ヒトラーとの再論争とは? わかりやすく解説

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ヒトラーとの再論争

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/04 05:25 UTC 版)

オットー・シュトラッサー」の記事における「ヒトラーとの再論争」の解説

グレゴール違ってオットーには、さすがのヒトラー手を焼いた1930年4月ザクセン金属労働者スト問題巡り闘争出版機関誌ザクセン物見(Der Sächsische Beobachter)」がスト支持表明したのに反して財界やフーゲンベルクや鉄兜団といった反動勢力提携深めていたヒトラーは、産業界からスト反対なければナチへの資金援助打ち切るとの電報受け取ってオットースト支持撤回迫ったことは、オットーヒトラーの仲を更に嫌悪化させることとなったヒトラーしてみればオットーをなんとか押さえ込んで党内社会主義色を払拭一掃する必要があった。こうしてヒトラー会談希望意向オットー伝えヘス仲介電話機にして、1930年5月21日22日2日間に渡る議論を『サンスシー・ホテル』でまたもや2人対決するヒトラー一方的に喋りまくる男だったことを考えると、オットーとのこの長時間に渡るディスカッション異例のことで、ヒトラーにしては極めて珍しいことだった。論争内容は、「芸術問題」、「指導者理念問題」、「社会主義問題」、「人種問題」、「外交問題」、「経済問題」と多岐に渡った開口一番ヒトラー当時テューリンゲン州内務大臣ヴィルヘルム・フリック古くさい芸術観をもつパウル・シュルツェ・ナウムブルク(de:Paul Schultze-Naumburg)をワイマール建設手工業大学責任者地位につけたことに対してナチ左派党員オットージャーナル誌上加えた批判批評取り上げオットーかみついたヒトラー 「『国民社会主義通信』の論文は、我がフリック博士対す背後短剣である。ナウムブルク氏については、彼は一級芸術家である。芸術なにがし心得ある人ならば誰しも、彼が余人誰にもまして真の芸術教え人物であることは分かっている。しかし、君達は、ユダヤ人新聞グルになってこの問題に関するフリック博士決定妨害しようとしている。シュトラッサー君、君は芸術をちっとも理解していない。古い芸術新し芸術なんてものは全く存在しない。ただ一種類の芸術しか存在せず、それはギリシャゲルマン芸術だ。芸術には革命紛いのものは存在しないのだ。」 元々、画家志望いっぱしの芸術家気取りヒトラーが抱く古い懐古主義的芸術観は、表現主義モダン芸術のなかに革命的意欲を見るオットー芸術観是認することはできなかった。次いでヒトラーは、その非難矛先オットー協力者論文忠誠不忠』に向けたヒトラー彼の忠誠観、彼が指導者理念の間にもうけている区別党員反逆駆り立てている誘因だ」 党綱領原則忠実たろうとし、指導者よりも党の理念優先させるオットーは、綱領越えて君臨するカリスマ的支配求めヒトラー見解と真向から対立したオットー 「いな、それは指導者威信失墜させる問題ではない。しかし、自由でプロテスタントドイツ人にとってなによりもまず本来必要なのは、理念対す奉仕である。理念起源からいって神聖なものであり、人間その伝手段であり言葉が肉化されている肉体に過ぎない指導者立てるのは理念奉仕するためであり、我々が絶対忠誠を誓うのは理念に対してだけである。指導者人間であり、過ち犯すのは人間だ。」ヒトラーそのような考えは最低のデモクラシーだ。我々はそんなもの真平だ。我々にとっては理念指導者のことであり、党員各自指導者に従いえすればよいのだ。」 オットー 「いな、あなたの言われることはカトリックならまったくその通りでしょう。ついでながらイタリアのファシズムはそこから刺激受けたものです。しかし、私の主張しているのは、理念重大な事柄であり、理念指導者の間に何ら食い違いが起こるような場合には決定のために個々人良心呼び起こされなければならぬということです。」 ヒトラー神経質そうに膝を擦り付けながら反論したヒトラー 「君の言っていることは組織解体に繋がる。君もかつては将校だったじゃないか。それに君も知っているように、君の兄さんは必ずしも私と意見合わずとも私の規律受け入れている。兄さん見習いたまえ。彼は立派な人だ。」オットーヒトラーさん、規律既存集団統一する助けとなるに過ぎない。それがその集団作り出すことはあり得ない。