風術師:風牙衆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 07:56 UTC 版)
神凪に仕える下部組織で、20名ほどの風術師で構成されている。表向きには神凪一族と祖を同じくするとされているが、実際は数百年前の江戸時代に金で何でも請け負う闇組織に過ぎなかった。幕府の依頼を受けた当時の神凪一族によって討伐され、風牙衆の力の源であり彼らが神と崇める超越存在(アニメ版ではゲホウと呼ばれる妖魔)を封じ込められてしまった。結果、戦闘能力が急落した風牙衆を神凪一族が「自分達に欠けている探索能力を補い、同時に自分達の火を煽る事の出来る便利な道具」として吸収した。それ以来は主に神凪一族専属の諜報や後方支援を担っているが、その扱いは奴隷同然の様な状態で、和麻からも「あれでは反乱も起こしたくなるだろう」と内心同情されるほどだった。アニメ版では屋敷に住んでいることが語られており、神凪から住居を提供されていたようである。戦闘能力こそ低いが、風術師としてはかなり優秀な組織で、その点は壊滅後に和麻からも言及されている。風牙衆壊滅後は神凪一族の情報網はほぼ壊滅状態に陥っており、情報網を求めた結果、警視庁特殊資料整理室との関係が生まれることになる。 風巻 兵衛 (かざまき ひょうえ) 声 - 稲葉実 1巻に登場。風牙衆の長。1巻における黒幕。 平素は神凪一族に対する忠心を装うが、腹の底では風牙衆一族の悲願である神凪への復讐の念を募らせており、風牙衆の力の源であり彼らが神を蘇らせようと企む。 原作では老人と描写されており、口調もそれに見合ったものだった。アニメ版では厳馬や重悟と同世代くらいの中年として描かれている。また煉に和麻の宿泊先のホテルを教え、後の誘拐計画に利用するという策士としての一面も見せた。 表立って堂々と風牙衆を見下していた分家はもとい、特に宗家の厳馬と重悟を深く憎んでいる。穏健で流也の容態を気にかけていた重悟まで憎む辺り、兵衛こそ「古き因習」に取り付かれている節があった。 その目的は「神凪の滅亡」。超越存在である「神」を復活させ、神凪を滅ぼすための力を得ようと画策する。復讐の前準備としてひとり息子の流也に上級妖魔を憑依させ、契約によって自身も下位妖魔を従える権限を得た。流也のことは「病気のため療養中」として人目につかせないようにしていた(「超解!」によれば本当に病弱だったとのこと)。そして和麻が帰国したのを機に、流也の風術で神凪の術者を殺害させ、その罪を和麻になすりつけた(ただし、神凪一族宗家出身者でありながら、神凪一族から激しく迫害されていた和麻本人に対しては唯一憎悪は向けておらず、むしろ自分達と同じ神凪の「力に奢る者の傲慢」を身を持って知る同士とも見ていた。そのため、和麻に関しては本来こちら側の人間との感情も持ち合わせていた。しかしこれらの内容は、自身の陰謀を隠すためのスケープゴートとして利用した挙句、和麻に追い詰められた際に発した命乞いの言葉である)。 息子を手駒としているだけではなく自分自身をも妖魔化させている。更には歯向かう風牙衆も洗脳し駒とした。神凪への復讐のためには自己犠牲すらもいとわず、徹底して力に固執した考えを見せている。神凪の炎を「浄化の炎」とたとえており、同じく風牙の風を「穢土の風」とたとえている。「俗世にまみれ、我欲を満たすが我らの正義!」と主張しており、そのためには息子のひとりふたり悪魔に売り渡すくらい惜しくないと豪語していた。 煉を神の復活の生贄に捧げようと刺客に拉致させた。その後、煉との一騎討ちで敗北。和麻がコントラクターの力を使った影響により流也が苦しみだし、その影響が兵衛にまで伝わり隙ができたところを煉に密着され、猛烈な業火で断末魔の叫びすらも焼き尽くされて消滅した。アニメ版では復活し憎悪に狂った「神」の風術により部下たちと共に死亡するという末路を遂げた。そのため煉との戦闘はなく、自らもまた「復讐心」の犠牲となって死亡した。また煉は流也の影響により出現した妖魔の群れと戦っていたため戦闘には参加しない。 姿を隠して相手を撹乱する戦法を得意としている。