釧路川とは? わかりやすく解説

釧路川

タンチョウ舞う大湿原ロマンただようの川
釧路川は、阿寒国立公園一角をなす屈斜路湖に源を発し蛇行続けながら緩流し、弟子屈町中心部貫流して標茶町市街地付近南西転じ釧路平野東部の縁を根室段丘沿って流れ釧路湿原蛇行しながらゆっくり南流し釧路町の岩保木山西麓から新釧路川通って太平洋釧路港外に注ぐ流域面積2,510km2流路延長154kmの河川です。

釧路湿原を流れる釧路川
釧路湿原流れる釧路川

河川概要
水系釧路川水系
河川名釧路川・新釧路川
幹川流路延長154km
流域面積2,510km2
流域内人177,000
流域関係都県北海道

釧路川流域図
○拡大図
1.釧路川の歴史
"大正9年洪水契機翌年から新水事業開始され昭和5年新釧路川誕生し今日釧路地域発展の礎となりましたまた、広大な釧路湿原の自然の洪水調節機能を「横提」により高め釧路市街地を洪水から守ってます。"

釧路川流域発展支えた釧路川

交通路として利用されていた釧路川
釧路川河岸の硫黄精錬所
釧路川河岸硫黄精錬所
釧路川は、古来アイヌ社会では内陸と海を結ぶ交通路として利用されいました寛政11年(1799年)、幕府蝦夷地直轄となった後に、斜里~釧路間の交通確保として旧斜里山道開削が行われましたが、標茶釧路間は依然として釧路川の舟行依存するものでした。釧路川流域は、明治初頭開拓使設置以降標茶町管内での農業弟子屈・川湯地区の温泉開業、川湯の硫黄山から算出する硫黄輸送などにより開拓されきました。この開拓の中で、釧路川は舟運により、上流下流を結ぶ重要な交通路として利用されいましたまた、明治19年北海道庁設置されてから、明治34年標茶町集治監が廃監されるまで、釧路川の浚渫実施されさらには道路工事等への囚人使役により内陸への交通路確保されるなど、釧路川流域開発進められました。

木材の流送
木材の流送
釧路川は木材流送にも利用されており、明治末から大正初年代の釧路は「木処釧路」として広く知られいました木材上中流から釧路流送され、釧路製紙工場輸出用枕木により釧路経済の発展寄与しましたその後大正5年蒸気川舟による標茶釧路水運始まり昭和2年鉄道開通まで釧路川は交通路として利用されいました

■釧路川の治水対策
新釧路川誕生の瞬間
新釧路川誕生瞬間
本格的に治水対策なされたのは大正中頃で、当時釧路川の支川であった阿寒川支流の中で最も土砂流出していたため、釧路港内への流入土砂抑制策として、大正6年現在の新釧路川地点流路変更して水系分離行いましたしかしながら大正9年8月未曾有の洪水は、高台を除く釧路市一帯甚大な被害与えており、これを受けて大正10年、釧路川常呂川治水事務所釧路市開設され本格的な治水工事開始されました。この治水事業では、おおよそ10年歳月をかけて岩保木より太平洋新水路が掘削され昭和5年10月新釧路川誕生しましたその後昭和20年代中頃までに上流標茶弟子屈地区にて捷水路掘削護岸工事が行われました

釧路遊水地
釧路遊水地
戦後混迷期終え、釧路川流域では、開拓事業および土地改良事業積極的に実施されました。そこでは、酪農主体営農確立強く推進されており、5000ha以上の農地造成土地改良が行われましたそれに伴い、釧路川の築堤護岸による洪水被害軽減並びに捷水路掘削等による水位低下目的とした事業が行われ、農業生産性の向上が図られました。
釧路川の特徴となる釧路湿原は、天然遊水地として洪水調節機能持ってます。現在では、さらに下流域流下能力見合った調節実現するため、河道狭窄する「横堤」を設置し遊水地効果高めてます。
2.地域の中の釧路川
"近年タンチョウ等のすむ釧路湿原面積は、著しく減少しており、そのため、釧路川では、地域住民NPO、関係行政機関専門家等で構成する釧路湿原自然再生協議会」を開催し官民一体となった自然環境保全再生進めてます。"