あなたをとりまく下司な人たちの称賛おべっかで身をあやまることのないようにして頂きたい。」 ヒトラー懐柔策出たヒトラー 「君のお兄さん為に私はもう一度手をさしのべよう。君を全国における宣伝部長にしようと思う。ミュンヘン来て私の監督の下で働きたまえ。」オットーヒトラーさん、我々の違った政治観一致基盤が見つけられればお受けしましょう。もし了解上っ面なものに過ぎないのなら、後になってあなたは私があなたを欺いたという感じ抱かれるでしょうし、私としてもあなたが私を欺いたという感じを常に抱かなければならないでしょうお望みとあればミュンヘン1カ月過ごして、あなたや、私に対す敵意歴然としているローゼンベルク社会主義外交政策について論じ気持ちあります。」 オットー辟易したのかヒトラー今度はおどしの奥の手出したヒトラー闘争出版社」は我が党にとって有害な企画と私は宣言する。私は如何なる党員にも君の新聞何らかの関係をもつことを禁じ、君や君の支持者達を君もろとも党から追放する。」 これしきのおどしにすくむオットーではなくオットーヒトラーさん、さようなことは貴方に朝飯前でしょうが、それは我々の革命的な社会主義者として思想における深い亀裂強調するのに役立つだけです。「闘争出版社打倒に対して貴方がくっつけておられる本当理由は、貴方のブルジョワ諸政党との新たな協調のために、あなたが社会革命闘おうとしているということだ。」 反動呼ばわりされヒトラー激しく抗弁した。 ヒトラー 「私は社会主義者であり、君の金持ち友人レーヴェントロー(Ernst Graf zu Reventlow)なんかとは全く類い異にした社会主義者だ。私もかつてはしがない労働者だった。君の言っているような社会主義マルクス主義以外のなにものでもない。 私がやらなければならないのは、君みたいな哀れみ道徳性によって操られることを自らに許さぬ人々を、新たな支配層から選ぶことだ。支配する人間自分優等人種属しているが故、支配する権利をもっていることを知らねばならぬオットーヒトラー人種論反論した オットーローゼンベルクさんに負うている貴方の人種思想ドイツ国民創造たるべき国民社会主義大きな使命と全く矛盾するばかりではなくドイツ民族崩壊もたらす似つかわしい。」 ヒトラーはむきになり自分人種論十八番ぶちまくった。 ヒトラー 「君が説いているのはリベラリズムだ。考えられる革命一つしかない。それは経済政治社会革命ではなく人種革命だ。それに、権力の座にある優等人種対す劣等人種との闘争であり、この法則忘れたあかつきには革命敗北するあらゆる革命人種的だったのだ。ローゼンベルク新刊読めば君も納得するはずだ。というのもこの種の中でも最も説得力ある本でヒューストン・チェンバレンの本よりも素晴らしいからだ。人種知識皆無だから君の外交政策観は過っているのだ。君はインドの独立運動勇敢なアングロ・ゲルマン人種対すヒンドゥー教劣等人種反逆であることが歴然としているのに、公然とインドの独立運動支持表明したではないかゲルマン民族世界支配権利をもつのであり、この権利我が外交政策指導原理となるであろう。これが何故スラブ・タタール人の組織体たるロシアとの如何なる同盟も話にならぬかの理由だ。」 オットー 「しかし、ヒトラーさん、その様考え決し外交政策基盤たり得ない。私にとって大切な問題政治情勢ドイツにとって有利か、不利かということだけだ。我々を導くのは共感敵意配慮ではない。外交政策主要目的一つヴェルサイユ条約廃止なければならないスターリンであれ、ムッソリーニであれ、マクドナルドであれ、ポワンカレであれ、構わないじゃありませんか優れたドイツの政治家ならばドイツ利益優先させるべきです。」 ヒトラードイツ利益優先されなければならないのはいうまでもない。それが何故、イギリスとの了解不可欠あるかの理由である。我々はヨーロッパ対するドイツ・ゲルマン人の支配確立しアメリカ協力得て世界対す支配確立しなければならない。我々には陸地イギリスには海洋だ。」 剛直なオットー相手にしてさすがのヒトラーもぐったりし、2人翌日再会約して別れた翌日には、ヘスアマン、ヒンケル、グレゴール加わったオットーヒトラー前に1926年バンベルク会議否定されシュトラッサー草案をおきながら切り出したオットー 「私と同じように、あなたもまた、我々の革命政治経済社会分野における全体的な革命なければならぬと確信しておられるか?あなたの描いておられる革命は、資本主義にもマルクス主義にも反対する革命であるのか?