大規模林道問題とは? わかりやすく解説

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大規模林道問題(細見谷林道問題)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/07 08:27 UTC 版)

十方山林道」の記事における「大規模林道問題(細見林道問題)」の解説

1970年代はじめ、国による大規模林道事業計画浮上した。そしてその中に十方山林道組み込まれることになった既設十方山林道(未舗装)を、大規模林業圏開発林道いわゆる大規模林道、後の緑資源幹線林道事業組み込んで拡幅舗装化(幅員基本規格7m、全面舗装)しようというのである。しかし、そのことによって、細見谷の豊かな自然が失われてしまう恐れがあるとして、自然保護団体中心とした反対運動起こった大規模林道全部32路線)は、全国7つ林業圏域設定して展開された。したがって大規模林道建設自然破壊をめぐる問題は、全国各地存在している。しかし、ここでいう大規模林道問題とは、十方山林道細見林道)の場合対象とした用語である。つまり、既設十方山林道(未舗装)を拡幅舗装化することが、特に「細見谷の自然に影響を及ぼす可能性があるのかどうか」という問題である。なお、大規模林道事業策定したのは、森林開発公団(後の緑資源機構)である。 結論から先にいうと、2012年1月広島県湯崎英彦知事)が事業継承しないことを表明したため、細見谷渓畔林原生的自然は広島営林署伐採計画変更1972年10月)に引き続いて、再び現状のまま保存されることとなった1956年昭和31年7月16日森林開発公団設立農林省所管特殊法人) 同公団当初の目的は、限られた地域紀州熊野川流域四国剣山周辺地域)で林道事業を行うことにあった。(1963年事業完了1965年昭和40年)、公団特定森林地域開発林道計画いわゆるスーパー林道)を所管事項とする。 旧公団林道事業完了1963年)したにもかかわらず森林開発公団解散することなく今度全国規模の「スーパー林道計画所管事項とした。 「スーパー林道」は、幅員 4.6mで〈未舗装〉ながら「峰越し多目的」の林道である。「南アルプススーパー林道」などのように観光地のそばに多く造られた。(1990年事業完了1972年昭和47年)、「広島県の自然を守る県民の会」結成 同会及び広島県さらには広島大学関係者意見反映して細見谷渓畔林はかろうじて保護された。 なお、このころ大規模林道建設向けて細見谷でも調査が行われている。 1973年昭和48年)、公団大規模林業圏開発林道事業いわゆる大規模林道)を所管事項とする 「大規模林道」は、スーパー林道同じく「峰越し多目的」の林道である。しかしその規格は、幅員 7m (道路幅員5.5m )二車線舗装〉であり、スーパー林道それよりもさらに大型のものとなっている(大規模林道スーパー林道事業自体異なる)。 大規模林道整備の目的としては、林業振興地域開発加えて森林レクリエーション拡充などがあげられている。まさに、大型観光バス走行可能な山岳ハイウェイ観光道路)をめざしたものといえよう。 1974年昭和49年11月、「広島県の自然を守る県民の会」大規模林道開発ルート変更訴え 大規模林道工事そのもの中止ではなく細見谷を通らないルート変更することを求めたのである1976年昭和51年9月大規模林道大朝鹿野線の基本計画策定について要望吉和村芸北町戸河内町地元自治体からの建設促進要請である。 1977年昭和52年3月大規模林道大朝鹿野線の実施計画農林大臣許可 十方山林道拡幅舗装化を含む路線のことである。 1978年昭和53年)、第2回自然環境保全基礎調査特定植物群落調査実施環境庁細見谷の渓谷植生は、選定基準「A自然林」とされた。屋久島白神山地同等扱いである。 1990年平成2年5月27日、「森と水と土を考える会」発足発足当初から、大規模林道問題を一つ掲げて活動継続2012年には、創立20周年記念誌を発行している。 1990年平成2年9月大朝鹿野戸河内吉和区間(城根・二軒小屋工事区間)の工事着手 十方山林道につながる隣り工事区間である(安芸太田町小板城根(国道191号)〜三段峡二軒小屋)。2004年12月完成1999年平成11年10月緑資源公団発足 森林開発公団農用地整備公団統合2000年平成12年12月再評価委員会林野庁にて設置)の意見 大朝鹿野線が全国複数路線一つとして対象選ばれた。委員会では、特に十方山林道部分について「環境保全への配慮等のために、幅員縮小するなど計画路線一部変更した上で事業継続することとする。なお、渓畔林部分については環境保全に十分配慮して事業実施する必要がある」としている。なおこの間自然保護団体による度重なる申し入れ1996年1998年2000年が行われている。 2001年平成13年10月6〜7日、大規模林道問題全国ネットワーク集い第9回)・広島集会第一回目) 大規模林道問題全国ネットワークとしては初めての西日本における集会である。これを機会に、細見谷大規模林道問題に対す自然保護団体等の主張は、従来の「細見谷を通らないルート変更」から、「大規模林道工事そのもの中止」を求め方向転換した。なお、同ネットワーク第1回大会は、山形県長井市白鷹町にて開催1993年平成5年6月2627日)。 2002年平成14年)、一般市民学者による細見谷の本格的な調査開始 初年度成果として、原哲之編『細見谷と十方山林道2002年版)』(脚注参照)がある。また、その後の調査活動(特に植物調査)のまとめとして、堀資料がある。 