えぐい

実用日本語表現辞典

えぐい

別表記：エグい、蘞い、刳い、醶い

あくの強い嫌な刺激のある味覚、または、表現や描写がどぎつい・むごい・非常に甚だしいさまなどを形容する表現。

（2022年11月10日更新）

えぐい

別表記：エグい

「えぐい」とは、「最高」「素晴らしい」といった賞賛の意味合いや「酷い」「ありえない」といった否定の意味合いの両方で用いられる若者言葉で本来は刺激の強い嫌な味覚のことを意味する表現。方言（特に関西弁）で使われているのを、テレビなどで見た若者が流行らせたのが始まりである。例えば「えぐい」が良い意味で使われるときには、単純に「すごい」「通常のレベルを超えている」、悪い意味では「ひどい」「不気味だ」「しんどい」などの意味がある。アニメ好きな人などが「えぐい」を使うときにはほとんどが、「可愛すぎる」「かっこよすぎる」という良い意味で使われる。強い衝撃を受けたときに、好んで使われる言葉だ。
もともとは、食べ物の「えぐみ」が元になっている。口に入れたとき舌を強く刺激したり、喉に強いアクを感じたりするときに、「えぐみを感じる」などと使われる言葉だ。そこから意味が転じて、「厳しい」や「きつい」「辛い」「生々しい」「気味が悪い」などの意味で使われるようになった。

「えぐい」を英語表現で表そうとする時、候補は少なくない。日本語でも、いろいろな意味を持つ曖昧な言葉だからだ。例えば、「tough（厄介・困難）」「terrible（猛烈な・凄まじい・恐ろしい）」「crude（荒削りな・粗暴な・無作法な）」「nasty（意地の悪い・不快な）」などだ。英語で「えぐい」を表現しようと思った時は注意が必要で、その時に適切な単語を選ばなければいけない。あまりポジティブな意味で使われていなかったり、ネガティブなように見えて、実は褒めていたりするケースもある。的確に読み解かなければ、間違った表現をしてしまうこともある。

「えぐい」の語源・由来

広辞苑に掲載されている「えぐい」の意味は、「アクが強い、えがらっぽい、喉や舌を刺激するような味がある」など、味覚について書かれている。その他には、「冷酷だ、どぎつい、気が強い」などという意味がある。漢字で書くと、「刳い、蘞い」だ。

「えぐし」の口語が「えぐい」であり、喉をえぐるような味覚を表している。語源は「えぐる」だ。古くは平安時代の『和名類聚抄』にも出てくる表現である。酷い様子や、思いやりを持っていないことに対して、「えぐい」が使われるようになったのは、江戸時代である。その後比喩的な使われ方が広がっていき、「きつい」とか「厳しい」の意味で使われるようになった。植物の「エグ」に由来を持つという説もある。えぐるような味覚に由来する語源だ。

関西の方言で使われていたのが、広まったという説もある。主にテレビなどのメディアを通じて、関西圏の芸人がよく使用していて、「気色悪い」という意味で使われることが多かった。そこから転じて、褒め言葉として使われることも増えていき、程度が強い・ひどい時に割とポピュラーに使用されている。

「えぐいて」とは・「えぐいて」の使い方

「えぐいて」も若者の間でよく使用される表現である。元々存在した表現ではあるが、Youtuberである「チャンネルがーどまん」のリーダー・がーどまんが過激なドッキリを受けた際の感情表現として用いたことにより全国的に認知されるようになった。
この際の意味合いとしては「過激なドッキリを受けて信じられない、最悪だ」といった否定的な感情を相手を責める意味合いも込めて発している。
しかし肯定的な意味で用いることも少なくない。たとえば・「勉強しないで共通テスト9割は普通にえぐいて。」といった文章であれば、並外れた能力に対して呆れつつも賞賛している文脈になる。

「えぐい」の使い方・例文

・「さっき取ってきたワラビは、まだえぐいのでもうしばらく水にさらしておこう。」
これは元々「えぐい」が持つ本来の意味で使われている。口に入れたときに、喉や舌にえぐみの成分が刺激を加与えることを心配している。味覚で感じる「えぐさ」の意味だ。水にさらすことでえぐみを取り去ろうとしている様子が伺える。

・「今のシュートはえぐいね。なかなかあそこから打とうとは思わないよ。」
「素晴らしい」という意味で、「えぐい」を使っている例文だ。広辞苑でも「えぐい」は本来、マイナスイメージの言葉として掲載されている。この例文では印象が逆で、とてもポジティブな使われ方をしている。意味が本来の使われ方とは逆になる、いわゆる「反転ワード」と呼ばれている表現だ。「しんどい」「無理」なども反転ワードとして使われる代表格だ。「この俳優が格好良すぎてしんどい（格好良すぎて辛いほどだ）」や、「彼のことが好きすぎて無理（体と心がもたないほど好き）」といった使われ方をする。

・「見てよこの人のフォロワー数，えぐい。」
こちらも反転ワードとしての表現で、「引くくらいすごい」ことを表している。一方でネガティブなイメージとして、ものすごく数が少ない時にも使われる。実際のフォロワー数を見てみないと、わからない表現だ。「えぐい」という言葉の難しさがよくわかる例文である。