したがって、我々の宣伝ドイツ社会主義達成為に等しく双方攻撃しなければならぬことをお認めになるか?」 ヒトラー叫んだ ヒトラー 「その考えマルクス主義だ!まごうことなくボルシェヴィズムだ!民主主義世界破滅させた。それにも関わらず君はそれを経済分野拡大しようとしている。そんなことをすればドイツ経済おじゃんになってしまうだろう。君は、偉大な学者や、発明家個人的努力によってのみ達成され人間進歩全部御破算にしている」 オットーヒトラーさん、私は人類進歩など信じてはいない。これらの偉人、これらの指導者果たした役割は貴方が考えておられるところとは違う。 歴史偉大な時期作り出した発明するのは人間ではない。それどころか、彼らは運命使者であり、その道具だ。」 カリスマ神話仮面剥ぎ取るオットー言い方ヒトラー怒ったヒトラー 「君は私が国民社会主義創造者たることを否定するのか?」オットー 「そうせざるを得ません。国民社会主義は、我々が生きている時代から生まれた思想だ。 それは、何百万という人々心の中存在しているものであり、貴方の中にも化身となっているものだ。かくも多く人々中にそれが生まれたという同時性は、その歴史必然証明するものであり、また、資本主義時代終わったということ証明するものです。」 そして、オットー単刀直入に最後駄目押しをした。 オットー明日、貴方が天下お取りになれば、クルップそのままにしておくおつもりか?」 ヒトラーは長演説振ってオットー目論む国有化社会化ディレッタンティズムであることを指摘しながら、 ヒトラー 「これをそのままにしておかなければならないのはいうまでもない。君は私が祖国偉大な産業破滅させることを望むほど気が狂っているとでも思っているのか?」オットー 「もしあなたが資本主義体制温存望まれるなら、ヒトラーさん、あなたは社会主義を口にする資格はない。何故なら我々の支持者社会主義者であるし、あなたの綱領私企業社会化要求しているからです。」 ヒトラー社会主義というこの言葉厄介だ。私は企業片っ端から社会化すべしというようなことを言った覚えはない。そうではなくて、私が主張したのは国民利益有害な企業社会化してもかまわないということだそれほど犯罪的なものでない限り我々の経済生活における不可欠要素破壊するのは、罪悪であろうイタリアのファシズムをとって考えてみたまえ。我々の国家も、ファシスト国家同じくいざこざ起きた場合には調停権利留保しつつ雇用者労働者利益双方を守るだろう。」 オットー 「しかし、ファシズムの下では労資問題未解決のままである。この問題取り組まれさえしなかった。ただ単に一時的に揉み消されたのに過ぎない。あなた自身無傷のままにしておこうと目論んでおられる通りに、資本主義無傷のままに終わっている。」 ヒトラーシュトラッサー君、ただひとつの経済体制しかない。それは、監督者執行部の側の責任権威である。」 オットー仰る通りです。ヒトラーさん。国家資本主義であれ社会主義であれ、行政構造は同じでしょう。しかし、労働意欲はそれがその下で生活している体制左右されます。数年前凡人大差ない一握り人間25万人ルール労働者路頭投げ出すというようなことが起こり得たとき、そして、この行為合法的で我々の経済体制道徳性合致していたとき、このような体制こそ犯罪的なであって人間犯罪的なのではない。」 ヒトラー 「しかし、そんなことは労働者使っている企業利潤分配労働者認め理由はならぬし、特に彼らに相談役権利与え理由にならぬ。強力な国家ならば、生産国民利益において行われるものだということ理解するであろうし、これらの利益無視されるような場合には、歩を進めて関係企業押さえその運営肩代わりすることも可能だ利潤分配労働者相談役権利は、マルキシズム原理だ。思うに私企業に対して影響力行使する権利は、優秀な社会層によって指導され国家のみに委ねられなければならぬ。」 こうして、二人話し合い1月会談と同様またもやもの別れ終わった。 「敵を非難する友人一人知らぬ男」、「愛すること知らぬ憎悪する誇大妄想狂」、「バランス欠けた男」これが長年にわたる激し論争の末にオットー抱いたヒトラー像の結論だった。

※この「ヒトラーとの再論争」の解説は、「オットー・シュトラッサー」の解説の一部です。
「ヒトラーとの再論争」を含む「オットー・シュトラッサー」の記事については、「オットー・シュトラッサー」の概要を参照ください。

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