2003年平成15年1月大朝鹿野線の実施計画変更認可農林水産大臣) 「戸河内吉和区間一部二軒小屋吉和西工区間)について幅員5mとする。なお、渓畔林部分についてはこれによらず原則として現道を拡幅せず必要最小限工事を行うこととする」。大規模林道通常規格である、幅員 7m (道路幅員5.5m )二車線舗装〉からは後退したものとなっている。注:1984年昭和59年)に大規模林道事業の見直し当時全部25路線)があり、多数路線ですでに路線短縮19路線)や幅員縮小14路線、7mから5mへ)が行われている。 2003年平成15年3月1日広島県佐伯郡吉和村は、同県廿日市市合併して廿日市市吉和となる。 廿日市市、大規模林道問題の当事者となる。 2003年平成15年3月23日日本生態学会大規模林道事業反対表明 日本生態学会第50回大会総会における決議文細見谷渓畔林西中国山地国定公園)を縦貫する大規模林道事業中止、および同渓畔林保全措置求め要望書」を提出した提出先は、環境大臣農林水産大臣広島県知事廿日市市長、および緑資源公団である。 2003年平成15年10月緑資源機構発足 独立行政法人化する。 2004年平成16年6月環境保全調査検討委員会第1回) いよいよ次は、十方山林道大規模林道工事着手という時期になってきた(同年12月二軒小屋までの工事区間完成)。しかし、自然保護立場から強い反対運動があり、工事着工前に緑資源機構による環境保全調査検討委員会開かれることになった委員会設置の目的を、同機構では「(細見谷における)林道工事実施に伴う影響予測評価及び保全措置専門的学術的な見地から検討するため」としている。 2005年平成17年11月環境保全調査検討委員会第9回最終回委員会は、(細見大規模林道工事の)着工に伴う環境保全措置承認、つまり、大規模林道工事着工容認した環境保全調査検討委員会をめぐる種々のやりとり等についてまとめた資料として、『細見谷と十方山林道2006年版)』がある。 2006年平成18年1月建設促進大会開催整備促進協議会主催建設促進地元住民による総意とされた。 2006年平成18年6月1011日、大規模林道問題全国ネットワーク集い第14回)・広島集会第二回目) スローガンは「止めよう緑資源幹線林道残そう細見谷渓畔林2006年平成18年8月期中評価委員会林野庁結審 環境保全調査検討委員会20045年)は、細見大規模林道工事十方山林道大規模化そのもの対象としていた。これに対して期中評価委員会は、全国幹線林道大規模林道)の中から毎年複数路線評価対象選んでおり、同年大朝鹿野線(十方山林道含まれる)もその対象となった期中評価委員会では、十方山林道について次のように評価している。すなわち「林道整備必要性認められ地元要請も強い一方で、特に渓畔林部分及び新設部分については、自然環境保全観点から、さらに慎重な対応が求められるこのため吉和側、二軒小屋側の拡幅部分については、環境保全配慮しつつ工事進めこととするまた、渓畔林部分及び新設部分については、地元学識経験者等の意見聴取しつつ引き続き環境調査等を実施して環境保全対策検討した後、改め当該部分取扱緑資源幹線林道事業期中評価委員会において審議する2006年平成18年8月廿日市市にて臨時市議会開催住民投票条例案を審議廿日市市において「廿日市市における細見林道工事是非を問う住民投票条例制定に関する直接請求署名活動が行われた。有効署名数が有権者数の8.3%(2.0%にて成立)に達し臨時市議会において審議され結果住民投票条例案は7対24反対多数否決された。 2006年平成18年11 月十方山林道両端から工事着手2007年吉和西側廿日市市吉和)約100mあまり 、二軒小屋側(山県郡安芸太田町)約300m完成した。ただし、2008年度以降工事中断2007年平成19年5月緑資源機構理事ら6名、官製談合疑いにて東京地検特捜部によって逮捕 容疑は「緑資源機構」が発注した林道整備コンサルタント業務天下り先)をめぐる談合事件に関する独禁法違反不当な取引制限)。 2008年平成20年3月31日緑資源機構廃止 業務大部分森林総合研究所農林水産省所管独立行政法人)の一部門(森林農地整備センター)として移管存続緑資源幹線林道未完成部分)については、独立行政法人事業としては廃止し地方公共団体具体的に北海道および該当県)の判断により必要な区間について、国の補助事業として実施することになった。そして、そのための「山のみち地域づくり交付金」が創設された。 2008年平成20年9月6〜7日、大規模林道問題全国ネットワーク集い第16回)・広島集会第三回目) 広島大アピール「(同ネットワークは)新たに発足した日本森林生態系保護ネットワーク合流し発展的に改組することになりました」と宣言2012年平成24年1月広島県湯崎英彦知事)が事業継承しないことを表明 細見谷渓畔林原生的自然は現状のまま保存されることとなった2012年平成24年3月細見谷渓畔林訴訟公金違法支出損害金返還請求事件)の判決広島地裁受益者賦課金対す公金支出そのものについては、違法とされた。 2019年令和1)8月13日、「森と水と土を考える会」閉会 会報森と水と土を考える会」2019年8月最終号(第240号をもって30年活動幕を閉じる。

※この「大規模林道問題(細見谷林道問題)」の解説は、「十方山林道」の解説の一部です。
「大規模林道問題(細見谷林道問題)」を含む「十方山林道」の記事については、「十方山林道」の概要を参照ください。

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