警視庁特殊資料整理室
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 07:56 UTC 版)
警察によって妖魔に対抗するために結成された日本唯一の公営退魔組織。様々な異能を操る人間たちによって構成されているが、ほとんどが妖魔との戦闘に向かない能力のため、有名無実の見本として扱われている。組織名が長々として役割がわかりにくいのは、退魔組織であることを隠すためでもあるが、「死霊」と「資料」をかけたものという噂もある。公的な立場としては刑事だが、刑事として訓練をしていないので尾行はあまり上手くない。2巻では様々な術を駆使して操の居場所を探したりしていた。メンバーの充填は、霧香や和泉のように術者から引き抜かれるケースもあれば(ちゃんと試験は受けて公務員の資格を得ている)、新人警察官から素質を見出して強制入隊させるケースがある。風牙衆滅亡後、神凪は情報収集を特殊資料整理室に頼っており、整理室も実績を作るため、何かあれば神凪宗家に退魔を依頼し情報提供している。そのため両者の関係は非常に良好と言える。ただし「深淵の水龍」では、重悟は「身内と外部では連携に差が出る」ことから風牙衆の復活を考えている。 橘 霧香 (たちばな きりか) 声 - 大原さやか / 小林優子(ドラマCD版) 「特殊資料整理室」の二代目室長(現実での警察で言えば課長となる)。階級は警視。年齢不詳の20代半ばの美女。身長約165cm(アニメ版設定資料)。2巻から登場。 陰陽道の名門・篁(たかむら)一族の分家・橘家の陰陽師。本家を凌ぐ実力の持ち主であったために疎まれ、更に他流の術を節操なく取り込んでいたため、宗家の老人達から反感を買っていた。結果、特殊資料整理室の室長に就任という名目で追い払われてしまった。 「利用できるものは何でも利用する」のが信条で、そのため流派のプライドを持たず、他流の技だろうと平気で利用する。それが霧香の強みとも言える。そこが由香里と共通するため、奇妙な師弟関係を築いていた。 黒のGT-Rを愛車として使用しているが、これは整理室の公用車である。しかし、誰にも決してステアリングを握らせず、実際には公費を乱用して好き勝手に改造しまくった公私混同の見本のような車だったりする。 原作では、普段は真面目な性格の苦労人だが綾乃と絡むと弄り倒すキャラに変貌する。アニメでは場を引っ掻き回すキャラとしての振る舞いが強く描かれている。コミカライズ版では崩れ顔になることもあった。 上司である後述の刑事部長からはセクハラと叱責の混じった嫌みを聞かされており、その際は夜叉にも似た凶暴性を見せており、話しかけることができたのは空気を読めなかった大樹くらいであった。危うく大樹に八つ当たりしそうになったが久米老人のセクハラにより冷静さを取り戻し折檻を加えた。 良くも悪くも公僕であり、媚びを売る相手とその必要がない相手はしっかり区別しており、対応の差も激しい。 基本的な戦い方は、呪符を媒介に術を発動させるというもの。人間に憑依した悪霊や微弱な妖魔を祓うことが可能だが、呪符がなければ術が発動できないのが難点。そのため人海戦術や長期戦に弱い。しかし術者としての力量は本物で、世界一の魔術師と謳われるヴェルンハルト・ローデスの張った大規模な結界を、不完全な状態だったとはいえ一角だけ破壊するという実力を見せた。和麻曰く「今の陰陽師で霧香より腕の立つ奴はいない」とのこと。 ほか、陰陽道では用いることのない「早九字」という呪法を習得している。右手で空を切るだけで素早く術を起動させられるだけではなく、片手の自由も利くという利点がある。 ロナルド・ウォレスによって死霊に取り付かれ、身体能力の増した人間を適当に捌いていたことから、体術もなかなかの腕前の模様。 研修時代の2年前ロンドンで和麻と出会っているが、当時の和麻は文字通り復讐の鬼であり、そのあまりの力と非情さに恐怖しか感じなかったという。現在の和麻とは仕事の関係もあって仲が良く、食事をしたりデートしたりする(和麻とは「休憩(深い意味はない)のためにホテルに入ったりする」間柄)。煉とは談笑するくらいには仲がいい。 当初は綾乃から「無能だったから閑職に左遷された女」と見られていたが、和麻から事実を聞かされ、また彼が術者として賞賛し、プライベートでもしばしば一緒に行動することから、嫉妬する綾乃からは対抗意識を向けられ、きつく当たられている。しかしヴェルンハルトの結界を破壊した際は、綾乃も素直に「おみごと」と評した。よく綾乃をなだめたり、時にはからかって余計な火種を撒いたりしている。似たような性格の由香里とは奇妙な師弟関係を築いており仲はいい様子。