武器は人体の肉程度なら容易く切断できる風の刃。また煉が放った炎の雨を凌ぐほどの耐久力を持つ。妖魔化した時には浅黒いグロテスクな肌を持つ人型の怪物となる。 「超解!」によれば元々は神凪一族に忠実に仕えていたが、服従を強いられ侮蔑の視線を向けられ続けた結果、積年の恨みから反旗を翻したという。 イラストレーターの設定資料では忍者の頭領風の容姿であり、頭頂周りが禿げ上がった老人だった。初期デザインは動きやすさ重視にとジャージ姿だったが、編集の方から却下されたという。イラストの方は実際の本編では使われることがなく、納戸花丸の画集に掲載されている。「老人」だったためアニメ版とは容姿が異なる。 技一覧 風の刃 煉との戦いで使用。連射も可能。 衝撃波 妖魔化後の技。煉の頭部を打ち無力化させるのに使用した。 妖気の再現 慎治たち3人が流也に殺された際、犯行現場の妖気を風で集めて再現した技術。詳細は不明だが妖気から情報を得ることも可能な模様。敵の正体を知るために兵衛自らやったとされるが、彼が黒幕なので最低限の情報しかもたらされなかった。 呼魂法(こだまほう) 風に声を乗せて離れた場所の人物と対話する。風術師の代表的な術法だが、風牙衆なら誰でも使える初歩的な術。煉との戦いでは姿を消したまま使用し、攪乱するために様々な方角から声を届けた。 風の結界 姿を隠す補助技。煉との戦いで使用した。姿を消したまま呼魂法で攪乱するという老獪な戦術を用いる。 催眠術 反乱に加担しなかった風牙衆を操る際に使用。「操られた可哀想な人間」を和麻にけしかけるが容赦なく殺されたため、自分を棚上げして和麻を非難していた。アニメでは未使用。 風巻 流也 (かざまき りゅうや) 声 - 松本大 1巻に登場。兵衛の一人息子。10月14日生まれ、身長176cm、A型(アニメ版)。原作とアニメ版で設定が異なる。 十年ほど前から病に倒れて養生中であったが、後に父によって妖魔を宿され、神凪に復讐する道具にされていた(「超解!」によれば、「病気療養のため10年も姿を見せなかったほど病弱」だったという)。最早「風巻流也」としての意識はどこにも残っておらず、完全に妖魔に乗っ取られ、兵衛との「契約」に従い力を貸す存在になり果てている。第1巻の最後の敵であり、本作の中でも上位の敵に位置する。 原作ではまったくしゃべらなかったが、「ククク……」という嘲笑の思念が和麻伝わったことがあった。 年齢は不詳だが十年前の写真は「少年」と語られている。 美形だが表情はなく、終始能面じみた無表情。全身を黒尽くめの衣装に身を包んでいるが、それ以上にまとう妖気は闇よりも黒い。決着直前では妖魔としての正体を現し、粘土を人型にこねたような不気味な姿となった。 性格は冷酷にして残虐。命を壊すことに快感を覚えるらしく、すでに死体となっている慎治らを細切れに切り刻んだり、ホテルを輪切りにして数百人をまとめて殺害。さらには仲間である風牙の術者も、武哉と慎吾ごと切断して殺害した(仲間を巻き込んでしまったのではなく狙って殺害している)。和麻に罪を着せる(神凪の注意を向けさせる)という目的もどうでもいいらしく、何度も彼の不意をついて殺しにかかっていた(ただしアニメでは和麻の背後を取ったにもかかわらず攻撃対象から外すなど兵衛の目的に従っている。またホテルに泊まった和麻を監視していた)。 和麻の帰国を機に、彼に罪を押し付けるために風術で神凪一族の炎術師を7人(アニメでは5人)も殺していた。すでに流也の意識はどこにも残っておらず、肉体もプロレスラーが即死するほどの攻撃を受けてもものともせず、頭部を強打しても脳震盪も起こさない。 和麻もさすがに今の流也には同情を禁じえなかったらしく、息子は力を手に入れたと誇る兵衛に対し「あいつは何も手に入れていない。すべてを失っただけだ」と返している。 肉弾戦と風術により遠近のどの間合いにも対応した戦い方が可能。和麻によれば「20キロ先から攻撃することも容易」とのこと。1巻終盤での戦いでは綾乃を完全に圧倒するも取り逃してしまい、これが敗因の一つとなる。 最終決戦の地・京都。