環境保全対策
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ダム建設は大幅な自然の改変をもたらすことから、1990年代以降は特にダムと環境についての議論が活発化した。嘉瀬川ダムについても佐賀県下最大級のダムとなることから環境問題が指摘されていた。その上環境影響評価法(環境アセスメント法)でダム事業における環境への影響調査と対策が義務付けられたこともあり、建設に際しては環境に最大限の配慮を行う必要があった。 国土交通省嘉瀬川ダム工事事務所は環境関連の専門家や有識者を集め、ダムの環境対策や文化財保護・地域活性化を検討・諮問する「嘉瀬川ダム環境検討委員会」を設置。委員会は2002年(平成14年)10月に『嘉瀬川ダム建設事業における環境保全への取り組み』と題した提言をまとめた。この中では生物保全・水環境の保全はもとより、建設工事に伴う騒音・振動・廃棄物対策、更に景観や歴史的文化遺産の保全など事細かに改善項目をまとめ、これの履行を工事事務所に求めた。 国土交通省はこの提言に沿った形で建設事業を進めることとし、自然保護に関してはスギ人工林を自然林へ回復させるための植生変更や、休耕田を利用した小動物・昆虫類の生育保全、キクガシラコウモリのねぐら整備やカジカガエルの保護を行っている。また、水没予定地の森林を全て伐採せずに移転し、下流にある国営吉野ヶ里歴史公園に移植する工事を実施している。以前のダム事業では水没予定地内の樹木は伐採の対象にしかならなかったが、可能な限り自然を保護することが委員会提言に纏められているため、移植を行っている。完成後はダム及びダム湖は公園として整備されるが、従来型のアウトドア施設を有する“擬似自然公園”ではなく、本格的な自然公園として整備する方針を採用している。この他水没する遺跡の発掘調査を行い、遺跡の発掘物保存も同時に実施している。 計画から完成まで39年を費やす日本の長期化ダム事業のひとつであり、問題はまだ山積しているが、地域密着型のダムを目指して今後の活用が検討されている。
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