地域住民と一体で守る釧路川

■川とのふれあい憩いの場
釧路湿原含めた釧路川流域では、地域住民による良好な河川環境づくり貢献するボランティア活動や、子供たち良好な自然と触れ合い体験する機会となるイベントが行われています。また、訪れ人々釧路湿原雄大な景観触れることや湿原内を蛇行する河川川下りすることができることから、釧路川流域は、観光資源として重要なものと位置付けられています。さらに、釧路市標茶町区間における釧路川の河川敷は、河川緑地としてグランド遊技広場、カヌーポートとして整備されており、地域住民憩いの場として活用されています。

新釧路川の河川緑地カヌー川下り
トマトハウス栽培カヌー川下り


みんなで守り学べる釧路川
川レンジャーによるゴミ拾い
レンジャーによるゴミ拾い
釧路市釧路町標茶町鶴居村などの住民から構成され釧路湿原良好な河川環境づくり貢献するボランティア活動目的とした「釧路湿原レンジャー」が平成12年度より発足し事務局釧路開発建設部)、植樹祭ゴミ拾いなど、積極的な活動が行われています。
また、釧路湿原国立公園連絡協議会主催される「こどもレンジャー」では、湿原への移入種エゾシカについての調査学習会のほか、クリーンウォークなどの奉仕活動が行われており、さらには釧路国際ウェットランドセンターにおいて、関連団体との共催で釧路川の河川環境観察会も実施されています。なお、釧路市からは「釧路湿原で学ぶ」と題した修学旅行のための手引きが編集・発行されています。

■釧路川と文学
更科源藏文学碑
更科源藏文学碑
釧路川が文学素材として取上げられた例は非常に多く明治以前探訪記や日記類にも登場しており、大正時代に入ると、文人墨客の来釧が急激に増え紀行文短歌、俳句などにしばしば釧路川が登場しますまた、この頃から地元の作家詩人によっても多く取上げられ、その最も代表的なのは「原野詩人といわれる更科源蔵氏です。著書の「熊牛原野」には往時流送洪水時には密漁のことなどが、社会風刺的に、しかも歴史的に語られています。

釧路湿原本来の姿蘇らせる川づくり
釧路湿原自然再生協議会の様子
釧路湿原自然再生協議会様子
釧路湿原は、我が国最初ラムサール条約登録湿地であり、タンチョウキタサンショウウオはじめとする多様な野生生物貴重な棲み場となってます。しかしながら近年流域の経済活動拡大に伴い湿原面積著しく減少し湿原植生もヨシ・スゲ群落からハンノキ急激に変化してきています。このような問題対処しつつ、貴重な財産である釧路湿原を守るため、平成13年には「釧路湿原河川環境保全に関する提言」が提起されました。この提言を受け、新たな枠組実施される自然再生事業では、事業妥当性透明性保ちつつ、これを円滑に進めるため、地域住民NPONGO地方公共団体、関係行政機関専門家などで構成する釧路湿原自然再生協議会」が設立されました。そこでは、関係機関連携協働強めとともに地域多様な主体参加による合意形成に基づく事業推進目指しています。
3.釧路川の自然環境
"屈斜路湖流れ発する、釧路川の豊かで穏やかな流れは、釧路湿原優れた自然環境と共にタンチョウキタサンショウウオなどに代表される貴重な生物育み訪れ人々大自然豊かさ実感させるものです。"

