生物医学
生物医学(英語: biomedicine)または西洋医学(英: Western medicine)、主流医学(英: mainstream medicine)、通常医学(英: conventional medicine)とは[1]、医療科学(medical science)の一分野であり、生物学的および生理学的な原理を臨床に応用しているもの[注 1]。生物医学は、生物学的研究によって検証され標準化された根拠に基づく治療(エビデンスベーストトリートメント evidence-based treatment)を強調している。その治療は、正規の訓練を受けた医師、看護師、その他の免許を持つ施術者が行う[3]。
また生物医学は、健康や生物学に関連する分野の他の多くの範囲と関連し得る。西洋世界では1世紀を越えて、優勢な医学の体系であり続けてきた[4][5][6][7]。
生物医学は多くの生物医学的(biomedical)な学科や専門領域を含んでおり、それらは典型的には「生物(bio)―」という接頭語が入っている。例えば分子生物学、生化学、生物工学(バイオテクノロジー 生物技術)、細胞生物学、発生学、ナノ生物工学、生物工学(バイオエンジニアリング)、実験生物医学、細胞遺伝学、遺伝学、遺伝子治療、生物情報科学(バイオインフォマティクス)、生物統計学、システム生物学、神経科学、微生物学、ウイルス学、免疫学、寄生虫学、生理学、病理学、解剖学、毒性学があり、他にも多数の分野が一般的に生命科学を扱っていて医学に応用されている。
関連項目
脚注
注釈
- ^ 日本臨床薬理学会の論文:
出典
- ^ "Biomedicine." NCI Dictionary of Cancer Medicine. National Cancer Institute.
- ^ 兵頭 2006, p. 27S.
- ^ Quirke, Viviane; Gaudillière, Jean-Paul (October 2008). “The Era of Biomedicine: Science, Medicine, and Public Health in Britain and France after the Second World War”. Medical History 52 (4): 441–452. doi:10.1017/s002572730000017x. PMC 2570449. PMID 18958248 .
- ^ Johnson, Suzanne Bennett. "Medicine's Paradigm Shift: An Opportunity for Psychology." APA Monitor on Psychology 43.8 (September 2012)
- ^ Wade DT, Halligan PW (2004). “Do biomedical models of illness make for good healthcare systems?”. BMJ 329 (9 December 2004): 1398–401. doi:10.1136/bmj.329.7479.1398. PMC 535463. PMID 15591570 .
- ^ George L. Engel (1977). “The Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine”. Science 196 (4286 (Apr. 8, 1977)): 129–136. Bibcode: 1977Sci...196..129E. doi:10.1126/science.847460. PMID 847460 .
- ^ Lloyd, Hilary, Helen Hancock, and Steven Campbell. Vital Notes for Nurses: Principles of Care. Oxford: Blackwell Publishing (2007). 6. is
参照文献
- 兵頭, 一之介「1.我が国のがん代替医療の現状と問題点」『臨床薬理』第37巻第2号、日本臨床薬理学会、2006年3月31日、27S-28S、doi:10.3999/jscpt.37.2_27S。
近代医学
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化学や研究技術・施設の発展により、医学は19世紀以降に大変革を起こした。伝染病についての旧来の考えは、微生物学とウイルス学に取って代わられた。 細菌と微生物が最初に観察されたのは、1676年、アントニ・ファン・レーウェンフックによる、顕微鏡を使った観察であった。これにより微生物学という科学領域が始まった。 イグナーツ・ゼンメルワイス(1818年-1865年)は、1847年、分娩に立ち会う前の医師に手の洗浄を義務づけるだけで、産褥熱による死亡率を劇的に下げた。ゼンメルワイスの発見は、微生物病因説に先立つものだった。しかし、ゼンメルワイスの発見を同時代の医師らは受け入れず、彼を迫害した。ゼンメルワイスの発見が一般的に活用されるようになったのはイギリスの外科医ジョゼフ・リスター以後であった。リスターは1865年、傷の手当てに対して殺菌剤の原則を示した。しかし19世紀の間、医学的な保守主義のために、ゼンメルワイスとリスターの研究は一般に受け入れられはしなかった。ルイ・パスツールの発見はゼンメルワイスの研究を支持した。微生物と病気とを結びつけて考えたパスツールは、医学に大変革をもたらした。パスツールはクロード・ベルナールとともにパスチャライゼーション(低温殺菌法)を考案した。これは現在でも使われている。パスツールの実験によって病原菌説が立証された。またベルナールは医学における科学的方法を作り上げるために、1865年、『実験医学研究序説』を発表した。パスツールは、ロベルト・コッホ(1905年にノーベル生理学・医学賞受賞)とともに微生物学を作り上げた。コッホはまた結核菌(1882)・コレラ菌(1883)の発見およびコッホの原則を作り上げたことでも有名である。 医学上の治療における女性の参加(助産婦・家政婦は除いて)はフローレンス・ナイチンゲールなどによりもたらされた。ナイチンゲールらは、それ以前男性が支配的だった医療分野に、看護の基本的な役割を示した。すなわち、衛生・栄養状態の不備による患者の死亡率を下げたのである。ナイチンゲールは1852年、クリミア戦争後の聖トマス病院に勤務した。エリザベス・ブラックウェル(1821年-1910年)は、アメリカで正式教育を受けて医学を実践した最初の女性となった。 第一次世界大戦などの大規模な戦争状況により、体内機能の監視のためX線(ヴィルヘルム・レントゲン)や心電図(ウィレム・アイントホーフェン)を使用することが増えた。大戦間にはこれらに続いてサルファ薬などの選択的殺菌薬が初めて開発された。第二次世界大戦では、広い範囲で効果的な殺菌療法がみられた。これはペニシリンの開発および大量生産によるもので、戦争上の圧力およびイギリスの科学者とアメリカの製薬産業の協力によって可能になった。 産業革命期には、癲狂院が目立った。エミール・クレペリン(1856年-1926年)は精神疾患に関する新しい医学分野を導入した。この医学分野は、病理学や病因論ではなく行動がその基礎となっていたにもかかわらず、最終的に精神医学と呼ばれるようになった。1920年代のシュルレアリストは、出版物の中で精神医学への反対を表明した。1930年代には、導入されたいくつかの医学的療法が物議をかもした。この中には発作を誘発するもの(電気けいれん療法、インスリン等の薬物療法)や、脳の一部切除(ロボトミー・ロベクトミー)などが含まれる。どちらも精神医学上広く用いられたが、基本的な倫理、有害な効果、誤用などに対する懸念や反対の声もあった。1950年代にはクロルプロマジンなどの新しい精神医学上の薬が研究所で製作され、こちらの使用が徐々に好まれるようになった。これは通常進歩と考えられているが、遅発性ジスキネジアなどの深刻な副作用を理由に反対する声もある。患者が精神医学上の監督に従わない場合、治療法に抵抗を示して薬を飲まないことはしばしばあった。また精神病院に対する抵抗も強くなり、精神医学上の監督外で、ユーザー主導の協力グループ(治療共同体)によって社会に復帰させる試みも現れた。ロボトミーは、1960年代以降の反精神医学運動の中で批判されていたにもかかわらず、統合失調症の療法として1970年代まで使用された。
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