その山中にある神凪の聖地こと火之迦具土(ほのかぐつち)を祀る山にて、コントラクターの力を解放した和麻の援護によって力をそがれ、最後は綾乃の炎によって妖魔共々滅殺される。しかし一度は綾乃を余裕で破っており、彼女からは「最強最悪の風術師」として記憶に深く刻み込まれている。 アニメ版では和麻に近い容姿や服装をしており、長く伸ばした後ろ髪をうなじのところで一本に束ねている。肌は生気の失われた緑色で、顔には血管が浮き出ており不気味な嘲笑が刻まれている。妖魔化する前の写真がアニメでは描写されており、髪型は和麻と似ているが肌が白く頬も痩せてやつれた青年だったことから本当に病気だったようである。また上級妖魔に憑依されたという設定自体がなくなり、自ら兵衛に協力しゲホウ様(原作における「神」)の妖気を取り込んだことで力を手に入れたというものになっている。それも兵衛によれば微弱な妖気だったという。煉によってゲホウの封印が解かれた後、封印に近づいたことで妖気が共鳴を起こし、引き寄せあったことでその身にゲホウ様を宿すこととなった。合一後の形態は緑の肌をした巨人へと変貌し、風術も使用する。しかし長い年月封印されたことでゲホウ様には正気はなく、自分を封じた神凪に対する憎悪しか残っていなかった。手始めに味方である風牙衆を兵衛ごと抹殺し、続いて分家を滅ぼすべきく移動した。 戦闘スタイルも原作とは異なり、殴る・突くなどの拳による近接戦闘が主体となっている。また腕を切断された際は悲鳴を上げて苦しむなど「痛覚」がある描写がされた。 イラストレーターの設定資料では、もみあげが長く父親似の容姿のためアニメ版とは異なる。小説内では彼のイラストは描かれず、納戸花丸の画集などに収録されている。 技一覧 精霊発狂 周囲にいる風の精霊を発狂させる。「深淵の水龍」では憑依した妖魔が持つ能力であることが語られた。また同作品では精霊の属性は問わず発狂させられるとしている。 黒い風の刃 妖気に塗れた風の刃を放つ。威力は、和麻の風の刃の連射をたった一発で押し返すほど。風の精霊が発狂しているためコントラクターの和麻でも干渉はできない。アニメでは「ホテルを輪切りにする規模の攻撃は風術では不可能」と語られている。これらの力の一端を見た和麻は「楽観的に見て五分には届かない」と語った。 黒い風の鉄槌 妖気に塗れた風で対象を叩き潰す。 漆黒の爪 刃のように伸びた五本の爪を武器として利用する。当初は炎雷覇と拮抗するほどの威力と強度を見せたが、恐怖を打ち払った綾乃には簡単に破壊された。 切断された腕を操作して遠隔攻撃に用いることも可能。初登場時には歪に変形した手だけを和麻のもとへ行かせ、風術を行使するという芸当を見せた。 アニメ版では徒手空拳による攻撃のため爪は使っておらず、腕自体が炎雷覇と拮抗するほどの強度を誇っている。 竜巻 流也最大の大技。五本の竜巻を生み出し大自然の猛威を顕現させる。これを見た綾乃は恐怖のあまり「あんなのに勝てるわけないじゃない!」と泣き叫んだ。また当初、和麻は同じものを生み出して相殺を考えたが「勘弁してくれ」とすぐにあきらめた。このことから並みならぬ負担や労力がかかるのが窺える。 アニメ版では流也の背中から漆黒の翼を象った黒い風が伸び、竜巻を生み出すという演出がされている。また自身を竜巻に包むことで防御技としても使用した。 黒い風 補助技。仲間の風牙衆の存在を隠すのに使用した。和麻もこれによって伏兵の存在に気づけず、煉が拉致されるという失態を犯した。 風の結界 慎治たちを殺害する際に使用。風の結界で幽閉し逃げ場を奪った。アニメでは武哉・慎吾と行動していた綾乃を結界に捕らえ、現実世界と隔離したが炎雷覇によって破られた。 飛翔 補助技。高速で上昇しあっという間に姿を消してしまう。和麻の力をもってしても後を追うことも風で尾行することもできなかった。アニメでは渦巻く風で自身を包み姿を消すという演出がされ、瞬間移動のように描かれた。綾乃との戦闘ではこの技を使って背後をとった。 自己再生 切断された腕を瞬く間に繋ぎ合わせる。アニメ版では未使用。
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