幾多生命育む釧路川

■釧路川の地勢
屈斜路湖
屈斜路湖
湿原内を蛇行し流れる釧路川
湿原内を蛇行し流れる釧路川
釧路川は、阿寒国立公園内に位置する屈斜路湖水源に、釧路地方南下し太平洋へ注ぐ一級河川です。その流路延長は154km、流域面積は2,510km2で、人工的なダムや堰が存在しないという日本では数少ない河川です。
流域の地形地質は、上流域屈斜路摩周火山群分布する火山地帯であり、主として火山岩類から構成されています。中流域丘陵台地流域2/3占めており、地質としては、火山砕屑物主成分となってます。下流域沖積低地海岸砂丘釧路湿原といった標高10m以下の領域占められ地質時代では現世沖積世と言われる最も新し時代堆積物構成されており、地表厚さ2~4m低層泥炭により覆われています。特に流域最大特徴となる釧路湿原は、天然記念物及びラムサール条約登録地国立公園指定されるなど、国際的に注目されています。
釧路川上流部には天然ダムとなる屈斜路湖中下流部に遊水池となる釧路湿原があるため、河川流況としては平水渇水流量比較大きく安定した穏やかな特性示してます。


■釧路川の植物
ヨシ・スゲ群落とハンノキ林
ヨシ・スゲ群落ハンノキ
流域植生は、下流域広がる湿原ではヨシ・スゲ群落大勢占めヤチハンノキ等の小低木群落点在します。中流部丘陵地帯ミズナラ等の広葉樹林帯であり、標高高くなるにつれてダケカンバトドマツエゾマツ加わり針広混交林となります上流域ではトドマツエゾマツなどの針葉樹林となり、最上流の川湯地区の硫黄山麓では、ハイマツイソツツジガンコウランなどの高山性植物見事な景観呈してます。


■釧路川の動物
流域一帯にはエゾシカ分布しているほか、上流域山岳地帯にはヒグマ生息してます。釧路湿原その周辺では、国内唯一繁殖しているキタサンショウウオ特別天然記念物であるタンチョウなどの貴重な生物生息しており、塘路湖では釧路川の歴史物語るクロイサザアミが確認されています。河跡湖池塘などで形成される止水環境においては水生植物イヌイトモトンボ類のイイジマルリボシヤンマに代表される国内でも生息地限られる動植物極めて貴重な生息生育環境維持されています。また、釧路川には幻の魚と言われるイトウ生息するほか、サケマスシシャモ遡上産卵し、この地域では、塘路湖ワカサギとともに、これらの増殖事業力を入れてます。

タンチョウキタサンショウウオイトウ
タンチョウキタサンショウウオイトウ
4.釧路川の主な災害
"釧路川の主要な洪水は、戦前では大正9年8月低気圧もたらした洪水で、新釧路川開通前下流部釧路市街地が浸水しました。戦後では、昭和35年3月高温大雨による融雪出水により、浸水家屋2204戸を生じた洪水あります。"


釧路川の主要な洪水は、戦前では大正9年8月低気圧もたらした長雨による洪水あります当時新釧路川開通前であり下流部釧路市街地が浸水しました。戦後では、昭和35年3月低気圧による高温大雨によって融雪出水生じ床下浸水1482戸、床上浸水722戸の被害もたらした洪水あります

発生発生原因被害状況
大正9年8月低気圧死者行方不明 11
負傷者 2名
家屋流出 39
全壊 18戸、半壊 5戸、
床上浸水 1437戸、床下浸水 701
昭和35年3月低気圧による
高温大雨
床上浸水 722戸
床下浸水 1482戸
昭和50年5月低気圧床下浸水 2戸
昭和54年10月台風20号床上浸水 109
床下浸水 256


大正9年8月の大洪水(釧路)昭和35年3月洪水(標茶町)
大正9年8月大洪水釧路昭和35年3月洪水標茶町
昭和50年5月洪水(弟子屈町)昭和54年10月洪水(弟子屈町)
昭和50年5月洪水弟子屈町昭和54年10月洪水弟子屈町

(注:この情報2008年2月現在のものです)




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