VHS対ベータマックスとは? わかりやすく解説

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VHS対ベータマックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 16:51 UTC 版)

ビデオ戦争」の記事における「VHS対ベータマックス」の解説

家庭用ビデオレコーダー規格争いとしては、もっとも有名な事例であり、単に「ビデオ戦争といえばVHSベータマックスデファクトスタンダード戦争』を指すことがほとんどである。 家庭用ビデオ最初期には、カセット収納規格として U規格ソニー松下電器(現・パナソニック)・日本ビクター(現・JVCケンウッド)、後に放送用・業務用転用Vコード / VコードII東芝三洋電機オートビジョン方式1973年松下電器VX方式松下寿電子工業(現・PHC)) ベータマックスソニー)・βII採用後ベータ方式呼称 VHS日本ビクター) など、さまざまな規格乱立していたが、開発・販売先行していたU規格カセット大きさ価格の面で家庭用としては普及せず、各社が1/2インチテープを使用する規格構築し家庭用本命」とPRしていた。 1975年ソニー文庫本サイズ媒体用いベータマックス発売したのに対し1976年日本ビクターVHS方式のビデオカセッターHR-3300を発売他社ではVコード開発した東芝三洋が「ベータ方式」に参入当初併売)、オートビジョン方式VX方式開発した松下電器も、子会社であるビクター開発したVHS併売決め最終的には「ベータ方式」と「VHS方式」に収斂されていった結果としてベータ陣営は、ソニー規格主幹として東芝三洋電機NECゼネラル(現・富士通ゼネラル)・アイワ(現・ソニーマーケティング)・パイオニア(現・オンキヨーホームエンターテイメント)が、VHS陣営日本ビクター規格主幹として松下電器産業中心にシャープ三菱電機日立製作所船井電機・ニコン・オリンパス・赤井電機などが、それぞれ加わったソニーベータマックスが「U規格同等性能確保」を意識し基本録画時間1時間(後のβIモード)として画質堅持U規格と同じ形態によるフルローディングとして機能性維持していたのに対しVHS方式では家庭用途を意識して小型軽量低廉テープ市場調査結果基本録画時間を2時間設定した。βⅠモード画質は、VHS標準モード比べS/N解像度数値同等であったが、視覚的に勝っていた。録画時間で劣るベータマックスは、すぐさま2倍モード相当する「βIIモード開発搭載することでVHS方式対抗したが、2倍モード構造的問題(H並び合わないなど)から、再生処理を本来規格から変更せざるを得ず、βIIモード再生処理を基本とした「ベータ方式」として規格再構築し、これを各社採用するとなった最初期のβIをソニー以外の各社サポートしない理由となっている)。 ベータマックス記録モード基本が、テープ速度半減したβIIモードになったことから、画質面ではS/N比は3dBほど劣化しVHSにやや劣ることになった機能面ではVHSはノイズレススロー再生や、ドロップアウト補正機能初期においてリリースしソニー高機能化意図した製品投入したVHS方式は、各技術総動員して目まぐるしいほどの速度画質改善新機能の搭載進んだ。 こうして家電品史上例のない規格対立戦争1980年代まで続くこととなった。しかし、VHS方式ユーザーには録画時間長い点が受け入れられメーカーには使用部品数が少なくコストの面でニーズ合致していた。販売店の多かったVHS陣営1978年度には生産台数ベータ陣営抜き1982年には毎日新聞が「ベータ敗色」と見出しをつけて報じるなど、「VHS勝利」という認識が拡がった。東芝三洋などベータ陣営メーカーVHS方式併売をはじめ、程なくベータ方式新規開発取りやめ、VHSへ完全に鞍替えすることとなったベータ方式規格主幹であるソニー自身も、1988年昭和63年)にVHS併売踏み切りベータ方式事実上市場撤退となったソニーは、その後ベータ方式開発・販売続けていたが、2002年平成14年8月27日に、同年12月31日でベータデッキの生産終了発表市場からの完全撤退となったVHS規格ビデオデッキ世界的に普及することとなり最盛期全世界での普及台数は9億台以上に達したといわれており家庭用ビデオ規格代名詞となった最初の戦いVHS勝利幕を閉じた理由として、以下の理由挙げられる販売戦略による要因当初から、日立製作所三菱電機シャープ松下電器など、家電メーカーこぞって採用していた。なお、国内では初号機2号機限ってビクター国内メーカーOEM行った。、翌1977年には、各社独自性持った製品多数発売はじめたメーカー系列店での購入主だった当時結果としてVHS陣営メーカー系列店の方が多く購入しやすかったこと。VHSビデオ重量は20kg台の前半であり、後に松下幸之助は、ベータ配送を待たなければならないが、VHSは、消費者持ち帰れ大きさであった回想している。 技術的要因規格の基本構造である回転2ヘッドヘリカルスキャンは、昭和34年ビクター発明であった。なお、低域変換カラー漏話除去技術ソニー特許であったVHSでは、精密なヘッドブロックの供給を受ければ、本体カセットデッキ組み立て精度があれば生産できる事を、開発絶対条件としたころから多数メーカー参入しやすかったベータ方式は、機械構造Uマチックスケールダウンとし、クロームテープ使用による性能向上、クロスカラー低減アジマス損失記録基本技術であったが、VHS方式小型化可能なパラレルローディングと、酸化鉄テープ使用大きな相違点であった。これにより、大幅な小型軽量化と、テープ価格低廉抑えられた。またベータの、交流モーター重く時代遅れメカニズム対しVHS小型DCサーボモーター使用硬いクロームテープを使うベータ方式は、ヘッド寿命が短いといったデメリット存在した開発メーカービクターにおいてはノイズ出ないスロースチル製品初期から販売され三菱電機協力による、正逆高速サーチ加わり特殊再生において優位性があった。