近代史文庫と地域史研究・地域社会史論
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「篠崎勝」の記事における「近代史文庫と地域史研究・地域社会史論」の解説
近代史文庫は、史料の掘り起こしと共同利用を重視して、1960年から『愛媛近代史料』の刊行を始め1998年までに36冊を、また『愛媛現代史料』は1967年から2013年までに5冊を刊行している。会員や研究者での資料の共有をめざしたのである。その上で、研究発表の場として機関誌『愛媛近代史研究』を1963年に創刊して、2020年までに74号を刊行してきた。さらに、明治100年にあたる1968年『愛媛資本主義社会史』第1巻を刊行した。愛媛の近現代史(1830年~1970年)を、戦前3期・戦後3期合わせて6期に時期区分して、全巻42巻の壮大な構想の中で、第1期7巻の第1巻であった。『愛媛資本主義社会史』は、今日、第3巻まで発行されたのみである。 篠崎勝は、地域史の実証研究とあわせて、1960年代以降、繰り返し地域社会史の研究方法について論じてきた。『愛媛近代史研究』創刊号(1963年)に発表した「地域社会の歴史研究」の発表以後、「地域社会史の創造」(『愛媛資本主義社会史』第1巻)に続き、会員との論議をふまえて、地域社会史論考綴を連載してきた。その上で、1981年「地域社会史のすすめ」を『歴史学入門』(高橋磌一編)に発表してひとつの到達点に達している。「郷土史」「地方史」を克服する「地域社会史」の方法を確立したと言える。その方法について、かみ砕いて次のように言っている(「地域社会史のすすめ」)。 私たちは、いま、ここに、みんなで、生き、住み、働き、学び、たたかう者である、という自覚と、民衆の要求には、つねに正義と道理がふくまれている、という確信をもって、地域住民の歴史を、記録し、分析し、語り伝える″人民の記録係″をつとめたいと念願し、そのときどきの、ところどころの民衆が、住んで働いて学んでつくりだし、のこしたたくわえとかてを、見つけだし、うけついで、ふやすとともに、そのときときの、ところどころの支配者が、住んで働いている民衆を支配するためにつくり出したしくみと、ものの考え方を、つきとめて、つくりかえていきたい、と思っている。そのために、私たちは、各時代・各時期・各地域の住民社会のあり方・しくみ・動き方と、国民社会(民族社会)、人類社会のあり方・しくみ・動き方とのかかわり合いをつきとめ、地域住民のくらし、考え方、動き方と、各時代・各時期・各地域の生産のしくみにもとづく身分・階級・階層や政治・思想・信仰・民俗のあり方とのかかわり合いを明らかにすることが必要だと思っている。 私たちは、そう考えて、いまここに住んでいる者が、ここまたはそこの歴史を、ここまたはそこの民衆が、ここまたはそこを変えていく主体(担い手)として成長する道すじを軸にして、掘りおこし、教え伝えることを通して、私たちが、ここを変えていく主体に成長することによって、ここまたはそこの歴史を創り出していくための地域社会史の研究、教育活動を、広くて深い地域住民自治運動の一環として進めたい、と思っている。
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