また神凪宗主へのご機嫌伺のため神凪邸を訪れた際に煉とも談笑していた。 アニメ16話では厳馬を伴って温泉に来ており、一緒に混浴に浸かったり、「厳馬様と不倫旅行♪」と大ウソをついて綾乃と煉を動揺させている。 2巻では重悟から要請を受けたことで操の捜索に当たっていた。操の居場所を察知すると、教会付近に結界を張って逃げ場を封じた。しかしミハイルの転移術を封じるほどの精度はなかった。4巻のラピス戦では綾乃の援護には回れず、傍観している。綾乃から「和麻なら援護をしてくれる」と叱責されそうになったが、彼女も人類に和麻のレベルを求めることの愚かさに気づいて撤回していた。霧香自身も綾乃の戦いに加われないことを恥じていない様子であった。 当初はパンツスタイルだったが、後にイラストレーターによりタイトのスカートに変更された(理由はこちらの方が描きやすいから)。これはアニメ版にも反映されている。コミカライズ版ではパンツのまま。 技一覧 浄化 呪符を投擲して接触した霊的存在を成仏させる。ロナルド・ウォレスが操る死霊から一般人を助けるために使用。 早九字 陰陽道ではなく修験道の術。九字の呪法と呼ばれるものの簡略版であり、片手で刀印を行うことで魔を打ち払う術を発動させる。作中ではヴェルンハルトが張った結界に穴を開けるために使用した。 倉橋 和泉 (くらはし いずみ) 声 - 渡辺明乃 階級は巡査部長。少しきつい感じの美女。推定20代前半。身長163cm。 霧香と同じく橘の分家出の陰陽師。霧香が「特殊資料整理室の室長に就任」した際、その巻き添えで整理室に飛ばされた。 霧香の片腕と称されることが多いが、本人は「片腕」と呼ばれるのを嫌がっている。セクハラへの反撃とはいえ前室長の頭目掛けて躊躇なく銃をぶっ放すなど、性格はかなりバイオレンスである。 房中術を利用した封印を用いて熊谷の第二人格を閉ざしている。綾乃の推測によれば、相手の意志を無視して房中術を行使することで一方的に力を奪い、そうやって弱らせた上で封印するというものらしい。その他、内海の呪詛を呪符を用いて阻止しようとしたり、呪符を展開して七瀬の安全を監視していたが和麻の妨害により失敗している。戦闘能力に関してはサトリから「高度に精錬されている」と述べられている。 術者としては一流で、霧香の信頼も篤く、仲が悪いわけではない。熊谷(後述)の能力が、彼女の房中術によって管理されている関係で、彼とコンビを組まされることが多い。その熊谷にはまるで下僕でも扱うかのような態度で接するが、こちらとも決して仲が悪いわけではない。熊谷の封印を解くたびに「もう一人の人格を封印できる唯一の人文である自分は殺されるのではないか」と恐怖を感じていた。しかしそれを聞いた熊谷は「もう一人の自分もボクには変わりないから、絶対に貴方を傷つけることはありえません!」と言い返され赤面した。事実、崩壊する屋敷から和泉を守ったり、自分のPKが和泉に当たりそうになったときは無理やり捻じ曲げてかばったりしている。作者曰く「最強のバカップル」。 内海に狙われている七瀬を守る任を受け、監視を行っていたが呪詛を防いだところで和麻に妨害され、七瀬を連れ去られてしまう。その後、和麻から接触されたが禍々しい雰囲気から味方ではないことを察知し、詰問するも「お前は邪魔だな」の一言で気絶させられてしまう。アニメでも出番はあるが余り本編に絡んで来ない。 技一覧 呪符 効果は不明だが攻撃のためサトリに投げつけて使用している。 5巻では内海の呪詛を防ぐため、七瀬の十二方位に呪符を張り結界を展開した。しかし呪符を破壊されると効力を失うという欠点がある。 呪詛返し(仮称) 内海を素人と侮っていた時に紹介された術。倍加した呪詛を跳ね返された術者は、「人を呪わば穴ふたつ」を体現することになる。和泉は呪詛から念の糸を辿り、術者の居場所を逆探知することもできる。 房中術 性魔術の一種。男を陽、女を陰に見立てセックスによって陰陽を合わせ太極に至ることを目指す術。和泉は一方的に熊谷(の第二人格)とセックスを行うことで力を搾取し、弱めることで封印に利用しているという。 封印解除 熊谷の第二人格を解放する際に使用する。こちらは封印の解除だけなのでセックスの必要はない。 捕縛陣 対サトリ戦で使用しようとした術。妖魔の動きを制するものなので人間に効果はない。サトリには見破られており、陣の完成直前に回避されてしまった。 熊谷 由貴 (くまがい ゆき) 階級は巡査。女性みたいな名前だが、2メートルに届こうかという長身で立派な体格の男性。 物理的ではあるものの強力なPKに目覚める。しかし穏やかで争いを嫌う熊谷ではその力を使いこなせず、力の講師を第二人格に委ねてしまう。二重人格になった際に居合わせた和泉が封印している。