ドロップアウト補正でも、VHS先行したベータ方式比べ部品数が少なく精密な調整箇所少なかったため、各メーカー参入が容易で量産低価格化がしやすかったこと。小型軽量化が容易であり、ポータブルビデオ市場で、多数メーカー自社生産行ったが、ベータでは、アイワなどソニー系のメーカー製品化したことはあったが、大半ソニーOEMに留まった。 基本規格録画時間長く長時間モード含めて有利だった監視カメラなどのタイムラプスビデオ市場においては基本設計余裕のある、テープ長の長いVHS方式独壇場で、ベータ勝負にならなかった。 ベータ陣営VHS陣営先駆けて投入したPIカラー方式アジマス記録の各技術が、消費者にとって決定的な差別化とならなかったこと。性能重視裏目に出たケース存在したベータHiFi移行ベータ方式初期テープとの互換性なくなったが、VHSは、最後まで互換性維持した。 ベータサイドが普及期大きな混乱招いてしまったこと。テープ表示長さフィート)で表したために録画可能時間分かりにくい記録フォーマットノイズリダクションシステムによっては再生対応機種限られるなど、煩雑難解な要素存在していた。VHSは、S-VHS発売においても、酸化鉄テープ踏襲したことから、テープ下位互換という形で、S-VHSテープVHS記録も可能であり、価格低廉であったVHS開発者OBからは、ソニー高圧的なセールスが、裏目に出たことが述べられている。VHSテープ走行に無理があるという吹聴実際ベータ方式のほうが最狭角部の角度は高い)、VHSヘッド接触部が多くテープ痛みやすい、また1980年代後半には、ベータ相対速度VHSより早い事などをベータ陣営盛んに宣伝していた。ベータhifiは、欧州においてはVHSと同じ深層記録方式採用していたにもかかわらず日本国内ではその事実は知らせずベーターHiFi優越性宣伝していた。 通産省舞台とした日本ビクターへの圧力があり、ソニーVHS開発費用30億円をビクター支払代わりにVHS発売中止するように求めたとされている。真面目な技術者への脅しとも取れるこの経緯は、1970年代にはすでに関係者の間で広まり映画陽はまた昇るでも、この経緯登場するこのような姿勢対し2000年4月放映の、VHS開発扱ったプロジェクトX〜挑戦者たち〜』(NHK)では、シャープ三菱電機日立製作所当時ビデオ担当部長が、真面目に規格広めようとするビクター姿勢評価している。 前述の『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』では、当時日立製作所ビデオ事業責任者が、VHS見たときの衝撃を「これが発売されればベータマックスVコードいちころだ」と日記綴っていたことが紹介されている。松下電器は、1976年副社長の「VHS採用は無い」との発言日経掲載、しかしその後VHSベータ比較行いVHS採用決めたとの流布がある。しかし、同番組では、1975年9月3日松下幸之助ビクター横浜工場VHS試作機見学し、「ベータマックス100点満点製品だ、しかしこのVHS150点だ」「ええもん開発してくれたな」と発言したことが、写真入り紹介されている。松下電器では、それに先立ちビデオ開発中心にいた人物VHS試作機見学して驚いたとされている。これらの史実からは、各社ビデオ現業担当者経営者は、初期段階ベータ勝ち目がないと判断していたことが伺われる。 VHSの方が映像コンテンツラインナップ充実していた。VHS陣営優勢受けて、ビデオソフトメーカーが映像ソフト販売レンタルビデオともVHS一本化したこと。 アダルトビデオ対す見解違いいわゆる裏ビデオは、発売先行していたベータ方式定番であったが、製品版では海外においてVHS陣営がアダルトソフトにも積極的に進出する一方ベータ陣営採算が取れないことから発売少数に留まった。 ソニーベータ苦境見て1984年昭和59年)には、4日連続新聞広告で「ベータマックスはなくなるの?」「ベータマックスを買うと損するの?」「ベータマックスこれからどうなるの?」といった問いかけに「答えは、もちろん「ノー」。」「もちろん発展し続けます。」というキャッチコピー入れ最終日に「ますます面白くなるベータマックス!」という展開で終わる奇抜な新聞広告行ったが、4日継続して読み続けないと、消費者意図上手く理解できない構成だったことが災いしベータ離れがさらに進行する結果となってしまった。 なお規格争い勝利したVHSも、2010年代終末期迎えたパナソニック2012年平成24年)に入ってVHSデッキ日本国内向け生産2011年平成23年限り完全終了した」旨を公式発表。これにより、大手メーカーでのビデオデッキ生産終了したその後ドウシシャ(「SANSUI」ブランド)が再生専用プレーヤー生産終了し最終的に船井電機DXアンテナ)1社がDVDレコーダーとの複合機細々製造するのみとなったが、2016年平成28年7月31日をもって生産終了した多く国家アナログテレビ放送終了しデジタルテレビ放送へと完全移行しており、録画ができるビデオ規格としては、完全に過去のものとなったデジタル放送録画できるVHS派生規格であるD-VHSは、既に製造終了している)。 2006年VHSは、世界的に権威のあるIEEEマイルストーン認定された。日本では八木アンテナ富士山レーダー東海道新幹線クオーツ時計シャープ電卓につぐ快挙であった

※この「VHS対ベータマックス」の解説は、「ビデオ戦争」の解説の一部です。
「VHS対ベータマックス」を含む「ビデオ戦争」の記事については、「ビデオ戦争」の概要を参照ください。

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