エネルギー 量子力学

エネルギー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 04:45 UTC 版)

量子力学

量子力学において、物理量可観測量は通常の実数を用いては必ずしも表現できず、演算子を用いて表現される[12][13]。系の力学的なエネルギーは、古典論における解析力学と同様に系全体のハミルトニアンによって表されるが、量子力学ではハミルトニアンは状態ベクトルに作用する演算子となる[14]。測定によって得られる値は、そのハミルトニアンの固有状態に対応した固有値として与えられる[15][注 1]。ある系について、エネルギーを測定できる限りにおいて、エネルギー固有値は実数に限られるため、系全体のハミルトニアンはエルミート演算子でなければならない。

非相対論的な量子力学では、正準交換関係を通じて運動量を演算子に置き換えることで、運動エネルギーは、

と定義される[16]。ここで ^K は運動エネルギー演算子、^p は運動量演算子である。運動エネルギーを表す文字としてはしばしば KT が用いられる。

位置エネルギーも同様に位置演算子の関数に置き換えられる[16]

ここで V, ^V は位置エネルギーおよび位置エネルギー演算子、r, ^r は粒子の位置および位置演算子である。

1 粒子系のハミルトニアン ^H は運動エネルギーと位置エネルギーの和として与えられる。

量子力学においては、古典力学とは異なり、定常状態でとり得るエネルギー固有値 E は非負でなければならず、固有値は必ずしも連続的ではなくなる[5]。エネルギーの値がこのように離散的になることの効果が、特に低温での熱的な性質に顕著に現れる[5]


注釈

  1. ^ 系全体のハミルトニアンの固有状態を特にエネルギー固有状態と呼び、固有値をエネルギー固有値と呼ぶ。エネルギー固有状態とは、エネルギーがある 1 つの値に定まった状態を指し、エネルギー固有値はそのときの系のエネルギーに等しい。
  2. ^ 正確にはその 1/2

出典

  1. ^ a b 小学館『デジタル大辞泉』
  2. ^ a b 岩波書店『広辞苑』、第5版、301頁、「エネルギー」。
  3. ^ 朝永 1981, p. 67.
  4. ^ a b c d 培風館『物理学辞典』(1998)、pp.191-193。
  5. ^ a b c 『世界大百科事典』第3巻、pp.613-615、エネルギー。
  6. ^ : the vis viva dispute
  7. ^ 山本義隆、『古典力学の形成 ニュートンからラグランジュへ』、日本評論社 (1997)、pp.181-184。
  8. ^ 「はじめて学ぶ科学史」p89-92 山中康資 共立出版 2014年9月25日初版1刷
  9. ^ : Helmholtz free energy
  10. ^ : Gibbs free energy
  11. ^ : exergy
  12. ^ 江沢 2002, pp. 112-116, §6.3 観測.
  13. ^ 須藤, 2008 & 12.3 演算子と固有値・固有ベクトル, pp. 177-180.
  14. ^ 江沢 2002, pp. 127-128, §7.1 定常状態.
  15. ^ 江沢 2002, pp. 121-122; 127-128, §6.3 観測; §7.1 定常状態.
  16. ^ a b 江沢 2002, pp. 100-103, §6.1 物理量を表す演算子.
  17. ^ 砂川 1987, pp. 227-229, 第 5 章 マクスウェルの方程式 §2 電磁場のエネルギーと運動量.
  18. ^ 砂川 1987, pp. 74-75, 第 1 章 静電場 §6 静電場のエネルギーとマクスウェルの応力.
  19. ^ 砂川 1987, pp. 227-229; 284-286, 第 5 章 マクスウェルの方程式 §2 電磁場のエネルギーと運動量; 第 7 章 電磁波とその放射 §1 自由空間における電磁波.
  20. ^ 砂川 1987, pp. 111-112; 229-233, 第 2 章 定常電流 §2 オームの法則; 第 5 章 マクスウェルの方程式 §2 電磁場のエネルギーと運動量.
  21. ^ 砂川 1987, pp. 229-233; 284-286, 第 5 章 マクスウェルの方程式 §2 電磁場のエネルギーと運動量; 第 7 章 電磁波とその放射 §1 自由空間における電磁波.
  22. ^ 八坂保能編著『電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで』森北出版、2017年、5-6頁。
  23. ^ 「科学は歴史をどう変えてきたか その力・証拠・情熱」p145-148 マイケル・モーズリー&ジョン・リンチ著 久芳清彦訳 東京書籍 2011年8月22日第1刷
  24. ^ 「科学は歴史をどう変えてきたか その力・証拠・情熱」p160-161 マイケル・モーズリー&ジョン・リンチ著 久芳清彦訳 東京書籍 2011年8月22日第1刷
  25. ^ 「科学は歴史をどう変えてきたか その力・証拠・情熱」p185 マイケル・モーズリー&ジョン・リンチ著 久芳清彦訳 東京書籍 2011年8月22日第1刷
  26. ^ https://www.fepc.or.jp/enterprise/jigyou/world/index.html 「世界のエネルギー消費と資源」電気事業連合会 2019年11月26日閲覧
  27. ^ a b 「エネルギー革命」『世界大百科事典』3、平凡社、615頁。
  28. ^ 八坂保能編著『電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで』森北出版、2017年、6頁。
  29. ^ 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 pp.55–57。
  30. ^ 計量単位令(平成四年政令第三百五十七号)別表第6(第5条関係) 第13号”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2019年12月17日閲覧。
  31. ^ International Energy Agency (IEA). “Unit Converter” (英語). 2012年4月29日閲覧。






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