・「私の推しメン、今日は格別えぐい。」
アイドルグループの中の応援しているメンバーが、特別格好良い（かわいい）ことを表現している。これも反転ワードで、とてもポジティブな意味で使われている表現だ。普通の言葉では表現しきれないほどかわいいことを表している。

・テレビのニュースを見ていて、「お年寄りを狙いうちしてお金を騙そうとするなんて、えぐいこと考えるな。」
もちろんこの「えぐい」は、「酷い」という意味だ。引くほどひどいことを考えつくものだと、呆れながら嘆いている。特に関西では、このような使われ方をすることが多い。「えぐいなぁ」とやや悲しそうな語尾になるのが特徴だ。

・「確かに大盛り頼んだけど、この量えぐくね？」
「えぐくね？」は「えぐくない？」を短縮した言葉だ。このような表現は、若者に多く見られる。量が多すぎるよね？という同意を友人に求めているニュアンスだ。量の多さに引いている心情も表れている。

・「ダイエットしたいけど、有酸素運動を週に4回はえぐいて。」
「えぐいて」は、「えぐい」をより強調して使いたいときの若者言葉だ。辛いことや厳しいことなど、予想外の出来事に遭遇したときに使う。際立っている、度を越しているという意味がある。「痩せたいけど、そこまではできないだろう」という辛すぎて諦めざるを得ないといったニュアンスが伝わる。

・海外のバスケットボールの試合を観戦していて、「身長175センチでダンクなんて、日本人ではありえない。身体能力がえぐすぎる。」
どうしようもないの違いを見せられて、諦め気味に賞賛している。程度の凄さが並外れており、呆れるほどすごいことを表している「えぐい」だ。

・「3ヶ月ぶりに実家に帰ったら、飼っている犬の喜び方、えぐかった。」
喜びの表現が並大抵ではなかったことが、よくわかる例文だ。犬が大喜びで飼い主に飛びついたり、周りを走りまわる様子が目に浮かぶような表現だ。ポジティブな意味で使われている「えぐい」の表現方法である。

・「自分のミスを部下のせいにするなんて、あいつの性格はえぐすぎる。」
ネガティブな意味で使われる「えぐい」だ。人物を表現するときに、ネガティブな意味で「えぐい」を使うと「厳しい」「きつい」の他、「気味が悪い」といった人を傷つける表現方法になる。使うときには注意が必要だ。

特に若者を中心に「えぐい」は「えぐいて」「えぐすぎる」「鬼えぐ」など、様々な活用のされ方をしている。意味合い的には一緒だが、より「えぐさ」を強調したい気持ちが表れている。

（2020年12月2日更新）

デジタル大辞泉

えぐ・い〔ゑぐい〕【^×蘞い／^×醶い】

読み方：えぐい

［形］［文］ゑぐ・し［ク］

１ あくが強くて、いがらっぽい感じがする。えがらっぽい。「山菜を食べたあと、のどが—・い」

２ 俗に、むごたらしいさま。また、どぎついさま。「—・い描写」

３ 我が強くて思いやりのないさま。きつい。

「では何か…、—・い事でもお言いなしたのですかい?」〈三重吉・小鳥の巣〉

[派生] えぐさ［名］えぐみ［名］

京ことば

えぐい

京ことば	意味
えぐい	辛辣な

大阪弁

えぐい

大阪弁	訳語	解説
えぐい	むごい、むごたらしい risky	セロリ類の植物「えぐ」から。エグのようなまずい味。露骨でいやらしいことや、思いやりや人情味がないこと。こんなえぐいもん食えるかいな、生きたまんま調理してからにえぐいことしやるわ。

Wiktionary日本語版（日本語カテゴリ）

えぐい

出典:『Wiktionary』 (2018/04/05 23:56 UTC 版)

形容詞

えぐい【刳（蘞、醶）い】

1. あくが強く、のどがいがいがする。育ったたけのこの味。
   • 筍といういたずらものがある。春になると、土鼠のように、土のなかから産毛だらけの頭を持出して来る奴だが、このいたずらもののなかには、えぐい味のがあって、そんなのはどうかすると、食べた人に世の中を味気なく思わせるものだ。（薄田泣菫『艸木虫魚』）
2. あくが強い、洗練されていない。
   • 「えぐいところ」の有無の問題。覚えているというより、思い出しました。文学上のそういうものは、非常に複雑であって、なかなか意味ふかくあるし、云われている通り綜合的な強靭性から生じることです。「えぐさ」は、世俗には清澄性と反対にだけ云われるけれども、芸術の場合は清澄そのものに一通りならぬえぐさが根本になければならぬところに妙味があります。（宮本百合子『獄中への手紙 一九三九年（昭和十四年）』）
3. つめたい、ひどい、あくどい。嫌悪感を催させるほど卑劣であるさま。
   • 二十日の朝、屠殺場の皮剥ぎのようなえぐい顔をした私服の憲兵がブラリとクラブへやってきて、もっともらしい顔で花壇の間を歩きまわっていたが、めずらしい花ばかりで名がわからないから参考のためにおしえてくれといった。（久生十蘭『だいこん』）

活用

語幹	未然形	連用形	終止形	連体形	仮定形	命令形	活用型
えぐ	かろ	かっ く	い	い	けれ	○	口語

関連語

• えぐみ

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「えぐい」の例文・使い方・用例・文例

• この鍋物はえぐいだよ。