以後、二人はコンビとして様々な任務に当たることとなる。 見かけに反し、性格はいたって温厚で弱気。和泉からはさんざん罵倒されている。しかし封印されている第二人格は逃走を小野が存在意義とする悪鬼羅刹の類。 彼の能力は強力なPKで、スプーンを曲げるとかのレベルではなく、10メートル先の戦車の正面装甲を打ち抜くほど戦闘に特化した強力なもの。しかし、彼の穏やかな性格が災いし、その能力を使いこなすためには別人格を呼び出す必要がある。そちらの人格は「殺戮を己が存在意義とする、悪鬼羅刹の類」であり、その人格が生まれた際に、居合わせた和泉に封印される。以来、和泉の手により二重人格が解放されたり、房中術によってまた封印されたりを繰り返している。その和泉とは「二重人格だろうと、あれは僕だから、あなたを傷つけることなんて、絶対にありえません」という関係。戦闘能力はかなり高いが、しょせん物理法則を超えるものではないため、精霊魔術には敵わない。綾乃と一戦交えるが、物体である念動力は炎で燃やされてしまうため、敗北を喫した。 和泉からは虐待に等しい仕打ちや暴言などを吐かれており、熊谷自身も不愉快そうではあるものの両者の関係は良好である。表には見せないが和泉は熊谷を愛しており、熊谷もまた和泉のことを憎からず思っている。しかし和泉には「第二人格を封印できる自分は邪魔者だから、封印を解くたびに殺されるのではないか」と思われていた。そのことを聞いた熊谷は「あれも同じ僕だから貴方を傷つけるなんてありえない」と答え、和泉から寄り添われ仲を深めている。熊谷の言うことは事実であり、不器用ではあるものの初登場時から第二人格の彼は和泉を守っていた。初登場となる盾博士の邸宅では、彼女を抱きかかえ崩落に巻き込まれないようにしたり、サトリ戦では彼女にPKが当たりそうになったため強引に捻じ曲げ、その影響で戦闘不能になっている。 番外編のみの登場で本編には絡んで来ない。ただし相棒の和泉は本編に登場している。 石動 大樹 (いするぎ だいき) 声 - 田坂秀樹 階級は巡査。23歳。身長163cm。あまりの童顔のためどう見ても警察官には見えない。アニメ版では、中肉中背の優男風に描かれている。 術者の家系の出ではなく、父と兄は普通のサラリーマン、母は専業主婦。「おまわりさん」に憧れ、そこそこの私立をそこそこの成績で卒業し、普通に採用試験を受けて警察官となった。しかし潜在的に異能を秘めていたため、霧香に目をつけられてしまった非常に不幸な新人。 どちらかと言えば臆病で精神的にもろいタイプ。余所行きの顔の綾乃を見てドギマギするなど女性慣れしていないのが窺える。また霧香が刑事部長のセクハラ説教で鬼女化していたことに気づかず声を掛けてしまうなど空気が読めない。 実際、警官としては無能というほかなく、日常生活でもたいへん運が悪い。しかし、致死レベルの外的要因がふりかかるとその不幸のベクトルが完全に逆転し、異常な程の強運でそれを回避する「災厄へと至る奇跡(ミラクル・イン・ディザスター)」という能力を持ち、さらにその危険が確率操作で対処できる限界を超えると、その要因を問答無用で異次元の彼方に追いやってしまうという凄まじい能力「悪魔喰らい(デモン・イーター)」を発動する。しかし、自身で制御できず、死にかけるほどの危機に陥らないと発動しないため、死ににくい能力であるにもかかわらず死にかけることが多い。この凄まじさと死ににくさが相まって「危険があったらとりあえず大樹を放りこめ」という使い方をされる。6巻では先輩の志門とコンビを組んでいる。 アニメでは上記の異能設定は描写されず、ガルムに襲われた際は和麻に助けられている。またアニメでは出番も少ない。 志門 勇人 (しもん ゆうと) 特殊資料室きっての美男子。長身。 しかし性格はいい加減で、女好き。小雷まで色目を使っている辺りストライクゾーンはかなり広い模様。なにかと仕事をさぼろうとしては後輩の大樹にまで文句を言われている。人を食ったような言動をとる。 彼の能力は「ジークフリート」と名付けられているが、詳細は不明。胸のど真ん中を水の槍で貫かれ大量出血していても平然としていた。本人曰く「必殺、死んだふり」。資料集「超解!風の聖痕」では「不死身?の肉体を持ち死んだフリが上手い」と記されている。 クリスと遭遇した際は上述の能力で騙し、結果的に大樹を救った(クリスは殺すのは一人と決めていたため)。 6巻から登場し、大樹とコンビを組んでクリスティアン・ローエングラムとガイアの捜索を行っていた。終止不真面目で女好きのため大樹からは軽蔑されている。
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