀地方の西洋カボチャ。果実はやや小ぶりで紡錘形をしており、皮はあまりかたくない[34]。果肉はほくほくしており、ねっとりした食感であるが煮物などに向く[31]。
- 宿儺かぼちゃ(すくなカボチャ) - 岐阜県高山市特産のヘチマのように細長くなる西洋カボチャで、長さは50センチメートル以上にもなる。果皮は淡緑色でやわらかく、肉質は黄色で甘味が強い[31]。
- 赤皮栗かぼちゃ - 果皮が朱色の西洋カボチャで、重量1.5キログラムほどで日もちが良い。皮はかたくなく、肉質はほくほくしている[35]。
- 白皮かぼちゃ - 白っぽい薄緑色の果皮をもつ西洋カボチャで、粉質の果肉で甘味が強い[31]。
- ロロン - 楕円形の大玉で重量は1.8 - 2キログラム程になる品種で、果皮は濃緑色地にちらし斑がはいっている。肉質はきめ細かく、粉質でホクホク感がある[31]。
- コリンキー - 果皮が黄色くなる西洋カボチャ。皮も果肉もやわらかく、あっさりしていて甘味も少ない。生食や漬物に向いている[31]。
- 栗坊(くりぼう) - 重量500 - 600グラム程度の小型の西洋カボチャ。中の種とわたを取り除いて、まるごと詰め物料理などにも使われる[31]。
- 坊ちゃんカボチャ - 重量500グラム程度の小型の西洋カボチャ。ほっくりした粉質の果肉で、まるごと加熱調理もできる[31]。
- こふき - 黒皮系の西洋カボチャで、重量1.8キログラムほどになる大型の品種。「粉ふき」の名の通り果肉は粉質で甘い[31]。
- 鈴かぼちゃ - 重量500グラムほどの生食用の西洋カボチャ。種もやわらかく、すべて食べられる[31]。
- バナナ・スカッシュ - 形状がバナナのように細長い西洋カボチャで、長さ50 - 70センチメートルほどになる。日本には輸入物が出回っている。味は薄く、生食するほか茹でてマッシュしてサラダなどにする[35]。
- ターバン・スカッシュ - ターバンを連想させる独特な形状をした西洋カボチャの1種で、日本に流通しているのはアメリカ産の輸入物。果肉は水っぽく甘味は少ない。スライスして炒めたり、ポタージュなどにする[35]。
- ニホンカボチャ(日本かぼちゃ、学名:C. moschata)
- メソアメリカの熱帯地方で栽培化された種である。実の形は平たくて縦に溝が入って凹凸があり「菊かぼちゃ」ともよばれている[33]。日向や小菊などの品種を始め、ヒョウタンのようなくびれがある鹿ケ谷かぼちゃや春日ぼうぶらのような伝統野菜、バターナッツ・スクワッシュや鶴首かぼちゃ、黒皮かぼちゃ[33]などがこれに含まれる。一般的に、水分が多くセイヨウカボチャより粘りがあり味は淡泊であるが、特有の香りがある[33][7]。煮崩れしにくいことから、煮物や蒸し物などの日本料理に向いている[33]。
- 会津菊かぼちゃ - 福島県会津若松市で栽培されている日本カボチャの在来種。ねっとりした食感が特徴[36]。
- 黒皮かぼちゃ(別名:ちりめんかぼちゃ) - 日本カボチャの代表種で、表面がゴツゴツしているのが特徴で、現在では市場にほとんど出回らない[35]。水気が多く甘味は少ないが、じっくり煮るとおいしく食べられる[36]。この品種を元に、数々の系統が育成された[35]。
- 日向14号 - 昭和11年に宮城県で作出されて九州各地で栽培される黒皮系の日本カボチャで、熟すと淡い色になる。ねっとりした肉質で煮崩れしにくい[36]。
- 菊座かぼちゃ - 日本カボチャの1種で、黒皮かぼちゃよりもやや小ぶりの品種。代表品種に「小菊」があるが、「黒皮ちりめん」の名で流通することもある。中をくり抜いて詰め物をする蒸し料理などに使われる[35]。
- 島かぼちゃ - 沖縄在来種といわれる日本カボチャで丸形とひょうたん型がある。主に糸満市で栽培されている[37]。あっさりした甘さで、煮物に向いている[36]。
- 鹿ケ谷かぼちゃ - 京都特産の日本カボチャで、中央がくびれたひょうたん型で、果皮がでこぼこしているのが特徴。完熟すると皮がオレンジ色に粉が吹いたようになる[36]。
- バターナッツ・スカッシュ(別名:デリカ) - ピーナッツのような形のひょうたん型で果皮がクリーム色になる、重量800グラムほどの小型の夏カボチャ。アメリカではホピュラーな日本カボチャ系の品種で、日本へはアメリカからの輸入ものが流通している[35]。あっさりした甘さで生食や茹でて潰してサラダにするほか、煮物などにも向く[36][35]。
- 韓国カボチャ(韓国名:ホバク、エホバク) - 形や食感がズッキーニによく似た日本カボチャの一種で、「カボッキー」「マッチャン」「リッチーナ」などの品種がある[38]。完熟させずに若い実を食べる。炒め物や汁物などに使われる[36]。
- 種間雑種カボチャ(学名:C. moschata×C.maxima)
- セイヨウカボチャとニホンカボチャを交配したカボチャ。強健で病気に強いのが特徴。栗かぼちゃの食味が好まれるようになった現代では廃れていった。ただし、新土佐(別名:鉄兜)は今でも種が販売され、食用や、強健な性質を利用してキュウリなどの接ぎ木の台に利用される。この新土佐とセイヨウカボチャをさらに交配した万次郎かぼちゃというのもある。
- ペポカボチャ(学名:C. pepo)
- 北米南部の乾燥地帯で栽培化された種で、ドングリカボチャ、金糸瓜(そうめんかぼちゃ)などがこれに含まれる。果実の形や食味に風変わりなものが多く、細長いものや小型の物が多く観賞用としても人気がある[33]。色柄はさまざまで、黄色、オレンジ色、緑色などがあり[33]、ハロウィンで使われるオレンジ色のカボチャはこのペポ種である。なお、ズッキーニも同種である。
注釈
出典
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